人食い映画『グリーン・インフェルノ』ついに日本公開! これがイーライ・ロスの残酷エンターテインメント

本作の監督イーライ・ロス(『ホステル』)はイタリアのルッジェロ・デオダート監督作『食人族』(80)の大ファンで、この映画について語りだすと止まらなくなるそうです。10代の時にこうした食人映画を観てショックを受けた彼は、いつか自身でもこのジャンルを撮ってみたいと思うようになりました。その想いが結実したのが、この『グリーン・インフェルノ』。その証拠にエンドクレジットには、「ルッジェロに捧げる」の文字と、イタリア製食人族映画のタイトルが列記されています。しかもこの映画は、単なるモンド映画、ジャンル映画を超える完成度を誇った一級のエンターテインメントに仕上がっているのです。

ヒロインはニューヨークで大学に通うジャスティン(この映画の撮影後に監督と結婚したロレンツァ・イッツォ)。割礼などの過酷な状況に置かれる女性たちに心を痛め、国連で弁護士をしている父親に何とかしてもらおうと考えています。そんな彼女に、過激な慈善活動をしているメンバーが接近してきます。リーダーのアレハンドロ(アリエル・レビ)は、南米ペルーに住む先住民のヤハ族が、地下天然ガス採掘を進める企業によって住処のジャングルを破壊され、消滅の危機にあることを訴え、それを阻止するための計画を進めていたのです。それは現地に乗り込み、自然破壊の実態をネットに流し、世論を喚起しようというものでした。正義感に燃えるジャスティンは彼の熱意に打たれ、参加を決意します。やがて数名の学生ボランティア・グループはジャングルの奥地に向かって旅立っていきます。

ロスが愛する『食人族』はフェイク・ドキュメンタリー、つまり行方不明になった撮影隊が遺したフィルムが発見されたもの、という体裁をとっていましたが、この映画はしっかりとした劇映画。ジャスティンが現地に向かうまでのいきさつも順序だてて描かれていきます。しかも彼女に関するディテールや、同行するメンバーの性格などはすべてその後の展開の伏線になってきますので、単なる前置きとは思わずにちゃんとご覧下さい。

本来ならプロローグ的な扱いになる、工事現場での作業員たちとの攻防戦も、テンポ良く、サスペンスたっぷり。ボランティアに思えた環境保護活動グループの裏の顔が見える展開も皮肉に満ちあふれています。そう、この映画が単なるホラーを超えているのは、全編に漂っているアイロニーの数々のおかげなのです。少数民族を守ろうという自己満足的な正義感を振りかざすボンボンたちが、その守ろうとしていた相手に食われてしまう。しかも、その中にはヴィーガン(ヴェジタリアンのさらに厳格なルールに従う者)がいたりもします。文明社会の中で野蛮な風習と蔑視していたものが、自らの身にふりかかってくるのも皮肉な展開です。こんなシニカルな視点で統一されているからこそ、どんなに残虐なシーンが続こうとも、最後まで娯楽性は失われません(犠牲者たちにあまり同情する気にならない、というのも大きいと思いますが)。

ネットの動画が注目され、喜びに沸いたのも束の間、帰路についた彼らを乗せたセスナは突如エンジントラブルを起こしてアマゾンのど真ん中に墜落してしまい、かろうじて生き延びた数人は、ヤハ族の人々に取り囲まれているのに気付きます。食人の習慣を持つ彼らにとって、外の世界からやってきた人間は最大のごちそうだったのです…。

ここからは囚われた者たちが一人また一人と食われていく容赦ないショック場面が続きます。生きたまま目玉や内蔵をえぐり取られ、焼かれ、調理されていく。さながら活け造り、踊り食い、解体ショーのオンパレードです。これがあくまでも日常の風景として、淡々と描かれるのですから、恐怖におびえる若者たちのリアクションとは好対照。ヤハ族は彼らを怖がらせようと思っているのではなく、あくまでも自分たちの文化に従っているだけなのですね。人肉にかぶりつく、子供たちのうれしそうな表情が印象に残ります。

人体串刺しなど、『食人族』へのオマージュ・シーンも登場。個人的には続編の存在を意識したかのような終わり方がやや残念ですが、ロス監督ならではの味わいには大満足の一本でした。若き日の彼のように、これがトラウマになる人が出てくるかもしれませんね。

(付記1)

犠牲者の中には『スパイキッズ』の主人公の一人、ダリル・サバラもいます。

(付記2)

ロスの目論見通り、続編の製作が決定したようです。タイトルは『ビヨンド・ザ・グリーン・インフェルノ』になる予定。

(付記3)

『食人族』のもうひとつの特徴だった、ドキュメンタリー形式は、ロスが製作と脚本を担当した『サクラメント/死の楽園』のPOV方式に生かされています。こちらも日本では『グリーン・インフェルノ』と同日公開。近日レビュー予定です。

(『グリーン・インフェルノ』は11月28日公開)