ヒュー・グラントが演じる”憎みきれないろくでなし”『Re:LIFE~リライフ~』

 女性にだらしがなくて、人生を甘く見ているちゃらんぽらん男。ヒュー・グラントが演じるのに、まさにうってつけの役です。『コードネームU.N.C.L.E.』では一見C調ながら実は切れ者という役を絶妙に演じていたグラントですが、今回の『Re:LIFE~リライフ~』で演じているのは正真正銘のろくでなし。

 グラント扮するキース・マイケルズは15年前、『間違いの楽園』という映画でアカデミー脚本賞を受賞、ハリウッドで天才ともてはやされた脚本家でした。しかしその後はまったくヒット作に恵まれず、妻には逃げられ一人息子にも会えない始末。新企画が通らないばかりか、ついには電気まで止められてしまいます。やむを得ず彼は、エージェントに紹介された、地方大学のシナリオコースの講師をいやいやながら引き受けることに…。

 NY北部の田舎町ビンガムトンに降り立ったキース。しかしまったくやる気のない彼は、受講者を写真で選び、彼好みの美人女子学生と見た目の冴えないオタク風男子ばかりを揃えてしまい、さらには最初の授業開始5分で、今後1ヶ月間の休講を宣言するなどやりたい放題。そんなキースが、ここでの人々との出会いでどう変わっていくのか…?

 監督・脚本はマーク・ローレンス。グラントとは『トゥー・ウィーク・ノーティス』以来、これが4本目のタッグという息の合った組み合わせで、今回もダメ男だけどどこか憎めない彼のキャラクターを活かしたお話になっています。舞台になったNY州ビンガムトンは監督自身が大学生活を送り、奥さんと出会った場所だということ、思い入れもたっぷりあるのでしょう。ここで暮らす登場人物たちはみな生き生きとしています。かつてはダンサーをしていて、働きながら復学して学んでいるシングルマザーのホリー(『いとこのビニー』でアカデミー助演女優賞受賞のマリサ・トメイ)、元海兵隊の強面だが実は家族思いの感激屋で、家族の話になるとすぐに泣き出してしまう学科長のラーナー(『セッション』でアカデミー助演男優賞受賞のJ・K・シモンズ)、ジェーン・オースティンをライフワークにしていて何かとキースと対立する倫理委員長ウェルドン教授(アリソン・ジャネイ)、気のいい隣人で同僚のジム(クリス・エリオット)、キースが軽いノリで関係を持ってしまったため、後々トラブルの種になる女子大生カレン(ベラ・ヒースコート)など、それぞれ存在感たっぷりで、故郷に対する愛情をしっかり持っているキャラなのも好感が持てます。

 しかし、ただ単純にキースが新たな道を見いだし、脚本家として再デビューも果たしてめでたしめでたし…、とはなりません。先日公開されたアル・パチーノの『Dearダニー』もそうでしたが、大人の再出発ものには、単なるサクセスストーリーではないほろ苦さが加わるのが最近の傾向なのです。少しずつ生徒を教えることの喜びを見出していったキースは、学生のひとりで、いじめられっ子だったクレムの才能を見出し、彼の脚本家デビューに向けて尽力していくことになりますが、そのハリウッドへの道の途中で、ある大きな決断を迫られることになるのです。ここに至るまでのキースの心境の変化を演じて、グラントの演技が光ります。最初にダメっぷりを思いっきり見せているからこそ、彼が失敗を繰り返しながらも大人として人生の第二章を歩みだそうとする姿が感動を呼ぶのです。

 さらに主人公が脚本家ということで、ハリウッドや映画に関する小ネタが満載。アリシア・シルヴァーストーン主演の青春映画『クルーレス』がジェーン・オースティンの原作を下敷きにしたこと、『スター・ウォーズ』オタクの生態、キースが講義中に例に出す映画のタイトルなど、知っていればいるほど笑える(あるいは感心してうなずく)ことばかり。キースの名前は知らなくても、誰もが『間違いの楽園』のことだけは知っているというくだりが何度も登場するのも笑いのポイント。ハリウッドの映画会社やエージェントなどの内輪ネタには、きっと監督からの複雑な思いがこもっているはずです。

 さらに、15年前のキースのアカデミー賞授賞式のスピーチ映像として登場するのが、ヒュー・グラント自身が『フォー・ウェディング』(94)でゴールデングローブ主演男優賞を受賞した時の映像なんですから。この自虐的にも思えるネタが、またたまりません。

(『Re:LIFE~リライフ~』は11月20日から公開)