見知らぬ異国でクーデターに巻き込まれたら? 極限の緊張状態に誘うサバイバル・サスペンス『クーデター』

もしも、見知らぬ国で突如勃発したクーデターに遭遇したら…。「外国人は皆殺しだ!」と叫ぶ暴徒たちに包囲されたら…。敵は完全武装の上、容赦ない殺戮を開始。しかし、こちらには武器はない。その時、果たしてあなたは家族を守って生き延びることができるのでしょうか? この『クーデター』とはそういう映画です。

主人公のジャック(オーウェン・ウィルソン)は会社の支援事業のため、祖国アメリカを離れ、妻と二人の娘を連れて東南アジアの某国に赴任します。慣れない異国の地に不安がいっぱいですが、転職したばかりの彼には選択肢がなく、なんとか新しい生活に慣れようと決意していたのです。しかし、平和な夜はたったの一夜でした。翌朝、突如クーデターが発生。彼らの滞在するホテルは暴徒に囲まれてしまいます。「外国人を殺す。捕虜はとらない。皆殺しだ!」と響き渡る怒号。乱入した暴徒に次々と殺されていく人々。屋上に逃れバリケードを作って救援を待つものの、そこにやってきたのは攻撃用ヘリコプターでした! 絶体絶命の窮地で、ジャックの一家は前日に出会った風変わりな旅行者のハモンド(ピアース・ブロスナン)と再会。彼の誘導で脱出を図るのですが…。

約100分の上映時間のほとんどが決死の逃避行という、まさにサバイバル・スリラー。周りはすべて敵だらけという極限の緊張状態が連続します。目の前で無情にも射殺されていく人々。ジャックは特にサバイバル術に長けているわけでもない普通の父親で、足手まといとも言える妻や二人の娘をなんとか助けなければなりません。『ズーランダー』や『ナイトミュージアム』などでコメディの印象の強いオーウェン・ウィルソンが、久々にシリアスな役柄に挑んでいます。無力感に苛まれながらも、なんとか家族だけは救いたいという父親の決意を熱演。何度か起きる危機的状況の中で、とっさの決断(それもかなり過激なもの)を強いられる苦渋をリアルなものにしています。生命の危機にあって、それをしなければ助からないと頭の中では理解していても、いざとなると体が萎縮して思い通りの行動がとれない人間の弱さなども的確に描写され、手に汗を握ること必至。

特に、ひと目で外国人とわかってしまう特徴的な外見を持ったジャックの一家が、顔を覆ってカムフラージュしながら、大群衆の中をバイクで進むシーンは、サスペンス満点。そんな中で、互いを守り、励まし合うことで高まっていく家族の絆に胸が熱くなるのです。

ブロスナンは元007俳優という強みを披露。すでに還暦を超えてしまいましたが、過去にいろいろと秘密を持つうさんくさい謎の男を雰囲気たっぷりに演じています。銃撃戦などのアクションは彼の見せ場ですしね。

監督はM・ナイト・シャマランに認められ、エレベーターを舞台にした密室スリラー『デビル』を撮ったジョン・エリック・ドゥードゥル。実際に東南アジアでロケを敢行し、アジア特有の湿った空気感やスコールなどの効果を多用。ミステリアスな雰囲気作りで、西洋人が東洋に対して抱いているであろう不安感を最大に高めています。

冷静になって考えれば、いくらクーデター政権といってもこのような乱暴な政策をとることはあまり考えられない(米国民をあんなに虐殺してしまえば報復の攻撃が仕掛けられ空爆などで国がずたずたになるのは確実ですから)のですが、観ている間はそれどころではなく、ハラハラ、ドキドキの連続でした。実際にタイで起きている爆弾テロなどのことなども思うと、さらに…。

(『クーデター』は9月5日から公開)