全米で旋風を巻き起こしたアカペラ青春映画、3年遅れでようやく日本上陸!『ピッチ・パーフェクト』

青春映画と音楽映画の魅力を巧みにミックスさせた作品。見終わったあと、気分が高揚してくるのは確実です。

この『ピッチ・パーフェクト』がアメリカで公開されたのは2012年の9月。最初はわずか335館での限定公開だったのですが、若者中心に口コミで人気に火がつき、即座に拡大公開、観客の満足度も80%を超え、大ヒットとなりました。しかし、なぜか日本では劇場公開もビデオリリースもされないまま月日は流れ、ようやくの日本公開となったのです。歌をフィーチャーした音楽ものとしてはTVの「glee/グリー」がヒットしていたわけで、その流れで公開しても良かったのでは? とも思いましたが、まあ、いろんな事情があったのでしょう。ここは素直に映画館で観られることを祝いたいです。

舞台となるのは大学のアカペラ部。ここ数年、アメリカではアカペラが大ブームで(日本でもTV番組の企画でありましたね)、特に大学の選手権は全国的な注目を集める存在。ただ単に伴奏なしで歌い上げるだけでなく、コーラスやアレンジ、振り付けにも趣向を凝らし、オリジナル曲とはまた違った魅力を引き出すのもアカペラの醍醐味なのです。そこはエンタメ大国アメリカ、学生とはいえ、ちゃんとエンターテイメントとして完成されたステージを見せてくれます。次々に登場する各グループのパフォーマンスを見ているだけで楽しいですよ。

主人公は音楽プロデューサー志望のベッカ(アナ・ケンドリック)。バーデン大学に入学した彼女は、ふとしたことから女性アカペラ・グループ「バーデン・ベラーズ」に入部することになります。しかし伝統あるベラーズは、逆にその伝統に縛られ古くさいパフォーマンスを続けるばかり。斬新なアイディアを取り入れたいベッカは、先輩たちと対立してしまいます。一方、同じ大学には昨年の大会で全国制覇した男性グループ「トレブルメイカーズ」がいて、ベラーズとは事あるごとに火花を散らすのです。ベッカのバイト仲間で気になる存在になりかけているジェシー(スカイラー・アスティン)が、そのライバル・グループに加入することになり…。

かくして、恋の予感をはらみつつ、全国大会に向けて邁進するベッカやベラーズの仲間たちの青春が描かれていきます。もともとの原作はノンフィクション。大学のアカペラ選手権の様子を追いながら、前年度の覇者とそれをライバル視するグループの仁義なき戦いや、保守的なアカペラ界に新風を吹き込んだグループの独創性の追求などを描いたものでしたが、映画の製作権を手にした女優のエリザベス・バンクス(『ハンガー・ゲーム』シリーズでおなじみ。本作にも大会の解説者役で出演)は、それをそのまま映画化するのではなく、ヒロインの成長物語も含め、誰もが共感できる青春コメディに仕上げました。見事にバラバラの個性の持ち主であるベラーズのメンバーたちが、一致団結し次第に美しいハーモニーを作り上げていく様子は、いかにもアメリカ映画らしいさわやかな感動を呼びます。

主演のアナ・ケンドリックは『マイレージ、マイライフ』でアカデミー助演女優賞にノミネートされた実力派。しかも12歳の時からブロードウェイでミュージカルの舞台にも立っていたということで歌唱力も抜群。先日公開されたディズニー・ミュージカル『イントゥ・ザ・ウッズ』のシンデレラ役や、『ラスト5イヤーズ』のヒロイン役でも美声を聞かせてくれました。彼女以外の出演者も、まず歌唱力、次にコメディ・センスを中心にオーディションで選択したとのことで、まだ無名の俳優が多いながらも実力者ぞろいで安心して見て(聴いて)いられます。

この作品の全米大ヒットを受けて続編製作が即座に決定。まもなく『ピッチ・パーフェクト2』がアメリカで公開されます。今度は世界が相手だ! こちらの新作も年内には日本公開される予定だとか…。早く観たい!

(付記)

ジョン・ヒューズ監督の1985年作品『ブレックファスト・クラブ』(なんと今年で30周年!)とその主題歌(シンプル・マインズ)が、この映画の中で重要な意味を持ってきます。アメリカの若者にとっては一度は通過しなければならないエヴァーグリーンな映画なのでしょうか? これもまたアメリカの学生生活を理解するためには最適な映画なので、機会があったらご覧になってください。

(『ピッチ・パーフェクト』は5月29日から公開)