試写室でも号泣者続出の感動作『きっと、星のせいじゃない。』

試写室で観た人たちがみな泣いている、という噂が広がり、マスコミ試写は連日超満員で入り切れない人も続出した、という映画がこの『きっと、星のせいじゃない。』です。原作は2012年度ニューヨークタイムスのベストセラーリスト第1位となったヒット小説で、『(500)日のサマー』を手がけた脚本家コンビが脚色、次回作でスティーヴン・キング原作の『ザ・スタンド』を手がけることも決まった注目の新鋭ジョシュ・ブーンが監督しています。

物語は、ヒロインである17歳のヘイゼル・グレース・ランカスター(シャイリーン・ウッドリー)の語りで幕を開けます。彼女は末期ガン患者。13歳から入退院を繰り返し、どこに行くにも酸素ボンベを手放せないため、学校に行けず、友だちもいません。そんな彼女が、いやいや行かされたガン患者の集会で出会ったのが、骨肉腫で片足を切断したガスことオーガスタス・ウォーターズ(アンセル・エルゴート)でした。独自の感性を持つヘイゼルに一目惚れして猛アタックするガス。彼を傷つけまいと距離を置こうとするヘイゼルでしたが、やがて二人の心は通い合っていきます。

ストーリーのキーになるのが、ヘイゼルが愛読している小説の存在。やはりガンの少女を主人公にしたその小説の、「物語のその後」が気になって仕方がないのです。やがてガスの尽力で、オランダのアムステルダムに住むその作者に会いに行けることになったのですが…。

ガン患者同士の恋愛を描く、ということで、深刻な内容を想像しがちですが、映画のトーンはそんな湿っぽいものではなく、時にユーモアをまじえながら、彼らの生き生きとした日常を描いていきます。そこにあるのは、今のこの一瞬を精一杯楽しもう、という前向きな気持ち。この世に生を受けたことを祝福し、大切な人に出会えた喜びをかみしめる。そんな二人の、輝くような表情が、観る側の胸を熱くさせるのです。

ヒロインのヘイゼル役のシャイリーンは、『ファミリー・ツリー』でジョージ・クルーニーの娘役を演じて注目され、主演作『ダイバージェント』が全米で大ヒットを記録した若手女優の期待の星。皮肉屋で毒舌家、しかし内心では情愛にあふれ、自分が死んだ後の周囲のことを誰よりも心配している(だから彼女は小説の「その後」が知りたいのです…)複雑な役を、くるくると変わる表情で見事に演じきっています。目だけで語る、その瞳の演技は魅力的です。ガス役のエルゴートとは『ダイバージェント』で兄妹役で共演していて、その続編でも再共演ということで息もぴったりです。さらに、目の病気で途中から光を失ってしまうアイザック役のナット・ウルフ、ヘイゼルの両親に扮したサム・トラメルとローラ・ダーンも好演。そして、作家役で登場するウィレム・デフォーの怪しげな佇まいは、場を完全にさらっています。

アムステルダム・ロケも効果的。単に観光名所を映し出し、エキゾチックな雰囲気を盛り上げるだけでなく、「アンネ・フランクの家」が物語の重要な舞台になるのです。ただ家の中をまわるだけのシーンなのですが、その絶妙な設定により、ものすごく緊張感にあふれた場面になっています。ここは思わず拍手を贈りたくなる名シーン。ぜひ、劇場でご覧ください。

「虹を見たければ、雨はガマンすべき」「生きていれば傷つくこともあるけれど、相手は選べる。君に傷つけられたら本望だ」などの名セリフが散りばめられたこの映画。末期ガン患者だけでなく、すべての人は限られた時間の中を生きていて、いつそれが終わってしまうかわからない。だからこの一瞬を大切にして生きていこう。そんなことを改めて考えさせてくれます。そして、ラストの「手紙」には、こらえていた涙がきっと溢れ出すことでしょう。

(『きっと、星のせいじゃない。』は2月20日から公開)