スパイ・アクションで亀梨和也が躍動する『ジョーカー・ゲーム』

『SR サイタマノラッパー』『日々ロック』の入江悠監督が、スパイ映画という王道の娯楽作品に挑戦。しかも亀梨和也と伊勢谷友介が共演、と観る前から期待値が高まった作品です。原作は柳広司の連作短編小説(現在4作まで刊行中。映画とはまた違った魅力があるのでおススメです)。原作は映画版で伊勢谷が演じる結城中佐が中心になった話。と言っても結城自身の内面が描かれることはなく、結城は常に誰かの目を通して描写され、ミステリアスな雰囲気を漂わせ続けています。まさに「魔王」と呼ばれる男の風格です。映画の伊勢谷もはまり役。また、原作では決まった主人公がおらず、作品によって違う人物が主役になっていますが、この映画版では亀梨扮する映画オリジナルの主人公を設定。原作からさまざまなエピソードを取り入れ、1本の長編映画として成立させているのです。

 舞台は戦前。上官の命令に背き、処刑される寸前の青年兵(亀梨)の前に、結城中佐(伊勢谷)と名乗る男が現われ、「D機関」という秘密組織に入れば刑を取り消す、と持ちかけます。「D機関」とは陸軍内部に新設されたスパイ育成組織。そこでの訓練でスパイとしての才能を開花させた青年は、嘉藤という偽名を与えられ、最初の任務を与えられます。それは世界を震撼させる新型爆弾の設計図、通称「ブラックノート」の奪取。そのため南方の国際都市に潜入した嘉藤ですが、英国のスパイ組織もまたブラックノートを狙っていました。そんな中、嘉藤は謎の女リン(深田恭子)に出会います…。

 原作の静かな雰囲気とは打って変わって、映画は派手なアクションや爆発シーンなどの見せ場が炸裂。特に亀梨はパルクールばりのアクロバチックなスタントや格闘シーンをあざやかにこなし、逃亡しながら次々と着替えをしていくという洒落っ気たっぷりなシーンも(亀梨は合気道や銃の解体なども特訓したそうです)。しかし単なるアクション映画ではなく、スパイ同士の攻防を描くものですから、騙し騙される仕掛けがいっぱい。昭和初期のハイテク(?)も登場する知的エンターテインメントでもあるのです。主人公の性格設定で「スパイでそんな奴はあり得ないだろ!?」という部分はありますが、そこは亀梨のキャラクターで許されている、と言えるのではないでしょうか。ある意味、先日公開された実写版『ルパン三世』よりも「ルパン三世」的な映画、と言ったら映画に流れる空気がわかってもらえるかな?

 無意味に長い映画が多い昨今、入江監督は「絶対に2時間を切る!」という尺にこだわったそうで、テンポのいいカット割りも含め、娯楽映画の呼吸を理解している人なのだなぁ、と感心しました。続編も作れそうな展開なので、この先に期待も抱かせてくれる、肩に力を入れずに観て楽しめる作品でした。

(『ジョーカー・ゲーム』は1月31日から公開)