香港映画ならではの過剰さに興奮!  『激戦 ハート・オブ・ファイト』

 MMA(総合格闘技)の世界を背景に、どん底からはい上がろうとする人間たちの熱い戦いを描いた人間ドラマ+アクション映画なんですが、そこは香港映画、過剰なまでの演出で見る者の度肝を抜いてくれます。

 まずはキャラクターをご紹介。主人公ファイ(ニック・チョン、本作で香港電影金像奨主演男優賞受賞)はボクシングの元チャンピオン。しかし八百長試合に関わったことで服役、ギャンブル好きがたたって多額の借金を抱え、借金取りに追われて香港からマカオに逃走します。もう一人の主人公スーチー(エディ・ポン)は富豪の御曹司だったのですが、「自分さがし」を気取って各地を放浪している間に父親が破産、今は生きる気力を失った父親を養いながらマカオの建築現場で日雇い労働者として働いています。ファイがマカオでルームシェアすることになったのが、クワン(メイ・ティン)とシウタン(クリスタル・リー)の母娘。クワンは夫が他の女の元に去ったことから酒浸りになり、幼い息子をバスタブで溺死させてしまった悲しい過去があり、精神が不安定。まだ幼いシウタンはそんな母親を健気に支えています。

こんな4人が、もう一度人生を取り戻すために、力を合わせて立ち上がっていく話です。高額の賞金がかかった総合格闘技大会の存在を知ったスーチーは、テコンドーの経験を活かして出場を決意、ファイにボクシングのコーチを依頼します。やがて二人は固い絆で結ばれていくのですが…。

そんなわけで主要登場人物たちは、出発点ですでにどん底の暮らしをしています。あとは努力と根性で上昇していくだけ、というのが普通のドラマですが、この映画では、そうは簡単にいきません。彼らの前に立ちはだかる困難の数々といったら! これでもか、とばかりに襲いかかる不幸のスパイラル。小さな幸せをつかみそうになったところで、一気に再び奈落の底へ突き落されるような描写の数々は目を覆わんばかりです。そこまでやるのか香港映画! しかし、そんな過剰な描写があればこそ、クライマックスの大逆転劇に向けての興奮が盛り上がり、カタルシスに繋がっていくわけなんですよね。監督はアクション演出には定評のあるダンテ・ラム。主人公二人は徹底的な訓練を受け、ファイターの体を作り出し、格闘家の動きを叩きこまれて演技に挑みました。臨場感あふれるカメラワークも観る側のテンションを上げてくれます。ラスト・バトルはボクシングしかできない中年男が総合格闘技の無敵のチャンプに挑むという無謀な展開。まさに手に汗を握る描写の連続で、興奮と感動がいっぱい詰まっている作品です。

劇中では、サイモン&ガーファンクルの名曲「サウンド・オブ・サイレンス」のカバー曲が効果的に使われ、静と動の対比を際立たせています。さらに、エンド・クレジットの時に流れる映像を見ながら、ほっと温かい気持ちになって劇場を出ることができますよ。

(『激戦 ハート・オブ・ファイト』は1月24日から公開)