香港ノワールが帰って来た! 『レクイエム/最後の銃弾』

1986年の『男たちの挽歌』の登場によって、「香港ノワール」という言葉が確立され、アクション映画の中のひとつのジャンルとして人気を集めてきました。チョウ・ユンファが、レスリー・チャンが、抗えぬ運命と男の意地、そして捨てられぬ友情や絆のために命を賭し、激闘に身を投じる姿は、観客の胸に熱い想いを呼び覚ましたのです。その後もトニー・レオンやアンソニー・ウォンら数々の男たちが、その生きざまをスクリーンに投影してくれました。2001年の『インファナル・アフェア』もまた心に響く作品でした。同作の影響は世界中に広がり、ハリウッドで『ディパーテッド』、日本では『ダブルフェイス』としてリメイクされたのですから(そう言えば『男たちの…』も韓国でリメイクされていましたね)。

そんな香港ノワールの伝統を今に継ぐ作品が、満を持して登場しました。それが、この『レクイエム/最後の銃弾』なのです。

子供の頃からの親友同士の3人。今は警察官となり、麻薬取締班として活躍しています。リーダーはティン(ラウ・チンワン)で、ワイ(ニック・チョン)はそれを補佐する立場。しかし、潜入捜査専門のチャウ(ルイス・クー)は長年の激務に神経をすり減らせ、苦悩の日々を送っていました。そんな彼らはタイの大物麻薬王の逮捕に向かいますが、大掛かりな作戦は失敗。絶体絶命の危機に陥ってしまいます。かろうじてティンとチャウは助かりますが、見殺しのような形でワイを失ってしまうのです…。

それから5年。ティンは失敗の責任をとって左遷され、チャウが取締班のトップに立っていました。そんな中でも組織に対して独自の調査を進めているティン。だが、その前に現れたのは…。

というわけで、王道の「男気」ドラマが展開していきます。これで熱くならない香港映画ファンはいない、と言っても過言ではないでしょう。現在の香港映画の主演スターとして最もノッている3人の豪華共演というのもポイント高し。実はここ数年の香港映画界は、経済成長著しい中国本土の資金に飲み込まれ、独自の映画製作がままならなくなっていたそうです。脚本の内容にも制限がかかるため、思うような映画作りができなくなっていたのですね。そんな中での映画人たちの意地が爆発した映画だと言えるのではないでしょうか。

前半の山場であるタイ黄金地帯の戦闘シーンは軍隊も動員したものすごい迫力ですし、クライマックスは15分にも及ぶ銃撃シーン。全編から熱いエネルギーが噴出してくるような映画でした。監督はベニー・チャン。

キーポイントとなるのは「選択」。追いつめられたティンは「親友2人のうち、どちらかを見捨てれば残りは生かしてやる。さもなければ皆殺しだ」と迫られます。そこで下した選択が、その後の彼の生き方を縛っていくのです。友情と裏切り、野望、復讐…それらが複雑にからみあい、激突する男たちのドラマ。香港ノワールは21世紀に再びよみがえったのです。。

(『レクイエム/最後の銃弾』は10月4日から公開)