ハリウッド映画は今、中国を向いている!?

先日、パラマウント映画が中国の中国電影公司との合作で3Dのアドベンチャー『マルコ・ポーロ(仮題)』の製作を発表しました。まだ監督も出演者も未定ですが、ハリウッドの俳優と中国俳優を共演させ、中国各地でのロケーション撮影も含めた超大作。今年の10月に撮影開始が予定されています。これはハリウッドが新しい可能性を求めたという部分もありますが、何よりも巨大な中国市場を意識した、と考えるべきでしょう。

実際、近年のハリウッドの娯楽大作は、かなり露骨に中国を意識しています。

まずは『アイアンマン3』。中国公開版のみに追加パートが撮影され、ファン・ビンビン(彼女は『X-MEN:フューチャー&パスト』にも出演)らの中国俳優が出演するシーンが付け加えられました。しかも悪役のマンダリンの設定が変更に。彼は原作コミックでは明らかに中国人という設定(いわゆるフー・マンチュー型の悪役)になっているのですが、これを名優ベン・キングズレイに演じさせ、国籍不明のテロリストに改変しています。

『パシフィック・リム』は日本のロボットアニメにインスパイアされて作られた映画なのですが、ヒロインこそ日本人だったものの、人類の運命を決する最終決戦の舞台は香港でした。中国のクリムゾン・タイフーンは最終決戦に参加していましたが日本のイエーガーは回想シーンに出てくるのみ(しかもパイロットは日本人じゃない!)。

ディズニー・アニメの『プレーンズ』は世界一周レースが舞台。そのルートは、インド、中国ときて日本を素通りして太平洋横断ルートに乗ります。

『ゼロ・グラビティ』では、事故の原因となったのはロシアの宇宙ステーションの破片(いわゆるスペースデブリ)で、ヒロインは中国のステーションやカプセルに助けを求めます。しかし、スペースデブリについてよく考えてみると、確かに発生件数1位はロシア(旧ソ連含む)ですが、2007年に最悪の衛星破壊実験を行ない、一度に3000個以上のデブリを発生させてしまった元凶は中国(長年実験を行なってきた米ロにあっという間に迫る勢いで現在世界3位)なのです。

そして今年の夏に公開される『トランスフォーマー/ロストエイジ』でも、オープニングこそアメリカですが、途中から舞台は中国に移り、北京を経て香港が最終決戦の舞台になります。こちらにはリー・ビンビンが出演。

さて、以上の作品に共通しているものは何か? もうおわかりですよね。すべて「3D映画」なのです。そして、これが対中国において大きな意味を持っています。

以前からハリウッドは多くの人口を抱える中国に期待をしていましたが、そこに立ちはだかったのが「海賊版問題」でした。中国ではスクリーンがそのまま撮影され、すぐに安価で粗悪な海賊版が出回ってしまい、劇場での収入の邪魔をしていたのです。もちろん摘発や監視は行なわれましたが、劇場ぐるみで犯行に加担する場合などもあり、対策は遅々として進まず、大きな悩みの種でした。そんな状況を一変させたのが『アバター』の大ヒットだったのです。この作品は世界中で大ヒットしたのですが、特に中国でのヒットは目覚ましいものでした。なんと、3D映画のため海賊版が作りにくく、ほとんど出回らなかったのです。もともとは劇場に人を呼び戻すために開発された3D技術ですが、思わぬ副産物があったというわけ。以後、ハリウッドの娯楽大作は、ほとんどが3Dで撮影され、もともとは2Dで撮られたものもポストプロダクションの段階で技術的に3D化される、という事態になりました。

そのせいもあってか、近年、中国での興収がぐんぐん上昇。前述の『パシフィック・リム』に至ってはアメリカ本国の興収を上回るヒットとなり、おかげで続編製作にゴーサインが出る、というおまけもつきました。こうなると巨大市場を抱える中国は、利益最優先のアメリカ映画界にとっては大切なお客様、ということになり、これからもますます中国に向いた映画が作られていくことになるのでしょうね。