『リディック:ギャラクシー・バトル』やっぱりコイツには”ワル”が似合うぜ!

リディックとは何者か?

リディックというのはヴィン・ディーゼルが演じた、”銀河最凶のワル”と呼ばれるキャラクター。初登場は2000年のSFスリラー『ピッチブラック』で、群像劇の登場人物の一人という扱いだったのですが、その不敵な存在感に人気が集中。その後『ワイルド・スピード』(01)『トリプルX』(02)の連続ヒットで人気アクションスターの座についたディーゼルが、それぞれの続編オファーを断って主演したのが前作の数倍の製作費をかけ、リディックを主人公にしたSF大作『リディック』(04)でした。(余談ながら、『トリプルX』のスタッフにとっては彼の降板劇がよほど腹に据えかねたのか、主人公を変えて作られた続編『トリプルX:ネクスト・レベル』では、「あいつは休暇中に殺された」とセリフで説明されるだけの冷たい扱いをされています)

しかし、この『リディック』は残念ながら成功作とは言い難く、その後、やや低迷したディーゼルですが、09年に『ワイルド・スピード』シリーズに復帰すると3本連続でメガヒットを記録。再びリディックを演じるチャンスが巡ってきたのです。それがこの新作『リディック:ギャラクシー・バトル』です。

ここでリディックというキャラクターについて改めて整理してみます。銀河系法において殺人・動乱・逃亡罪ほか20件以上のA級罪状で有罪。5つの惑星で指名手配中という札付きの凶悪犯です。外見上の特徴はスキンヘッド、そして暗闇でも見えるように暗視手術を受け瞳孔が白色になっているのを隠すためのゴーグル。知能指数は推定不可ですが、最高域のIQ値を持っていて、凶暴ながら細心。猜疑心も強く本能的に単独行を好みます。肉体的には筋力・心肺能力ともに抜きんでてタフ、宇宙船の扱い、銃器・ナイフなどのエキスパートで、どんな状況下であっても決して諦めるということをしません。基本的には冷酷なのですが、時おり動物や子供には優しさを示すことも…。

アンチヒーローが帰ってきた!

どうです、なかなか魅力的なキャラでしょう? ではなぜ前作『リディック』が不発だったかというと、彼を主役にクローズアップすることによって結果的にヒーローとして描いてしまったからなんですね。この作品では全宇宙を闇の力で支配しようとするネクロモンガーという軍団が登場し、彼らの首魁であるロード・マーシャルを倒す力がリディックにある、ということで戦いが始まります。結果、本来は悪党であるはずのリディックが銀河の平和を守るといういささか混乱したストーリーになっているのです。しかもラストではリディックがネクロモンガーの新たなるリーダーになるという「?」な展開でした。一匹狼であるはずの彼が軍団を率いる立場になるというのも何か変ですよね…。

その反省からか、今回の新作では原点に戻ったリディックの姿が見られます。冒頭でネクロモンガーの部下の裏切りにあったリディックは未知の惑星に置き去りにされてしまいます。だが強靭な体力と不屈の精神を持った彼は孤独なサバイバルを開始、無人のシェルターを発見したリディックは自らの存在を示す非常用ビーコンを発信します。自らを囮にして賞金稼ぎを呼び寄せ、その宇宙船を奪って脱出しようと計画したのです。やがて2組の賞金稼ぎグループが到着。神出鬼没のリディックは彼らを一人また一人と血祭りにあげていきます。しかもこの星にはさらに恐ろしい秘密が隠されていました。この地に雨季が訪れた時、無数の凶悪な水棲生物の行動が活発化し、人間を襲い始めるのです。果たしてリディックはこの星から脱出できるのか?

ようやくアンチヒーローとしてのリディックの魅力が復活しました。ハンターたちを次々とリディックが倒していくシーンは、『エイリアン』を逆の立場から見ているようで彼の本領発揮。憎らしいほどに悪知恵が回り、相手の一手先を読んでは罠を仕掛けていく。やはりリディックには銀河の平和を守るよりも、生き延びるためには殺人も厭わず、障害はすべて排除していくダーティヒーローの方がよく似合うということを再確認させてくれました。

ちなみにディーゼル自身もリディックのキャラクターにほれ込んでいて、『ワイルド・スピードX3』に特別出演したギャラで本作の映画化権を手に入れ、自宅を抵当に入れてまで製作資金を調達したといいます。確かに、彼がノッて演じているのは画面の端々から感じられました。

監督のSFマインドも光る

ところで、このシリーズはリディックのキャラだけでもっているわけではありません。舞台となっている惑星へのこだわりも見どころのひとつ。シリーズ3作とも手がけているのはデヴィッド・トゥーヒー監督なのですが、この人は生粋のSFファン。「宇宙空間を宇宙船で飛んでいればSFっぽく見えるだろう」などという子供だましなレベルではなく、常に「我々人類の想像を超えた環境や生態系のある場所を舞台にする」ことに特徴があります。『ピッチブラック』では3つの太陽を持つ惑星が日食を迎えた時、恐るべきことが起きる…という話。『リディック』では昼は700度、夜はマイナス300度という凄まじく温度差のある惑星が登場し、火砕流のような熱風とすべてを凍らす寒気という正反対の環境をビジュアル化してくれました。そして今回もまた、秘密を抱えた惑星が舞台です。凶暴かつ危険なモンスターが水の中に棲息する星。リディックですらたった一匹に苦戦するようなそいつが、嵐の到来と共に濡れた大地から無数に姿を現して襲撃してくるのです。もはや逃げ場なし! 毎回監督が見せてくれる個性的な世界観は、SFファンの心をつかんで離しません。サブタイトルの「ギャラクシー・バトル」というほど大スケールの作品ではありませんが(基本的にこの謎の星の上だけで展開する話)、このテのセンス・オブ・ワンダーを楽しみたい方々にはおススメの作品ですよ。

(付記)

この作品だけでも楽しめるようになっていますが、1作目『ピッチブラック』からの因縁を抱えたキャラクターが出てきたりするので、レンタル等ででもあらかじめ観ておいた方がいいかも。それでなくても1作目は傑作なので、ぜひ!

(『リディック ギャラクシー・バトル』は3月8日から公開)