2013年を振り返る――今年最高のサプライズは『クロニクル』!

 2013年もさまざまな映画がありましたが、予備知識なしに観て、最も驚かせてくれた(いい意味で)のは9月に公開された『クロニクル』でした。しかしこの作品、限られた劇場で短期間だけ公開された、いわゆる限定公開の作品だったために、見逃した方も多いかと思います。ちょうどDVD/BDもリリースされたことですし、筆者も公開当時にレビューできなかったことが心残りだったので、ここであらためてご紹介させていただきます。

ティーンの揺れる心理を巧みに描き出した青春映画

Q:もしあなたが高校生の男子で、突然念動力が使えるようになったら、まず何をしますか?

A:とりあえず、女子のスカートをめくってみる(笑)。

 この法則は時代を問わず不変のようで、昔の『超能力学園Z』や、TVドラマにもなった日本のコミック「みんな!エスパーだよ!」にも同様のシーンがありました。しかし『クロニクル』では、そんなコメディ的な描写から始まり、どんどん陰惨な方向へ話が展開していきます。

 まずはストーリー。高校生のアンドリュー(デイン・デハーン)、マット(アレックス・ラッセル)、スティーヴ(マイケル・B・ジョーダン)の3人は、ある夜、パーティ帰りに奇妙な洞窟を探検に入り、そこで不思議な物体に触れたことで超能力(念動力)を得てしまいます。最初はその力を使って他愛のないいたずらに興じていた3人でしたが、次第にそれはエスカレート。特に現実社会に不満がいっぱいのアンドリューは暴走を始めてしまい…。

 ここでのポイントは、3人に超能力を与えた不思議な物体の正体にまったく言及されないこと。いちおう宇宙からの落下物ではないかという示唆はありますが、そうしたSF的な展開よりも3人のティーンエイジャーたちの生活に的を絞っているわけです。その3人のキャラが、スクール・カーストのそれぞれの階層の代表という点も重要。アンドリューはビデオカメラだけが友人の根暗で孤独な青年。暴力的な父、病身の母と家庭環境も最悪です。その従兄弟のマットはインテリで社交的な普通のランク。スティーヴはアメフト部のスターであり、ハイスクールではトップクラスの人気者です。この3人が”超能力”という共通項から友情を深めていくことになり、アンドリューにも新しい世界が開けていくのです。それまで皆から無視されてきたアンドリューが、学校のイベントのステージに立ち、友人の協力(もちろん超能力を使うというズルあり)で華麗なるマジックショーを披露し、一躍注目の存在になるシーンは、昂揚感に満ちています。

 アンドリューはどこに行くにもカメラ片手で、「勝手に撮るなよ!」と殴られても撮影することを止めません。彼は「すべてを記録するんだ」と言っていますが、世の中をフレームの中に収めることで自分をその外に置こうとしているのは明白です。つまり、自分をこの現実(それも彼にとっては不本意な)の外の存在として、「お前らとは違うんだ」というスタンスをとっているのですね。しかし、そんな彼でもやはり「注目されたい」「モテたい」という願望はあるわけで、そのあたりの十代の内面が親近感を呼び起こすのです。

 終盤、彼は自らの葛藤を抑えきれず暴走してしまいます。その時に何度も発する言葉が「Leave Me Alone!(ほっといてくれ!)」。人々と繋がっていたい、友人が欲しいという願いと、このセリフのようにすべてから隔絶された世界に生きたいという気持ち。青春とはかくも矛盾に満ちたものなんですよね。

緊迫感に満ちた演出

 この映画はPOV(ポイント・オブ・ビュー)撮影、つまり一人称の主観映像が主になっています。アンドリューがいつも持ち歩いているカメラに録画された映像ですね。それにいくつかの監視カメラの画像、TVニュース映像、事件を目撃した一般人がスマホ等で撮った映像などを組み合わせたもので構成されています。つまり客観的な事件の記録(だから『クロニクル』というタイトル)です。

 このPOVという手法、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』『クローバーフィールド』『REC』などで使われてきましたが、臨場感が得られる代わりに、「なぜ撮影者はいつも前を向いているのか?」という疑問がついてまわります。怪獣やゾンビに追われて逃げるのにカメラを構えたままというのは不自然ですよね。そこに解決策を与えたのがこの映画でした。何しろ主人公は超能力者です。だったらカメラを念動力で浮かせて好きなアングルから撮ればいい!! いやあ、まさにコロンブスの卵。これで記録映像でありながら映画的表現も可能になったわけです(アンドリューが映画監督志望という設定も活かされています)。

 しかも記録映像ということで多少不鮮明な場面があってもかえって迫真性を増す、という利点があります。製作費も抑えられるというわけ。もちろん低予算でケチっているわけではなく、3人が大空を自由に飛び回る爽快感にあふれたシーンや、ビル街で超能力が激突し街をパニックに陥れるクライマックス・シーンなどはしっかりと力の入ったVFXで見せてくれます。監督・脚本は新鋭ジョシュ・トランク(共同脚本はマックス・ランディス、あのジョン・ランディスの息子です!)。この作品を全米大ヒットに導いたことで、リブート版『ファンタスティック・フォー』の監督に抜擢されています。監督は『キャリー』(オリジナル版)、『フューリー』、『AKIRA』などに影響を受けてこの作品を発想したとか。確かにこうした映画がお好きな方でしたら見逃す手はない作品ですよ。

(付記)

主役3人のその後を。アンドリュー役のデイン・デハーンは若き日のレオナルド・ディカプリオを思わせる風貌と演技力でたちまち注目され、『欲望のヴァージニア』『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』『メタリカ・スルー・ザ・ネバー』などに重要な役で出演。2014年4月公開の『アメイジング・スパイダーマン2』ではキーパーソンとなるハリー・オズボーン役を演じています。マット役のアレックス・ラッセルはリメイク版『キャリー』に出演。『クロニクル』の続編が作られることになれば彼が主役になる予定です。スティーヴ役のマイケル・B・ジョーダンは3月に日本公開される『フルートベール駅で』に主演。この作品はサンダンス映画祭で作品賞と観客賞をW受賞、カンヌでも受賞するなど高い評価を受けています。