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新聞の軽減税率適用は低所得者対策か

小黒一正法政大学経済学部教授
(写真:ロイター/アフロ)

先般、Yahoo!の連載コラムに「軽減税率の線引きが提起する「新聞とは何か」問題」という寄稿を掲載した。この関連で、筆者は、新聞の軽減税率適用は低所得者対策として適切か否か、そもそも疑問をもっている。

というのは、以下の図表1は「年収別の購読新聞」を視覚化したものだが、年収階級が低下するにつれ、新聞を「あまり読まない」という割合が増加するためである。

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具体的には、「あまり読まない」と回答する割合は、年収が1,500万円以上の階層では8.7%のみだが、年収が300万円以上―500万円未満の階層では26.5%、年収が300万円未満の階層では37.1%となっている。

つまり、年収300万円未満の層は半数弱(=約4割)も新聞をあまり読まない。なお、高所得階層ほど購読が増える新聞は、日経と朝日である。

他方、総務省「家計調査」のデータから、年収別の光熱・水道費をグラフにしたものが、以下の図表2である。

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例えば、「電気代の月額」(赤色の折れ線)は、年収1,167万円の階層で10,253円を支払っているが、年収259万円の階層でも7,497円を支払っている。つまり、どの年収階級も概ね似たような電気代を支払っている。これは、上下水道料やガス代も同様である。

誰しも生活を営むためには、新聞よりも、電気・ガス・水道の方が必要不可欠なことは明らかで、これらの料金は所得の高低にかかわらず、支払うものだ。

電気・ガス・水道を差し置き、低所得者対策として、新聞が軽減税率制度の対象となる是非につき、冷静に考えてみる必要はないだろうか。

法政大学経済学部教授

1974年東京生まれ。法政大学経済学部教授。97年4月大蔵省(現財務省)入省後、財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授等を経て2015年4月から現職。一橋大学博士(経済学)。専門は公共経済学。著書に『日本経済の再構築』(単著/日本経済新聞出版社)、『薬価の経済学』(共著/日本経済新聞出版社)など。

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