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2021年、GAFAは「大きすぎて」目の敵にされる

平和博桜美林大学教授 ジャーナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

「大きすぎる」GAFAはなぜ目の敵にされるのか?

欧州委員会は12月15日、プラットフォーム規制のための「デジタルサービス法」「デジタル市場法」という二つの新法案を発表した。それぞれ最大で売り上げの6%と10%という制裁金の罰則付きで、コンテンツ管理などで新たな義務を課す。

二つの新法案が明確にターゲットにしているのが、GAFAと総称される米巨大IT企業だ。

同じ日、EUを離脱した英国も、GAFAを標的にした「オンライン安全法」の概要を発表した。

GAFAをめぐり、3カ月の間に、米国とEUが大西洋をはさんで相次ぎ大がかりな規制の動きを打ち出す。

「大きすぎて手に余る」と言われてきたGAFAは、規制の照準に。

今、規制当局の合言葉は「規模には責任が伴う」に変わった。

そして「2021年は巨大IT規制の年になる」との見通しも出ている。

●「規模には責任が伴う」

我々は、この会社やあの会社が大きすぎると思う、などとは決して言わない。ただ、大きくなれば、果たすべき義務も増える、とは言うだろう。

欧州委員会の委員(域内市場担当)のティエリー・ブルトン氏は15日、プラットフォーム規制の2法案の発表で、そう話した

また、同委員会執行副委員長(デジタル政策担当)で、GAFAの"天敵"と呼ばれるマルグレーテ・ベステアー氏もこう語っている

今やネットのトラフィックは急増し、カオスに秩序をもたらすルールの策定が必要だ。テロリストのプロパガンダに出会うことなくウェブをたどることができ、ネットでおもちゃを買っても、リアル店舗と同じように安全だと確信が持てるようにするべきだ。

この日、欧州委員会が発表したのは、プラットフォームのコンテンツ管理に焦点を当てた「デジタルサービス法(DSA)」と、競争促進に焦点を当てた「デジタル市場法(DMA)」の二つの規制法案だ。

「デジタルサービス法」は、2000年に制定された「電子商取引指令」(※明治大学教授・夏井高人氏の参考訳)を20年ぶりに見直すという位置づけだ。

「デジタルサービス法」では、対象となるサービスを、ISP(接続事業者)やドメイン名レジストラ(登録業者)なども含む「仲介サービス」、クラウドやウェブホスティングなども含む「ホスティングサービス」、マーケットプレイスからアプリストア、ソーシャルメディアなどを含む「オンラインプラットフォーム」、そして「巨大プラットフォーム」という、段階的に対象を絞り込んでいく四つに分類。

対象を絞るごとに、課される義務は増える構造だ。

そして、最も大きな義務を負うのが、4億5,000万人のEU域内の消費者の1割、つまり4,500万人以上のユーザーを擁する「巨大プラットフォーム」だ。

地域ごとのユーザー数を公表しているフェイスブックの場合、欧州の1日当たりのユーザー数は3億500万人、月間ユーザー数は4億1,300万人。

紛れもない「巨大プラットフォーム」だ。GAFAと総称される、グーグル、アップル、アマゾンも間違いなくここに分類される。

●透明性と違法コンテンツ対策

「デジタルサービス法」のキーワードは「透明性」だ。113ページある法案の説明文書の中に、「透明性」という言葉は38回出てくる。

欧州委員会が主導する欧州デジタルサービス理事会を新設。各国レベルでは、プラットフォームの監督部門としてデジタルサービス・コーディネーターを設置する。

そして主眼の一つは、違法コンテンツ対策だ。違法に至らない、有害コンテンツは含まれていない。

プラットフォームには違法コンテンツの監視までは要求せず、ユーザーが発信する違法コンテンツへの免責も「電子商取引指令」から踏襲する。

欧州委員会はこれに先立つ12月3日、フェイクニュース(ディスインフォメーション)に関する包括的な政策パッケージ「欧州民主主義行動計画(EDAP)」を発表している。

「デジタルサービス法」は、この「行動計画」と連携する法整備となる。

「デジタルサービス法」ではまず、小規模事業者を除くすべての「仲介サービス」は、コンテンツ管理に関する「透明性レポート」を毎年、監督機関に提出を義務付けられている。

また「ホスティングサービス」以上では、ユーザーによる違法コンテンツの通報(フラグ)の仕組みの整備、「オンラインプラットフォーム」以上では、警察機関であるユーロポール(欧州連合法執行協力庁)などの通報組織(トラステッドフラガー)との協力態勢を整備する義務を負う。

「オンラインプラットフォーム」「巨大プラットフォーム」はオンライン広告の広告主、その配信対象などの情報について、透明性確保の義務を負う。

特に、フェイクニュースの元凶とも目されるオンライン政治広告については、2021年第3四半期までに、別に新法の策定が予定されている。

※参照:政治広告がフェイクニュースの元凶とSNSに突き付ける(12/05/2020 新聞紙学的

さらに"本丸"とも言えるGAFAなどの「巨大プラットフォーム」に対しては、リコメンドシステムのアルゴリズムなどの透明性確保や、自社システムへの濫用対策の監査、研究者らによる内部データへのアクセス確保などが、他のすべての義務に加える形で、課せられている。

●「ゲートキーパー」の義務

「デジタルサービス法」がネットワークインフラの事業者まで幅広く網をかけるのに対し、「デジタル市場法」では、GAFAなどの巨大プラットフォームにのみ照準を合わせている。

ここで対象とされるのは「ゲートキーパー」だ。

「ゲートキーパー」の定義は、①欧州経済領域(EEA、EUにノルウェー、リヒテンシュタイン、アイスランドを加えた30カ国)で過去3年間に年65億ユーロ以上の売上高、もしくは650億ユーロ以上の時価総額で、加盟国3カ国以上でサービス展開②前年に4,500万人以上のユーザー、もしくは1万社以上のビジネスユーザー③過去3年間に①②とも満たしている、の3点としている。

時価総額を見ても、GAFAは常に世界トップ10の上位を占め、その額は「ゲートキーパー」の基準を1ケタから2ケタ超える。

「ゲートキーパー」に義務付けられるのは「公正さとオープン性」だ。

「ゲートキーパー」は自社のプラットフォーム上で、サードパーティーによるサービス展開やプロモーション展開を認めなければならない。

その一方で、ユーザーがプリインストールされたアプリをアンインストールすることを妨害したり、ビジネスユーザーの利用データを自社ビジネスに流用したりすることは、禁じられている。

●売上高の6%と10%の制裁金

EUは制裁金の厳しさで知られる。2018年施行の個人データ保護法制「一般データ保護規則(GDPR)」では、最大で2,000万ユーロか世界の売上高の4%が制裁金として科されることになる。

今回の二つのデジタル法案の制裁金は、それを上回る。

「デジタルサービス法」では、「巨大プラットフォーム」に対する制裁金として、最大で前年の総売上高の6%が科される、と規定されている。

これは2019年の年間売上高で換算すると、アマゾンで168億ドル、アップルで156億ドル、グーグル(アルファベット)で97億ドル、フェイスブックで42億ドルに相当する。

さらに、「デジタル市場法」ではそれが、最大で売上高の10%に跳ね上がる。

これはアマゾンで280億ドル、アップルで260億ドル、グーグルで162億ドル、フェイスブックで71億ドルに相当する。

インパクトのある制裁金額だ。

●「プラットフォームの責任」の合唱

「プラットフォームの責任」を問う声は、波を打つように次々とGAFAに押し寄せる。

EUのデジタル2法案が発表されたのと同じ12月15日、英国もまた、同様のコンテンツ管理規制「オンライン安全法」の概要を発表している

EUの「デジタルサービス法」とも近いが、目立った違いは、規制範囲を違法コンテンツだけでなく、より広く有害コンテンツも含んでいる点だ。

そして、規制対象を英国でのビジネスの3%以下の巨大ビジネスに限定する、としている。照準はやはりGAFAに合わせている。

そして、違法・有害コンテンツの監視システムなどの整備を注意義務として課している。

監督は英情報通信庁(Ofcom)が担い、制裁金は最大で1,800万ポンドか世界の売上高の10%と、EU並みだ。

プラットフォームによるコンテンツ管理については、GAFAの足元の米連邦議会でも、特に米大統領選をめぐって民主共和両党から大きな議論が沸き起こっている。

焦点はプラットフォームに対して、ユーザー投稿コンテンツをめぐる免責を定めた通信品位法230条。その再検討の方向性は、ほぼ既定路線になりつつある。

※Facebook、Twitterがメディアの「暴露ニュース」を制限する(10/16/2020 新聞紙学的

※参照:SNS対権力:プラットフォームの「免責」がなぜ問題となるのか(05/30/2020 新聞紙学的

「大きすぎる」GAFAへの反トラスト法(独占禁止法)違反での責任追及は、米司法省による10月のグーグル提訴、12月9日の米連邦取引委員会(FTC)ニューヨーク州など48州・特別区の司法長官によるフェイスブック提訴、12月16日にはテキサス州など10州によるグーグル提訴、と波状攻撃の様相だ。

※参照:「買収か死か」ユーザー32億人のFacebookに分割を突き付けるわけ(12/11/2020 新聞紙学的

一方で、オーストラリアではニュースコンテンツへの使用料支払いをめぐって、グーグル、フェイスブックに照準を絞った「ニュースメディア契約法」が12月9日、議会提出された

※参照:Googleが1,000億円をメディアに払う見返りは何か?(10/04/2020 新聞紙学的

プラットフォームへの法的規制では、日本でも取引の透明化に焦点を当て、取引条件開示などの義務を定めた「特定デジタルプラットフォームの透明性及び公正性の向上に関する法律」が5月末に成立。来春施行を目指す。

今や、米国、EU、オーストラリア、日本が、物事のバランスをどうとるべきか、というグローバルな対話に参加している。最も大事なことは、規模には責任が伴う、ということだ。

デジタル2法案の発表で、ベステアー氏は、プラットフォームへの包囲網が大西洋、太平洋を覆う規模で広がっている現状を、改めて指摘している。

●2021年は「ビッグテック規制の年」

EUのデジタル2法案をめぐるプラットフォーム側の声明には、深い不満がにじむ。ロイターが、反応をまとめている

法案がごく少数の企業をターゲットにしているように見え、欧州の小規模事業者を支援する新たなプロダクト開発を困難にしている点を憂慮している。

グーグルの行政・公共政策担当副社長のカラン・バティア氏は、そうコメントしている。

米商工会議所は本日の提案が、ほぼ米国企業のみをターゲットとし、新たに法外な制裁金を伴う重い義務規定を課していることに、懸念を表明する。絵欧州は域内の経済的的な成長と復興に多大な投資をしてきた成功企業を処罰する意図があるようだ。

米商工会議所副会頭のマイロン・ブリリアント氏は、米国企業への狙い撃ち、と位置付ける。

だが、この波状攻撃は大きな波になる、と専門家は見る。

2021年は巨大テクノロジー企業に対する規制の年になるだろう――これらは今や成熟産業であり、もうキラキラした若いスタートアップの集まりではないのだ。

米シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」の上級副所長、ジェームズ・ルイス氏は、ニューヨーク・タイムズのインタビューに、そう答えている。

各国の動きは始まったばかり。攻防が本格化するのは、まさに2021年からだ。

(※2020年12月18日付「新聞紙学的」より加筆・修正のうえ転載)

桜美林大学教授 ジャーナリスト

桜美林大学リベラルアーツ学群教授、ジャーナリスト。早稲田大卒業後、朝日新聞。シリコンバレー駐在、デジタルウオッチャー。2019年4月から現職。2022年から日本ファクトチェックセンター運営委員。2023年5月からJST-RISTEXプログラムアドバイザー。最新刊『チャットGPTvs.人類』(6/20、文春新書)、既刊『悪のAI論 あなたはここまで支配されている』(朝日新書、以下同)『信じてはいけない 民主主義を壊すフェイクニュースの正体』『朝日新聞記者のネット情報活用術』、訳書『あなたがメディア! ソーシャル新時代の情報術』『ブログ 世界を変える個人メディア』(ダン・ギルモア著、朝日新聞出版)

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