新型コロナのデマ、2割超すユーザーがSNSで間違い指摘に乗り出す

(写真:ロイター/アフロ)

新型コロナウイルスをめぐるデマの拡散に対し、2割を超すユーザーがソーシャルメディア(SNS)でその間違いの指摘に乗り出している――。

米ジョージタウン大学とミネソタ大学の研究者が、オンライン調査によってそんな動きを明らかにした

デマは事実よりも拡散力があり、デマの否定がよりデマを拡散させてしまうこともある――デマを否定する難しさは、これまで様々な形で指摘されてきた。

だが新型コロナのデマをめぐっては、公的機関や専門家、ファクトチェック団体による否定に加えて、多くの一般ユーザーが、ソーシャルメディアでその間違いの指摘に取り組んでいる。

そして、新型コロナのデマには「対応すべき」「それは(ユーザーの)共同責任」とする声も7割近くにのぼった、という。

同様の動きは米国にとどまらず、日本のユーザーからも起きている。

未曾有の新型コロナ禍の中で、デマに対する否定的な見方が国境を超えて広がっているようだ。

●デマ指摘、3割超が目撃

調査を行ったのは、ジョージタウン大学特別准教授のレティシア・ボード氏とミネソタ大学准教授のエミリー・ブラガ氏。

両氏は5月7日付の米ワシントン・ポストへの寄稿で、この調査結果をまとめている。

それによると、ボード氏らは3月27日から29日にかけて米国の1,072人を対象に、新型コロナの誤情報(ミスインフォメーション)への反応についてネット調査を実施した。

それによると、34%の人が、調査を行った前週、新型コロナについての誤情報をソーシャルメディア上で共有した人が、その誤りを他のユーザーから指摘されているのを見た、と回答。

また23%の人は、新型コロナの誤情報をソーシャルメディア上で共有した人に対し、自らその誤りを指摘した、と回答していた。

この結果では、支持政党や政治的立場による違いは見られなかった、という。

米国では特に、フェイクニュースをめぐる評価が政治的立場によって大きく分かれ、社会の分断も指摘される。

しかし新型コロナの場合は、政治的立場に関係なく影響が極めて身近で深刻であるため、誤情報に対する姿勢にも分断は見受けられないようだ。

調査ではさらに、これらソーシャルメディア上でのユーザーによる誤情報の指摘についての受け止め方もたずねている。

それによると、56%が「好ましい」と回答。また、68%は誤情報の共有を目にしたら「対応すべき」、67%がソーシャルメディア上の誤情報への取り組みは「(ユーザーの)共同の責任」だとした。

これらの受け止め方も、性別や年代、政治的立場での違いは見られなかった、という。

●事実とデマ、ツイートほぼ拮抗

ボード氏らはこの調査に先立ち、他の研究者らとともに、1月15日から3月16日までの2カ月間に投稿された、新型コロナに関連したツイート279万件を調査している。

これらのツイートに含まれていたURLのうち、米疾病対策センター(CDC)や世界保健機関(WHO)などの信頼できる公的機関のサイトと、デマの配信などで知られる誤情報サイトの数を比較したところ、前者は約2万4,000件、後者は2万3,000件と、ほぼ拮抗していた。

また、その内訳を見ると、オリジナルのツイートでは、公的機関などのサイトのURLの方が多かったが、リツイートの数では誤情報サイトのURLが勝り、結果的に総数ではほぼ同じになっていた。

これまで、世界規模のユーザーを抱えるフェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアは、フェイクニュース拡散の舞台として大きな批判を浴びてきた。

また、フェイクニュースの拡散に対して、ソーシャルメディア側はファクトチェック機関と連携するなど対策の動きも活発化している。

だが一方で、フェイクニュースはリアルのニュースに比べて、拡散の規模、速度とも大きく上回ることがマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの研究で明らかになっている。

※参照:なぜフェイクニュースはリアルニュースよりも早く広まるのか(03/11/2018 新聞紙学的

また、デマ否定が、かえってデマの拡散につながるケースがあることも、米ダートマス大学などの研究チームの調査によって明らかにされている。

※参照:新型コロナ:「デマ否定」がデマを拡散させる――そこでメディアがやるべきことは(04/06/2020 新聞紙学的

だがボード氏らは、そのソーシャルメディア上で、大規模なユーザーの衆人環視のもとで誤情報を訂正することで、それをやはり大規模に波及させる効果があると指摘する。

ボード氏らはこれまで、このソーシャルメディアにおける”衆人環視の訂正”の効果について、反対論などの議論の的となる「遺伝子組み換え(GE)食品」「インフルエンザ予防接種」「日焼け止め」「ジカウイルスの発生源」などのテーマについて、フェイスブック、ツイッター、インスタグラムなどで調査を実施してきた

それによると、ユーザーが、ソーシャルメディア上での誤情報共有に対して間違いを指摘することで、他のユーザーの誤認識の割合が10%から25%低下した、という。

ボード氏らは、”衆人環視の訂正”のメリットについて、誤情報と間違い指摘の投稿が近接するため、誤情報が広まる前に、手を打つことができると指摘。

さらに、誤認識をしていたユーザーも、他のユーザーが指摘を受けるのを目にすることで、よりマイルドな形で誤認識を改めることにつながる、という。

●デマ指摘のリスク

ユーザー同士の間違い指摘は、トラブルのリスクも抱える。

今回の新型コロナの誤情報をめぐる調査では、間違いを指摘することのリスクについてもたずねている。

調査では48%が、ソーシャルメディア上で誤情報に対応することが「トラブルの原因になる」と回答。53%はそれが「荒らし(トロール)の引きがねになる」としていた。

だが、このような場合も、信頼できる専門家グループやファクトチェック機関による事実や科学的調査結果を提示することで、効果的な指摘が可能であることが、ボード氏らのこれまでの研究で明らかになっているという。

また、このような誤情報指摘が、1人だけではなく、他のユーザーからも重ねて行われる場合には、誤認識の減少により効果があるという。

さらにボード氏らは、今回の調査でも7割近くが新型コロナの誤情報に対して「対応すべき」であるとし、それは個々のユーザーの「共同責任」であるとしている点を指摘。こう述べている。

この結果によって、ソーシャルメディア上で他のユーザーへの誤りの指摘を、安心して行うことができ、その頻度も増えてくることになるだろう。

●日本でも

筆者も出演したNHKの番組「フェイク・バスターズ 新型コロナウイルス“情報爆発”に立ち向かう」(5月5日放送、9日再放送、12日23:15までNHKプラスで配信)でも、このようなソーシャルメディア上での、ユーザーによるデマ指摘の取り組みを紹介していた。

番組では「みどり(仮名)さん」という主婦による、独自のファクトチェックの取り組みを紹介。

新型ウイルスはヨーグルトで予防できる」「高濃度ビタミンCが効く」などの根拠不明の投稿に対し、専門家の知見を紹介しながら訂正のコメントを書き込んできた、という。

さらに知人から回ってきた「医療現場において、ウイルスはアルコールでは消毒できないというのが通説」とのツイートに対しては、厚生労働省の国立保健医療科学院が医療機関向けのQ&Aで「手など皮膚の消毒を行う場合には、消毒用アルコール(70%)を」などとしていることを参照しながら、誤りを指摘したという。

「誰かが訂正しないといけないじゃないのかなと思って」と番組の中で「みどりさん」はコメントしている。

ここで「みどりさん」が取っている手法は、ジョージタウン大のボード氏らが指摘するものと合致する。

まず、公的機関の情報をそのまま紹介する、という点。さらに、投稿者を過度に批判しない、という点だ。

「みどりさん」は、「誰しも勘違いはあることですので、いきなり『デマです』とは言わないようにしている」と述べており、ボード氏らの調査結果でも触れられていた、トラブルの危険性の回避にもつながっている。

番組では、このようなファクトチェックに取り組むソーシャルメディアのユーザー約30人にもその動機を取材。多くは新型コロナをめぐるデマの氾濫「インフォデミック」への危機感から活動を始めた、という。

国境をまたぐ新型コロナ禍の「インフォデミック」には、国境をまたいだソーシャルメディアのユーザーたちの取り組みが動き出している。

(※2020年5月9日付「新聞紙学的」より加筆・修正のうえ転載)