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100回目のコミケ開催! 来場者数緩和と30年超の参加者語るリアル開催の意義

河嶌太郎ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)
1日目は台風が迫る中での開催となった

 世界最大の同人誌即売会・コミックマーケット(コミケ)100が8月13日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開幕しました。「100」とあるように、100回目を記念する開催となります。

 2020年4月以降のコロナ禍では、21年12月末の「コミケ99(C99)」に続く2回目の開催になります。来場者数はソーシャルディスタンスに配慮して前回は1日あたり5万5000人に絞っていましたが、今回は8~9万人を見込んでいます。一方で出展サークル数は1万9882サークルで、前回の2万サークルからはほぼ横ばいとなっています。

 開催期間もC99に続く2日間で、夏は3日間が常だったコロナ禍以前からは縮小状態が続いています。

来場者数緩和でかつてのコミケの賑わいも徐々に取り戻しつつある
来場者数緩和でかつてのコミケの賑わいも徐々に取り戻しつつある

C99からの変更点

 前回のC99から、コミケは大きく変わりました。それまでのコミケは入場無料だったのですが、2019年からは一部有料化。C99からは完全に有料化され、チケットがないと会場に入れなくなったほか、来場時間も指定されるようになりました。

 これによってC99ではコミケで長年問題となっていた徹夜列が解消するという副産物を生み出しました。C100も引き続き来場時間が指定されたチケット制で、徹夜列が解消される見通しです。

 C99ではこのチケットの指定時間が午前中のみとなっていましたが、C100からは「午後入場チケット」も追加されました。この「午後入場チケット」は1000円(税込み)となっており、「午前入場チケット」の2000円(同)と比べ半額になっています。

 他にも、C99では入場時に新型コロナウイルスのワクチン接種証明書や、陰性証明書の提示が必要でしたが、これはなくなり緩和されています。また、C99では会場である東京ビッグサイトの東地区と西・南地区の移動が制限されていましたが、これも緩和されなくなりました。

 それ以外でも、これまでコミケの開場時間は午前10時からとなっていましたが、C100では10時30分開場になり、30分遅くなります。

企業ブースの様子
企業ブースの様子

コミケ100回の歴史

 今回で記念すべき100回目を迎えたコミケですが、どういう変遷を辿ってきたのでしょうか。歴史的な第1回は1975年12月21日に東京都港区虎ノ門にあった日本消防会館で開催され、出展サークルは32サークル、参加者は約700人でした。

 頒布されている同人誌も、今では有名作品の二次創作が主体ですが、初期の頃はそうではなく、オリジナル作品が主体だったといわれています。また、今のような同人誌向けの印刷会社は当時なく、青焼きのコピー本が中心だったようです。また、今では毎年お盆と年末の夏冬2回開催が定着していますが、当時は4月前後の春にも開催されていました。

 その後、次第に個人でも印刷業者を活用しやすくなり、二次創作の数も増えていきます。会場も東京都中央区晴海にあった東京国際見本市会場や、千葉市の幕張メッセなどに移し、出展サークル数は1万以上、参加者数は2日間で10万人以上の規模に拡大していきます。

 そして記念となる50回目のC50から東京ビッグサイトでの開催が定着し、現在に至るまで続いています。東京ビッグサイトに移してからは3日間開催でサークル数は3万5000、約50万人を集める世界的なイベントへとなっていきます。

 2019年には20年に開催予定だった東京オリンピックの影響で、東京ビッグサイトが全館使えなくなることから4日間の開催になりました。1日あたりの出展面積は減少したものの、会場を訪れる人の勢いは変わらなかったことから、19年12月のC97では過去最高となる75万人の参加者を集めました。4日間開催はあくまで特例であることから、この来場者記録が破られることは当面ないと思われます。

参加者の声

 100回目のコミケを迎えた参加者の思いは様々です。C79以降北海道から毎回参加しているという30代男性はこう話します。

「コロナで紆余曲折ありましたが、今回記念すべき100回目を無事参加できてとても嬉しく思います。コミケに行くようになってから10年あまりが経ちますが、参加するたびに同好の仲間も増えていきました。今回こうして一同に集まれることで、一種の同窓会会場にもなっています。今後も参加し続けたいと思います」

 また、100回の歴史の中で、多くのプロの漫画家やイラストレーターを輩出しているのもコミケの特徴です。その一人で、C100にもサークル出展する、漫画家で参議院議員の赤松健さん(54)はこう話します。赤松さんは週刊少年マガジンで連載していた『ラブひな』や『魔法先生ネギま!』などの代表作で知られます。

「3桁に突入したのはすごいと思います。私は1991年からコミケに参加していますけど、ここまで続いたかという思いもあります。万感の思いですね」

 赤松さんは7月の参院選で初当選したばかりではありますが、ある問題意識から今回の同人誌即売会に出展したといいます。

「コロナの影響によってサークルの出展数が全体的に減少しているのですが、特に自分も慣れ親しんだ男性向けのサークルが減ってきています。男性向けのジャンルを今一度盛り上げたくて今回出展しました。もちろん、そのためにはいい本を作らないといけません。参加者の方もいい本を求めて『会場で並んだ、完売だった、楽しかった』というようなことをTwitterでつぶやくと、『俺も行きたかった』という反応も少なくありません。そういう好循環を会場から再び生み出したいですね」

 表現の場がリアルにあって、そこに多くの人が直接集まれる場はやはりそれだけ価値があります。コロナ禍でZoomをはじめ様々なオンラインでのコミュニケーションツールが盛んに用いられるようになりましたが、やはりオフラインの対面イベントに勝るものはないと筆者も考えます。

 第1回のコミケに参加していた人達の大半は既に還暦を迎え、コミケは世代を超えて継承されているイベントと言えます。一方で、若い世代はSNSなどのコミュニケーションにネイティブに慣れ親しんでおり、コミケ参加者の高齢化も指摘されています。この表現のリアルな場をいかに次の世代に受け継いでいくか、コロナに限らず、時代の変化と共に絶えず模索し続けなければならないと思います。

(撮影/全て筆者)

ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)

1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。「聖地巡礼」と呼ばれる、アニメなどメディアコンテンツを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「withnews」「AERA dot.」「週刊朝日」「ITmedia」「特選街Web」「乗りものニュース」「アニメ!アニメ!」などウェブ・雑誌で執筆。共著に「コンテンツツーリズム研究」(福村出版)など。コンテンツビジネスから地域振興、アニメ・ゲームなどのポップカルチャー、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。

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