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『ゾンビランドサガ』映画化決定! 幕張リベンジライブで語ったフランシュシュの想い

河嶌太郎ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)
ライブでは7人のメンバーが初めて舞台に集結した(エイベックス・ピクチャーズ提供)

 ゾンビとなった少女たちがアイドルとなって佐賀を救う――アニメと佐賀県のコラボが話題となった『ゾンビランドサガ』。2018年10月から12月にかけてアニメ1期が放送され、21年4月から6月にかけては続編となる2期『ゾンビランドサガ リベンジ』が放送され、話題を集めました。

 作中の主人公たちを演じる声優による音楽展開も積極的に行われています。「フランシュシュ」というグループ名で、今や佐賀を代表するご当地アイドルとなっています。2期放送前の21年2月27日には、1年7ヶ月ぶりとなるライブ「ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュ-LIVE-OF-THE-DEAD“R”~」が行われたほか、2期アニメではさらに15曲以上の新曲が披露されました。

 そして10月16日と17日には千葉市の幕張メッセで、2期放送終了後初となるライブ「ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュ 佐賀よ共にわいてくれ~」が開かれました。ライブでは2期の新曲を中心に披露され、さらに映画化決定も発表されました。

ライブの最後ではサプライズで映画化決定の動画が流れた(エイベックス・ピクチャーズ提供)
ライブの最後ではサプライズで映画化決定の動画が流れた(エイベックス・ピクチャーズ提供)

“リベンジ”となった幕張のライブ

 実はこの幕張メッセでの公演は、フランシュシュにとって因縁があります。2020年3月8日、フランシュシュは幕張メッセで昼の部と夜の部の2回、ライブ「ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュ LIVE OF THE DEAD~」を開く予定でした。その規模は1万2000人規模で、『ゾンビランドサガ』史上最大のライブとなる予定でした。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止となってしまいます。

 このライブに向けたフランシュシュやゾンビランドサガ運営の準備は相当なものでした。18年12月のアニメ1期放送終了後、2期が放送開始される21年4月までは約2年3ヶ月の開きがありますが、この間にもフランシュシュは新曲やミュージックビデオの展開もしていました。19年11月27日には、アルバム「ゾンビランドサガ フランシュシュ The Best」を発売したほか、佐賀市と福岡県大川市の間に架かる筑後川昇開橋など、アニメ1期では登場しなかった舞台を描いたミュージックビデオも特典として収録しています。

 こうした新曲の披露と、2期に向けた新情報の披露の場として、この20年3月8日の幕張メッセは期待されていました。筆者もこのライブに行く予定でしたが、ライブが中止となっただけでなく、情報の発表の機会が失われてしまったことに、『ゾンビランドサガ』はどうなってしまうのかという思いがありました。

 この悔しいとも言える出来事が、アニメに影響を及ぼしたのかどうかはわかりません。2期のアニメのタイトルには『ゾンビランドサガ リベンジ』と「リベンジ」が付け加えられ、作品のはじまりも、フランシュシュが3万人規模のスタジアムライブに挑んだどころ、500人しか集客できず、多額の負債を抱えるところからスタートします。

 この物語の流れは、リアルでは幕張メッセのライブを開きたくても開けなかった無念さを思い起こします。作中では最後にフランシュシュは同じスタジアム会場を満員にしたところで終わりますが、リアルでも幕張メッセを舞台に、2日間という日程に広げられる形で1年7ヶ月ぶりの“リベンジ”の機会を得たことになります。

アニメで1話だけのメンバー加入となった楪舞々役の花澤香菜もステージに立った
アニメで1話だけのメンバー加入となった楪舞々役の花澤香菜もステージに立った

大盛況の会場で映画化発表

 ライブは2日間ともチケットは完売。10月に入り新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いてきたことから、千葉県は席数の制限を緩和。急遽チケットの追加販売も実施されました。この追加販売分も完売したことで会場は満員となり、ライブはフランシュシュ史上最大規模となりました。主人公の源さくらは「(運を)もっとらん」主人公として描かれていますが、作中同様、最後は運も味方したと言えるでしょう。

 2日目の最後には、『ゾンビランドサガ』の映画化の決定が発表されました。会場では実写の告知動画も流れ、2期2話で「ホワイト竜」役として出演した佐賀県出身の俳優、白竜と、同じく佐賀県出身の俳優、村井國夫が共演する様子が描かれました。

 映像では「復讐(リベンジ)の先」がテーマとして描かれており、映画の内容を予感させる描かれ方になっています。内容や公開時期だけでなく、ジャンルも未定となっており、もしかすると一転変わった内容になるかもしれません。

 映画化の話はフランシュシュのメンバーにも知らされていなかったようで、皆驚いた反応を示していました。紺野純子役の河瀬茉希は「まだメンバーやファンのみんなと一緒にいられることが何よりも嬉しい」と話したほか、二階堂サキ役の田野アサミは、「今日のライブが終わったらもうみんなと会えないのではないかと思っていた。そしたらまさかの映画化決定。幕張や佐賀のアルピノでのリベンジはできた。あとは最初のライブの時に話した、武道館のライブの夢をみんなで叶えたい!」と想いを語りました。

 また、源さくら役の本渡楓は、「オリジナルアニメで、最初は公式Twitterアカウントのフォロワー214,5人からスタートした企画だった。当時佐賀県の『バルーンフェスタ』に行った時の気球の中で、おふざけと半分願いを込めて『テレビアニメ2期や劇場版やりたい』と、(星川リリィ役の) 田中美海ちゃんと話していた。そこから劇場版まできたことに、言うことって大切だなと思った。絶対にまたみんなと会いたい」と涙を流しながら話しました。

フランシュシュのメンバーは7人だが、基本歌わない山田たえ役の三石琴乃はこれまで同じステージに立つことがなかった(エイベックス・ピクチャーズ提供)
フランシュシュのメンバーは7人だが、基本歌わない山田たえ役の三石琴乃はこれまで同じステージに立つことがなかった(エイベックス・ピクチャーズ提供)

今後は劇場版の展開に期待

 TVアニメを2期放送し、そこから劇場アニメを展開するという手法は、実はアニメ『けいおん!』(2009年~)や『ラブライブ!』シリーズ(2013年~)をはじめ、アニメ作品では「王道」ともいえるやり方です。そのため、ファンの間からは「次は劇場版なのでは?」と予想する人も少なくありませんでした。

 『ゾンビランドサガ』もこの例に漏れない展開となったわけですが、この作品に限っては、次は一体どうなるのか? という展開の読めなさもあります。まだまだフランシュシュの活動は続くことは確実で、次回のライブも間違いなくあることでしょう。

 フランシュシュは作中では佐賀県鳥栖市の「鳥栖スタジアム(駅前不動産スタジアム)」でのライブを2回行っていますが、これもまだ現実のものになっていません。こうしたライブ展開も期待できるだけに、楽しみでなりません。

 ライブは最後に、源さくら役の本渡楓によるおなじみの「私たちのいるここが“佐賀”だー!!」という挨拶でしめくくられました。コロナ禍でまだまだ国内の自由な移動も難しい状況下ではありますが、少しずつですが回復の兆しも見せています。またファンが佐賀に集まれる日を楽しみにしています。

「ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュ 佐賀よ共にわいてくれ~」で披露された楽曲は次の通りです。

M01:REVENGE

M02:大河よ共に泣いてくれ

M03:風の強い日は嫌いか? FranChouChou cover

M04:佐賀事変

M05:50と4つの忘れ物

M06:命

M07:リトルパラッポ

M08:目覚めRETURNER(3号ソロVer.)

M09:激昂サバイブ

M10:FLAGをはためかせろ!/ヨミガエレ/アツクナレ/特攻DANCE ~DAWN OF THE BAD~

M11:ぶっちゃけてフォーユー

M12:光へ(with7号ver.)

M13:輝いて

M14:追い風トラベラーズ

En1:徒花ネクロマンシー

En2:夢を手に、戻れる場所もない日々を

(C)ゾンビランドサガ リベンジ製作委員会

公式サイト: zombielandsaga.com

公式Twitter:@zombielandsaga

ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)

1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。「聖地巡礼」と呼ばれる、アニメなどメディアコンテンツを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「withnews」「AERA dot.」「週刊朝日」「ITmedia」「特選街Web」「乗りものニュース」「アニメ!アニメ!」などウェブ・雑誌で執筆。共著に「コンテンツツーリズム研究」(福村出版)など。コンテンツビジネスから地域振興、アニメ・ゲームなどのポップカルチャー、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。

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