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汚された「ラブライブ!」マンホール 犯人逮捕で沼津市「早く再設置したい」

河嶌太郎ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)
傷が付けられる前の在りし日の「ラブライブ!」マンホール(あきらさん提供)

 マンホールのふたにキャラクターやイラストが描かれた、「デザインマンホール」。今や全国各地で見られるようになっているが、アニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の聖地となった静岡県沼津市も例外ではなかった。だが、設置して3週間もしないうちに、故意に傷つけられたり、白い塗料が塗られたりするといった事件が相次ぎ、一時撤去されるという事態となっていた。

 沼津市は沼津署に被害届を提出し、警察による捜査が行われていた。7月2日にはふたを傷つけたとして、器物損壊の疑いで埼玉県春日部市と東京都練馬区の男子高校生2人が逮捕されたほか、25日には白い塗料を塗りつけたとして、埼玉県草加市の男子大学生が逮捕された。時事通信などによればこの3人は面識があったといい、事件は同一のグループによる犯行の可能性がある。ともあれ、この犯人逮捕によって事件が収束に向かった格好となった。

沼津市内のリコー通りに設置されていた桜内梨子のデザインマンホール(あきらさん提供)
沼津市内のリコー通りに設置されていた桜内梨子のデザインマンホール(あきらさん提供)

クラウドファンディングで設置

「デザインマンホール」は広島東洋カープや東北楽天ゴールデンイーグルスなどといったプロ野球チームのマスコットや、くまモンやひこにゃんなどといったゆるキャラが描かれたものをはじめとして、全国各地に設置されてきた。

 アニメ作品もこれに追随する形で、これまで「ジョジョの奇妙な冒険」の空条承太郎など9体のキャラクターが描かれたマンホールが仙台市内に2017年8月から9月にかけて設置されたのを皮切りに、「銀河鉄道999」のメーテルなど9種類のキャラを描いたものが北九州市内に2018年5月から設置されている。そして、同じく5月には、「ラブライブ!サンシャイン!!」の主人公9人が彩られたデザインマンホールが、舞台となった静岡県沼津市で設置されたのだった。

 この「ラブライブ!サンシャイン!!」のマンホールの設置にあたっては、インターネット上で資金を募る、クラウドファンディングという手法が採られた。「聖地巡礼」を支援するスマートフォンアプリ「舞台めぐり」を開発・運営するソニー企業株式会社が中心となり、開始30時間で目標額の2217万円を集めた。この結果を受けて沼津市と協働する形で、市内9ヶ所に5月18日設置された。ところが、一連の器物損壊事件を受け、6月6日には再発防止を目的に沼津市は9ヶ所全てのデザインマンホールのふたを回収し、通常のものに戻した。以後、7月26日現在、デザインマンホールの再設置には至っていない。

一時撤去された国木田花丸のデザインマンホール(あきらさん提供)
一時撤去された国木田花丸のデザインマンホール(あきらさん提供)

沼津市「なるべく早く再設置したい」

 沼津市では、一連の事件の犯人逮捕を受け、25日付けで「マンホールについては、なるべく早く再設置できるよう、安全性の確保や回遊性の向上の観点を踏まえつつ、場所や時期等を検討してまいります」という文章をホームページに掲載している。夏休みシーズンというのもあり、連日訪れる多くの「ラブライブ!」ファンのために再設置したいというのが本望だろう。

 マンホールのふたはいまどんな感じなのだろうか。管理する沼津市水道総務課は筆者の取材に対し、次のようにコメントしている。

「いまのところ、どのようにふたを修理できるかということを業者と検討している段階です。修理が済み次第、なるべく早く再設置できればと考えています」

 マンホールのふたは踏まれたり傷が付いたりしてもいいように頑丈にできているため、再利用することに問題はないという。あくまで修理の対応で、作り直す必要はないという見方だ。

 この酷暑の中、沼津市には「ラブライブ!」ファンだけでなく、多くの観光客や海水浴客が訪れる。できればこうした客足がある夏の間に、一人でも多くの人に「ラブライブ!」マンホールの姿を見てもらいたいものだ。

カラフルなものではないが、茨城県大洗町にも「ガルパン」のデザインマンホールが設置されている(筆者撮影)
カラフルなものではないが、茨城県大洗町にも「ガルパン」のデザインマンホールが設置されている(筆者撮影)
ジャーナリスト(アニメ聖地巡礼・地方創生・エンタメ)

1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。「聖地巡礼」と呼ばれる、アニメなどメディアコンテンツを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「withnews」「AERA dot.」「週刊朝日」「ITmedia」「特選街Web」「乗りものニュース」「アニメ!アニメ!」などウェブ・雑誌で執筆。共著に「コンテンツツーリズム研究」(福村出版)など。コンテンツビジネスから地域振興、アニメ・ゲームなどのポップカルチャー、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。

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