ソニーグループの2022年3月期(2021年4月~2022年3月)通期連結決算が10日、発表されました。売上高は約10兆円、本業のもうけを示す営業利益は約1兆2000億円で、ゲーム事業がけん引する構図です。PS5に質問が集中した同社の決算について、ゲーム事業の視点から見た三つのポイントを挙げてみます。

◇PS5出ていたら売上高10兆円突破も…

 一つ目は、ソニーグループの売上高と営業利益は過去最高で、PS5の慢性的な品不足に苦しんだゲーム事業(売上高は約2兆7000億円、営業利益は約3500億円)が最大の原動力だったことです。グループに占める割合は、売上高と営業利益とも30%弱で、部門のトップでした。

 ということは、PS5が計画通りに生産できたら、売上高が10兆円を超えていたわけです。そして発売から3年目に突入するPS5は、さらに成長曲線を描くことが予想されます。ちなみに2023年3月期の売上高予想は、11兆4000億円で、うちゲーム事業の部門別売上高予想も3兆6600億円。計画通りであれば大幅増です。

◇メディアの質問 PS5に集中

 二つ目は、決算説明会でメディアやアナリストの質問は、PS5に集中したように、PS5の出荷数が関心事だったことでしょう。2023年3月期(2022年4月~2023年3月)の出荷計画は1800万台で、部材調達のメドは立っている上での見通しです。2022年3月期(2021年4月~2022年3月)の出荷数は1150万台でしたから、大幅増なのは確かでしょう。

 しかし、ロシアのウクライナ侵攻、物流の混乱、世界的な半導体不足もあり、世界情勢の先行きが不透明です。中国で新型コロナのロックダウンでもあれば、再びPS5の下方修正が強いられる可能性もあります。

 そもそも2022年3月期の計画時も1480万台以上(PS4の2年目出荷数と同数)だったのです。世界の物流が混乱したため仕方ないにしても、300万台以上の未達だったのも事実。出せば売れるはずの商品が、手堅く見積もったであろう計画の8割強しか出せなかったのですから、苦戦ぶりがうかがえます。ゲーム開発会社を積極的に買収し、ゲーム事業の強化は進んでいるだけに、PS5以外……PCでの展開、収益強化が重要になってくるのかもしれません。

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◇ゲームのサブスクを巡る攻防は

 三つめは、6月にリニューアルを控えているゲームのサブスク「PSプラス」でしょうか。年間4000億円の安定的収益源の“上積み”……顧客単価のアップがどうなるかでしょう。今回、決算会見でもPSプラスのリニューアルへの期待が言及されました。

 また会見では、マイクロソフト(MS)のサブスク「Xbox Game Pass」と同じように、新作ゲームを「PSプラス」へ発売日から配信する考えはないのか……という趣旨の質問が出ました。ソニーグループの十時裕樹副社長は、直接的な言及を避けながら、新作ゲームの即座の投入は、否定的でした。

 「MSと同じように、ソニーの新作ゲームも、発売日同時にPSプラスに配信して」という意見は、ネットで見かけます。コアなゲームファンからすると、低価格で本格派の新作ゲームが遊び放題になるから当然です。しかし、それはあくまでファンの側の論理。何でもサブスクにすればいいか?というと、ケース・バイ・ケースでしょう。ファンが得をしても、メーカー側、クリーエーター側が苦しめば、ウイン・ウインにならないのです。

 ゲーム事業でMSはソニーの後手を踏んでいます。そしてMSは、ソニーの売上高の約2倍もあるうえに「超」のつく高収益体質です。ソニーのゲーム事業を切り崩すため、MSがゲーム事業の収益減を覚悟してライバルの真似できないサービスを出すのは、ビジネスとして「あり」です。しかし、ソニーが今すぐ追随するのが得策かといえば、難しいところ。収益を圧迫しますし、現状は「静観」の方がベターではないでしょうか。もちろん、MSがサブスクの会員数を急伸させて、並んでくれば状況は変わるでしょうが……。

 要するにPSプラスのリニューアルで、約4700万人の有料会員数がどう動き、ネットワークサービスの収益がどう変化するかです。ゲーム機のシェア争いと共に、ゲームのサブスクを巡る攻防も注目と言えそうです。