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2025年度までに自社制作ソフトの売上を2倍以上に ソニーのゲーム事業 野心的な中期計画

河村鳴紘サブカル専門ライター
ソニーグループ本社=著者撮影

 ソニーグループの2022年3月期第3四半期(2021年10~12月)決算が発表されました。そこでゲーム事業について、2025年度までに自社ソフトの「売り上げを2倍以上」を目指すという、野心的な中期計画が明かされました。

 今回の決算でニュースにするポイントは二つあります。一つは、本業のもうけを示す「営業利益」の通期予想を1兆2000億円へ大きく引き上げたこと(3カ月前は1兆400億円)。もう一つは、家庭用ゲーム機「プレイステーション5」の年間出荷計画が「1480万台以上」から「1150万台程度」と下方修正されたことでしょう。

 特に後者は「330万台」の大幅引き下げです。PS5は現在も品不足状況が続き、希望小売価格以上の価格で売られているほど。ファンにはガッカリする話でしょう。私も1年前に「2021年春ごろには品不足は終わるだろう」という記事を書いたのですが、お恥ずかしながら外れてしまい、いまだに品不足が続いています。もちろん世界で、半導体不足、物流の混乱が続いていることもあるのですが、ここまで続くとは予想した人はいないでしょう。

 さて、四半期(2021年10~12月)のゲーム事業です。売上高は、前年同期比で約8%減の8133億円。営業利益は同約12%増の929億円。ゲーム事業の売上高の通期見通しは2兆9000億円から2兆7300億円に下方修正となりました。しかし、今回のポイントは、ゲーム事業の中期計画を語ったことでしょう。

 CFO(最高財務責任者)でもあるソニーグループの十時裕樹副社長がわざわざ、先日発表されたばかりの米ゲーム開発会社「バンジー」買収の狙いと、ゲーム事業の具体的な目標を掲げました。買収額36億ドル(約4000億円)の「大きな買い物」とはいえ、発表済みの案件に対して、決算説明会の約21分間のうち、バンジー関連に約4分間も割いたことから、力の入れようがうかがえます。

 そこで、十時副社長はゲーム事業の説明で「バンジーの買収を起爆剤として、自社制作ゲームソフトウェアの成長を加速し、2025年度までには、その売り上げを現在の2倍以上に拡大することを目指します」と説明しました。今は2021年度(ソニーグループの通期決算は2022年3月期)ですから「2022年度から2025年度の4年間でやる」と言っているわけです。

 根拠は「バンジー」が持つノウハウにあります。同社は世界的人気ゲームを製作した実績もありますが、長期間ゲーマーを遊ばせて、アドオン(追加)コンテンツで収益を上げるビジネスを展開しています。

 そのノウハウをソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)傘下の開発会社に応用。2025年度までに、このノウハウを活用した10作品を展開。そしてゲームは、PS5以外でも展開するマルチプラットフォームであることを重ねて強調、より広いユーザーの獲得を目指すとしました。

 これだけ具体的に、ゲーム事業の中期戦略を語る理由は、半月前のマイクロソフト(MS)のアクティビジョン・ブリザード買収を意識し、市場や投資家に対してのアナウンスでしょう。MSが有料ゲームサービスの充実や有力コンテンツの取り込みを強調したのに対して、ソニーグループはさらにバンジーのノウハウを共有して、傘下のゲーム開発会社とのシナジー効果を狙うというわけです。

 MSは、ソニーグループの約2倍の売上高があります。売上高は経営の一指標に過ぎませんが、世界相手のビジネスに規模(売上高)があるに越したことはありません。ゲームビジネスには、アップルやグーグルなども手を伸ばしており、今ではうまくいっているとは言い難いものの、資金が豊富なだけに脅威であるのは確か。対抗するには、ゲーム事業のさらなる強化が必要でした。

 そして、今後推し進めるマルチプラットフォーム展開の考えに沿うと、自社のゲーム機(PS5)の普及は一つのミッションに過ぎず、優先すべきは「コンテンツ」の拡大になります。ゲーム事業の戦略が、PS4までの時代とトーンが変わっているのは明らかです。

 それにしても、売り上げを4年間で倍以上にするというのは強烈です。ハードルは高いと思いますが、野心的な挑戦だけに、ぜひ注目したいところです。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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