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「鬼滅の刃 遊郭編」 録画再生視聴率は首位 世帯総合は20%突破で絶好調 個人で「日本沈没」に肉薄

河村鳴紘サブカル専門ライター
マンガ「鬼滅の刃」のコミックス9巻と10巻

 人気アニメ「鬼滅の刃」シリーズの新作「遊郭編」第1話で、録画をして7日間までの再生視聴を指す「タイムシフト視聴率」などの最新週データ(2021年11月29日~12月5日、関東地区)がビデオリサーチ社から公開されました。

◇総合視聴率20%超えは4作品

 「鬼滅の刃 遊郭編」ですが、第1話(12月5日放送)のリアルタイムの世帯視聴率は9.2%で、大台の10%に届きませんでした。23時台という遅い放送時間を考えると快挙なのですが、21時に放送された地上波初放送の「無限列車編」では20%を超えた実績があり、期待が大きかっただけにモヤモヤ感が残った人もいたようです。

 ところが世帯のタイムシフト視聴率を見ると、本当のパワーが明らかになります。遊郭編のタイムシフト視聴率は13.2%で、週のトップでした。2位は「最愛」の10.6%、3位は「日本沈没」の10.5%でした。

 そしてリアルタイムとタイムシフトでのいずれかの視聴を指す「総合視聴率」でも、世帯は20.1%と大台に乗せました。

 同じ週に放送された番組で比較すると、すごさが際立ちます。「ドクターX」(21時~)が24.2%、「カムカムエヴリバディ」(8時~)が23.6%、「日本沈没」(21時~)が23.0%でした。「鬼滅の刃 遊郭編」は、4位で、20%を超えたのはこの4作となります。

 「遊郭編」は23時台の遅い時間に放送されたにもかかわらず、ランキングの上位に進出したわけです。30分放送のアニメの視聴率が伸びない傾向を考えると、やはり「鬼滅の刃」は別格です。

 アニメ「鬼滅の刃」は元々、ネット配信で多くのファンをつかんだ流れもあり、そのため「遊郭編」でもネット視聴の層も相応にいることが推測されます。その点を考慮すると、潜在的にはさらなるパワーがありそうです。

◇個人の総合視聴率は更に好調

 なお「世帯視聴率」ではなく、近年重視されている「個人視聴率」の視点で見ると、「三強」のドラマに肉薄しています。個人の総合視聴率では、「ドクターX」が14.3%、「カムカムエヴリバディ」が13.4%、「日本沈没」が13.9%。「遊郭編」は13.8%なので、「カムカムエヴリバディ」を抜き、「日本沈没」とはわずか0.1ポイント差でした。

 どうしても、速報で報じられるリアルタイムの世帯視聴率が注目されるので、一部では失望の声もあったわけですが、むしろ恐るべき結果といえそうです。シンプルに、遅い時間ゆえに録画再生に流れたわけですね。

 そして一連の数字を見る限り、劇場版アニメの内容を再編成して、約2カ月にわたって放送したテレビアニメ版「無限列車編」の評価は、厳しくなるかもしれません。テレビアニメ版「無限列車編」は第1話こそ好調でしたが、回を重ねるごとにリアルタイム、タイムシフト共に落ちていたのは明らかだったからです。

 9月26日に地上波で初放送された「劇場版アニメ鬼滅の刃 無限列車編」の総合視聴率は、世帯が28.0%、個人が20.8%でした。この勢いのままに「遊郭編」を放送すれば、さらに上の数字が出た可能性がありました。

◇テレビアニメ版「無限列車編」の放送は裏目?

 「遊郭編」1話の視聴率ですが、類似の傾向にあるのは、テレビアニメ版「無限列車編」の第1話(オリジナルエピソード、10月10日放送)でしょう。世帯の総合視聴率は22.2%でした。とは言え遊郭編(20.1%)の第1話と比べると、約2ポイントの差はあります。落ちた理由は、どうしても約2カ月の「実質再放送の期間」と想像されてしまい、裏目に出たと言われても仕方ない結果でした。

 また、もう少し早い時間の放送であれば、番組の盛り上げにいつも一役買うSNSの活発な動きもさらに期待できたでしょう。

 もちろん「遊郭編」の第2話の内容、原作マンガのストーリー展開や予想される描写を総合的に考えると、23時台の放送を選んだのも理解できます。そんなハンデがある中で、テレビアニメが視聴率でテレビドラマと渡り合う状況は、エポックメーキングなことではないでしょうか。NHKの朝ドラと互角以上だったのですから。

 さまざまな事情があるにせよ、また社会を驚かせる絶好の機会だっただけに、本当に惜しいと思う次第です。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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