人気女性VTuber(ブイ・チューバー)グループ「ホロライブ」のぬいぐるみ「もちどる」が23日、量販店のドン・キホーテで発売されました。するとフリマアプリでは一時期、希望小売価格(全31種類で各3278円、税込み)の数倍以上の価格で出品される状態に。ファンからは怒りの声が上がっています。

◇ツイッターで「通販」嘆願の声

 VTuberとは、キャラクターを制作して動画配信する「バーチャル・ユーチューバー」の略称です。そしてホロライブとは、「カバー」(東京都千代田区)が運営する「ホロライブプロダクション」の女性VTuberのこと。多くのキャラクターが所属し、人気を博しています。

 今回、ホロライブとドン・キホーテがコラボグッズを発売すると発表。発売前日に、購入希望者が買えない可能性を考慮してか「各店舗の販売状況に応じて、通販等の実施を検討致します」とツイートするほどでした。

 そして23日、「買えなかった」という無念の声が続出。そしてフリマアプリには「もちどる」がずらりと出品されていました。もちろん、希望小売価格をはるかに上回る値段です。

 購入できなかったとみられるファンからは、通販の検討ではなく決定を……という嘆願のツイートが続出しています。通販が決まれば、我慢すれば本当に欲しい人に商品が行き、転売の相場は落ちます。

 欲しいグッズの購入を我慢するのは大変ですが、転売ヤーから買うと、新商品が希望小売価格以上で売られる「悪質転売」を加速させることになります。

◇プラットフォーマーは「取り締まり」に消極的

 「悪質転売」のターゲットになったアイテムは、挙げていけばキリがありません。ゲーム機の「PS5」や「ニンテンドースイッチ」をはじめ、「鬼滅の刃」のグッズ、プラモデル、ユニクロのコラボ商品など……。共通するのは「品不足」と連動して、フリマアプリなどで希望小売価格(もしくは定価)をはるかに上回る価格で売られることです。

 転売自体は原則法に触れませんが、生産打ち切りになった商品ならともかく、新商品が発売日になくなり、ネットで希望小売価格の数倍で売られるのは、異様でしかありません。「ビジネスはそもそも転売」「経済原理だ」という一部の意見もありますが、一般消費者からすると、とうてい納得できるものではありません。

 一方で転売ヤーを非難しても、転売ヤーには彼らの「言い分」があるわけで、簡単に引かないでしょう。

 カギを握るのは、転売ヤーが商品を売り出すフリマアプリやECサイトなどプラットフォーマーの自主規制です。ただ各社とも「悪質転売」の「取り締まり」については、消極的です。高騰した商品が取引されるほど、各社への手数料がアップし、収益につながるので、「取り締まり」を期待するのは無理なのかもしれません。

楽天が運営するフリマサービス・ラクマや、事業者が出店するECサイト・楽天市場にも、現状はさまざまな高額転売品が並んでいる。「各商品の価格設定は原則自由であり、需要のあるモノの価格が高くなる傾向はどの販売形態でもありうる。楽天市場に関しては、プラットフォーム側が正当な理由なく店舗の販売価格を拘束することは、独占禁止法上問題となる可能性もある」(楽天広報)。

【参考】メルカリ、ヤフオクが高額転売を「禁止」しない理由(東洋経済オンライン)

 皮肉なのは、強者の暴走を食い止めて、消費者や弱者を守るはずの「独占禁止法」が、転売を「取り締まらない」理由になっていることです。言い分もあるため、「悪質転売」に苦しむメーカー側からの要請があって話はしても、協力的とは言い難い構図になっています。

【関連】PS5高額転売問題 SIEの「意見表明」にXマス商戦過ぎてもメルカリ無言 進展望めず

◇転売ヤーという“強者”

 「悪質転売」を食い止めるため、販売店も工夫をしています。横行したままだと、「転売されそうな人気商品はメーカーからの直売で」となりかねないわけで、実際そうした声は挙がっています。販売店としては一大事なわけです。

 販売店の対策は、購入点数の限定、購入希望者に商品の知識を試す質問をして答えられない人の購入を断る、販売時に商品の袋を開封して新品にさせない、クレジットカードなどの顧客情報を利用して複数購入をさせない……などですね。ただし、販売店の負担が大きいといえます。

 人気商品を出すメーカーとファン(一部の消費者)の犠牲の上に成り立つ「高額転売」のビジネス。安易に法に頼るべきではないのでしょうが、需要と供給のバランスを狂わせています。また「悪質転売」の対抗策は、「転売ヤーから買わない」というところに尽きるのですが、「買わない」ということは、経済活動を止めていることです。

 そもそも本来の価格競争は「良いものを安く」というところにあります。「悪質転売」がメーカーの利益になるならまだしも、転売ヤーと、フリマアプリなどのプラットフォーマーの利益になるだけです。プラットフォーマー側が「悪質転売の取り締まり」に消極的な以上、メーカーや販売店、消費者の対策に限界があります。

 現状、転売ヤーという“強者”が、一般消費者という“弱者”から「搾取(さくしゅ)する」という構図になっており、健全とはいえません。転売ヤーの跋扈(ばっこ)を放置して「市場に任せる」というのは限界に来ており、「高額転売」を阻害する工夫は続けるにしても、「次の手」を考える時期に来ているのかもしれません。