アニメ「鬼滅の刃」の「第四夜 那田蜘蛛山編」が19日に放送され、「サイコロステーキ先輩」がツイッターのトレンド1位になりました。キャラクターの名前もなく、たった40秒程度の登場ながら、相変わらずの人気ぶりです。なぜここまでファンを魅了するのでしょうか。

◇2020年「ネット流行語100」の13位

 「サイコロステーキ先輩」は、主人公・竈門炭治郎と同じ鬼殺隊の一人です。キャラクター名がないため、ファンがつけた俗称です。

 「サイコロステーキ先輩」は、炭治郎が最強の鬼「十二鬼月」の一人・累と戦うシーンで登場(原作マンガでは第36話)。炭治郎と累の口論時に現れて、いきなり「こんなガキの鬼なら俺でも殺(や)れるぜ」と言い、さらに炭治郎に「お前はひっこんでろ」「俺は安全に出世したいんだよ」と先輩風を吹かせて毒づきます。そして炭治郎の制止を振り切って、累を攻撃しようとしますが、鋼の糸でバラバラにされてしまいます。

 その肉体が四散する様子を「サイコロステーキ」に見立て、「サイコロステーキ先輩」という名前が生まれるわけです。

 実は「サイコロステーキ先輩」は、かつての放送でもツイッターのトレンド1位に輝いています。2020年の「ネット流行語100」で何と13位にランクイン(水柱の冨岡義勇=28位=より上!)。今でもネットで「さいころ」と検索をすると、予測変換の候補の一つに「サイコロステーキ先輩」と出てきます。

 本日の放送前から言及する人もいて、期待の高さがうかがえましたが、何とアニメ放送時の登場直前からトレンド入りする人気ぶり。もちろん放送された瞬間、ツイート数が爆発的に増えて1位になりました。NHK大河ドラマ「青天を衝け」も抜き去ってしまいました。

サイコロステーキ先輩がトレンドの1位に
サイコロステーキ先輩がトレンドの1位に

 それにしても、キャラ名もない「サイコロステーキ先輩」が、ここまで注目を集めるのでしょうか。そもそも、主人公や重要キャラに対して「上から目線」の発言をして、即やられるキャラというのは、マンガやアニメの「定番」です。

 「定番のやられ役」として真っ先に浮かぶのは、「北斗の拳」の雑魚キャラたちでしょうか。世紀末の人々を虐げては、主人公・ケンシロウらに一撃で葬られます。

 「ONE PIECE」も第1話で、赤髪のシャンクスに絡んでくる山賊(名前はありますが)がいて、それゆえにシャンクスの器量と強さが際立ちます。「ドラゴンボール」でも、天下一武道会で悟空やクリリンを格下扱いするものの一瞬で負けるキャラがいて、修行の成果を読者にアピールするシーンがあります。

 この手のキャラは、バトルものなら、形の違いはあれどどの作品にもいるでしょう。主人公や敵の強さを強調する「踏み台」として、不可欠のチョイ役です。

 その中で「サイコロステーキ先輩」が人気になったのは、一言でいえば、作品の色に対して、独特の「違和感」を抱かせるからではないでしょうか。

◇異質な存在 でも絶妙のアクセントに

 まず風呂敷を広げたまま終わらない作品もある中で、「鬼滅の刃」は、設定が練り込まれた作品です。ラスボスも初期に示されて、物語の終わり方もしっかりまとまり、序盤の伏線も回収されます。

 そして鬼殺隊のメンバーは「滅私奉公」的な要素が強く、名前も明かされずに倒される者もいますが、勇敢な者ばかりです。普段は臆病な善逸のような例外もいますが……。

 ところが、戦いの最中に「出世がしたい」と口走る「サイコロステーキ先輩」は、明らかに空気が読めておらず異質です。もちろん、鬼殺隊といえども組織ですから、変な人が一定数いても仕方ない……という解釈もできます。とはいえ初対面の炭治郎に、わざわざ出世欲をアピールするのが不思議です。

 そして、あの厳しい「最終選考」を生き残ったはずなのに、「サイコロステーキ先輩」が敵の強さを測れていないのも「なぜ」の一つです。仲間が次々と倒される中で生き残れるなら洞察力もあるでしょうし、相手の強さも分かるはずなのに……。

 また出世願望があり、生き残りに重きを置くなら、もっと慎重な戦い方をしても良さそうです。それなのに、背中から襲うわりには自分の存在感を誇示して、不用意に突っ込んでいくのも「なぜ」です。

 ついで言えば、チョイ役なのにそれなりにイケメンだったりもします。複数の要因が重なり、浮いているのが「サイコロステーキ先輩」というわけです。

 「違和感」は、「隙(すき)」とも「ギャップ」とも言えます。ギャップが際立つほど触れたくなるのが読者・視聴者です。もちろん、サイコロステーキ先輩の存在意義は「鬼の強さの強調」にあり、その役割は果たしています。本来は目立たない方がベターなのでしょうが、出世願望と上から目線のパワーワード的なせりふがあるため、見事なイジられキャラになった形です。

 そして「サイコロステーキ」と「先輩」というワードの組み合わせも絶妙で、それを拡散できるSNSの存在も大きかったと言えます。創作も見かけますし、さぞイジリがいがあるのでしょう。

 「サイコロステーキ先輩」は、ファンからかなり愛される存在になり、その違和感ゆえに絶妙のアクセントになっているのも確か。何とも面白い現象ですね。