【ウマ娘から入る競馬の話】 キングヘイローは真の“お嬢様”

ゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」に登場するキングヘイロー=筆者がキャプチャー

 約2カ月で500万ダウンロードの人気スマホゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」。その魅力の一つにキャラクター(ウマ娘)の元になった競走馬(サラブレッド)の存在があります。そこで競馬をよく知らない人のために、プライドの高い“お嬢様”として描かれるキングヘイローについて紹介しましょう。

◇プライドが高い妥当な理由

 キングヘイローですが、アニメ(1期)では主人公・スペシャルウィークの引き立て役のようで、ゲームでも「星ひとつ」と目立ちません。ストーリーでも、プライドに比べて実力が足りず空回り……という感じでしょうか。作品のPVもありますが、競馬を知らない人は「どうしてそんなに高飛車なの?」と思う人もいるかもしれません。

 ところが競走馬のキングヘイローの血統背景を考えると、プライドがあって妥当です。父は世界最高峰のレース「凱旋門賞」で史上最強クラスの勝ち方をしたダンシングブレーヴで、母は、米のG1を7勝したグッバイヘイロー。名馬から名馬が生まれるとは限らないのですが、一方で競馬は血統が非常に重視されます。そんな中で、キングヘイローは両親がスターの中のスターで、後で触れる通り実力を兼ね備えていました。

 ついでに言えば種牡馬としても優秀で、二冠牝馬カワカミプリンセス、G1レースを2勝したローレルゲレイロを送り出しています。ちなみに「ウマ娘」に出るようなスターホースでも、種牡馬として成功することはハードルが高いのです。

◇G1勝利時に調教師が涙

 競走馬のキングヘイローは、すぐ重賞を勝ち、スペシャルウィークやセイウンスカイと並んで同世代の「3強」と言われました。血統の良さゆえに競馬ファンからの期待もかなり大きかったのですが、大レースではあと一歩のところが多かったのです。馬の気性が激しかったこと、そのためレースで内枠を苦手にしていたことが、調教師や騎手から明かされています。

 G1奪取を目指してレースに出るものの、G1で10連敗。ダートのG1(フェブラリーS、1600メートル)にも挑戦し、一部で批判が集まるほどでしたが、11回目の挑戦となる高松宮記念(芝1200メートル)でついに待望の勝利をつかみました。

 当時のスポーツ紙には、勝利後に調教師が涙したことが記事になっています。つまり調教師にも「キングヘイローにG1を勝たせないと……」というプレッシャーが相当かかっていたのですね。また競馬ファンの心境も似たようなもので、「G1をやっと取ってくれた」という不思議な安堵感がありました。

◇ゲームでは万能型 

 競走馬のキングヘイローは、1200~3000メートルの多彩なレースを走り、その気性ゆえに大敗もあるものの、好走もしました。そのためゲーム内では短距離から長距離のレースに挑戦する必要があり、上級者向けのキャラクターになります。1200メートルのG1馬が、3000メートルの大レース(菊花賞)に出走して5着と好走しているのは、なかなかユニークと言えます。

 そんな実績を配慮してか、「ウマ娘」のキングヘイローの距離適性(Sが最高、A~GでGが最低)ですが、G1を取った短距離はA、マイルと中距離もB、長距離でもCと比較的万能型になっています。そして「ウマ娘」では距離適性をアップさせることもできますから、スペシャルウィークやセイウンスカイに挑戦し、現実では果たせなかった三冠を狙うことだってできます。

 他の競馬ゲームでは、実績を元にゲーム中の距離適性を設定するため、それをカバーして勝つのはかなり大変なのです。しかしウマ娘はそれを打ち破ることが比較的容易といえますし、ポイントでもあります。

 アニメ(1期)でも、主人公のスペシャルウィーク、ライバルとして描かれるエルコンドルパサー、皐月賞や菊花賞を勝ったセイウンスカイは見せ場があるものの、キングヘイローは「3強」なのにあまり目立ちません(当然ですが)。ゲームではそのうっぷんが晴らせますし、多くのレースに挑めるという意味では、やりがいのあるキャラクターでもあります。

 競走馬のキングヘイローは、種牡馬として北海道新冠町の優駿スタリオンステーションにいましたが、2019年に老衰のため死んでいます。4月28日はキングヘイローの誕生日で、ゲーム中ではその日に特別なボイスも聞けるそうです。そしてキングヘイローの声を担当する声優の佐伯伊織さんが見事なイラストをツイッターでアップしていますね。

 実際の競走馬のことがいろいろ分かると、「ウマ娘」を遊ぶにも力が入るでしょう。そして競馬の魅力に取りつかれるかもしれませんね。