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アニメや映画の「早送り視聴」 する人は多い?少ない? データで見ると…

河村鳴紘サブカル専門ライター
(提供:akaricream/イメージマート)

 「ネットフリックス」や「アマゾン・プライムビデオ」などでアニメやドラマ、映画といった映像作品を再生するときに早送り機能で見る「早送り視聴」、せりふなどのないシーンを飛ばしながら見る「飛ばし見」について考察する記事が先日配信されました。するとヤフートピックスに採用されるなどして、さまざまな意見が飛び交いました。

・「映画を早送りで観る人たち」の出現が示す、恐ろしい未来(現代ビジネス)

・“飛ばし見”や“高速再生”が増えたのは、コンテンツが増え過ぎたからなのか(ITmedia)

 作品を大切にしてほしい作り手(クリエーター)の立場で語ると、「早送り視聴」や「飛ばし見」には当然、否定的になります。一方で、消費者サイドからすれば「視聴者の自由」になるでしょう。立場が違うのですから、どちらが正しいという結論は難しいでしょう。

◇標準スピードで視聴する率は7割

 そして、そもそも論になるのですが「早送り視聴」をする人の割合は、実際どのくらいなのでしょうか。そこでヤフーの「みんなの意見」を活用して尋ねてみました。実施期間は4月6日~12日で、投票数は3663でした(ご協力いただいた皆様、ありがとうございました)。

映画やドラマ、アニメなどの動画コンテンツを、高速で再生する人が増えているといいます。高速再生でイッキ見する人、標準速度のまま作品を楽しむ人などさまざまですが、普段あなたは何倍速で視聴していますか?

0.5倍速~0.8倍速 1.6%(57票)

1.0倍(標準)72.6%(2660票)

1.2倍速~1.4倍速 11.2%(410票)

1.5倍速~1.8倍速 7.4%(272票)

2.0倍速~ 7.2%(264票)

<みんなの意見>映画やアニメ、何倍速で視聴している?

 実際は状況や作品に応じて、いろいろな倍速で見ているでしょうが、普段は「何倍速で見ているか」を尋ねました。すると7割以上が標準で見ていると答えました。ネットのイメージほど「早送り視聴」を活用していないように見えます。

 ですが逆の考え方もできます。一方で「早送り視聴」をする人は計25.8%……つまり4人に1人は、「早送り視聴」で見ると答えたわけです。

◇「早送り視聴」 若い人ほど傾向強く

 もう一つ、興味深い調査があります。調査会社のクロス・マーケティング(東京都新宿区)が3月10日、20歳~69歳の男女各550人(計1100人)を対象に実施した「動画の倍速視聴に関する調査(2021年)」です。

 調査によると、「早送り視聴」をした経験のある人は34.4%で、若いほどその傾向は強く、20歳代では54.5%でした。もう少し詳細なデータもありまして、視聴の頻度とそれぞれの割合は、以下の通りとなります。

よく倍速で視聴している 8.9%

ときどき倍速で視聴している 14.1%

倍速で視聴したことはあるが、今はあまり倍速では視聴していない 11.4%

倍速で視聴したことはない(普通の速度で視聴している) 40.6%

動画コンテンツは見ない 25.0%

動画の倍速視聴に関する調査(2021年)

 全体の数から「動画コンテンツは見ない」の数を除外し、「今はあまり倍速では視聴していない」「倍速で視聴したことはない」の数を「普通の速度で視聴している」とまとめて計算すると、その割合は69.3%になります。「みんなの意見」で「標準で視聴する」と答えた72.6%と似た数字になります。

 なお「早送り視聴」をする理由ですが、「視聴の自由度が上がる」「効率」でした。欠点も「内容がよく理解できない」「動画の世界観が損なわれる」となっています。予想通りの答えで、指摘されるまでもなく、欠点も理解してあえてやっているのですね。

 「みんなの意見」でも、「早送り視聴」をする人で多かったのは、1.2倍速~1.4倍速の「チョイ速」でした。「速すぎると内容が理解できないけれど、少しでも時間を効率的に使いたい」という心の揺れがデータからも見えてきますね。

◇話題を追う義務感?

 現代ビジネスやITmediaの記事でも指摘している通り、作品の数が飛躍的に増え、消費者が追い切れない状況にあることに異論のある人はいないでしょう。

 サブスクによる作品の充実、「早送り視聴」のシステムは、利用者がうまくコントロールすれば、これほど便利なものはありません。話題についていくために「早送り視聴」をするのも、それぞれの事情、考え方もあるでしょう。

 ともあれ、追いかけるものが多いほど、一つ一つを吟味する余裕がなくなります。普通であれば、世間の話題のすべてについていく必要はないはずです。それでも「『早送り視聴』をしても話題の作品は見て、世間についていかなければ!」と思うこと自体、義務感にかられてのではないでしょうか。

 ただ、話題作や名作を徹底チェックすることも大切かもしれませんが、それ以外の作品にもユニークな着眼点、好みの演出もあったりするわけです。また名作を理解するには、それ以外の作品を見ないと比較しづらいでしょうし、その人の「引き出し」になると思うのです。オタクは、多くの時間を費やし、時には「駄作」を見て、独自の価値観や審美眼を養った面もあります。

 いずれにしても「早送り視聴」をする人は多数派ではないものの一定数いて、若い人ほどその傾向が強いことは確かなようです。そして効率重視の流れは、SNSの時代が続く限り、今後も強まる気がするのです。義務感ではなく、楽しく見ているなら良いのですが……。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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