ガンダムの売上が頭打ち? 疑問視されてもNetflixで実写化する背景

「機動戦士ガンダム公式Web」

 米のネット大手配信Netflix(ネットフリックス)で「機動戦士ガンダム」シリーズの実写映像化のニュースが話題になっています。他のアニメでもそうですが、アニメの実写化に懐疑的な見方をする意見がネットで多く出るのに、なぜ企業は実写化に挑むのかを考えてみましょう。

【参考】実写映画「機動戦士ガンダム」シリーズの監督は『キングコング:髑髏島の巨神』のジョーダン・ヴォート=ロバーツに決定!(GUNDAM.INFO)

◇年間約800億円のビッグビジネスも…

 実は2018年、バンダイナムコグループのサンライズと、映画制作会社のレジェンダリー・ピクチャーズが「機動戦士ガンダム」シリーズの実写化の共同制作することが発表されています。ところが、ガンダムの実写化自体に反応している人もいて、ある意味2年前のネタで盛り上がっているわけです。ビッグなニュースでも案外知られていない、もしくは忘れられているのです。

 続報ですが大半の内容は未発表ですし、実写の賛否を判断するのも尚早といえます。ですが好意的に受け止めるファンが大勢を占めているとは言い難い状況です。なぜ反発を受けるのに実写化を進めるのでしょうか。その背景も考えておくと良いのではないでしょうか。

 理解するポイントは、ファン目線とビジネス視点という、対極にある二つでガラリと変わることです。

 ファン目線では、従来の1979年から続くアニメ路線を堅持してほしいのが本音でしょうか。アニメとは表現手法が異なる実写に抵抗があるでしょう。作品イメージを壊さないためにも、人気・実力派の声優を起用してほしいはずです。

 しかしビジネス目線で見ると、同じパターンでは、新規ファンの取り込みは難しくなります。ガンダムクラスのビッグ・コンテンツになれば、新規ファン層は増やしたいのです。そのためには消費者との接点を増やす必要があります。ドラマを見ない人がいるように、アニメも避ける人もいるわけですが、後者にガンダムの魅力を知ってもらうには、実写にするとか、アニメとは違う方法でアプローチするしかありません。ガンダム立像はその好例ではないでしょうか。「百聞は一見にしかず」でガンダムを知らない子でも「すっげー」となりますよね。

 バンダイナムコグループは、IP(知的財産)や商品の部門別の年間売上高を発表していますが、ガンダムの場合、直近では約781億円になります。すごい金額ですが、ここ5年の推移は「786億円→743億円→683億円→793億円→781億円」となります。ファン目線で好意的に捉えれば「安定している」とも言えますが、ビジネス目線で意地悪く解釈すれば「頭打ち」と考えることもできます。

 これは考え方の違いなのですが、経営する側は右肩上がり、成長を求めます。バンダイナムコグループのドラゴンボールのビジネスは5年前に約349億円だったのに今や1300億円を超えていますし(ちなみにワンピースは約349億円、仮面ライダーは約312億円)。増収増益を目指すのは株式会社の宿命で、ガンダムも商業展開をする以上は、この呪縛を避けることはできません。実際に同社も「世界に向けたガンダムの認知訴求の推進」を明言しています。

 もちろん、既存ファンに向けたビジネスも大切でして、そこを抑えた上での新規展開はビジネスの正攻法です。5月7日にアニメ映画「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」が公開されるように、既存ファンの要望に応えるコンテンツは用意しているのです。

 既存ファンも新規ファンのどちらも大切なのです。熱心なファンでも月日が経てば、さまざまな事情によりガンダムを“卒業”したり、一時的に距離を置いたりするわけで、その流れを全て阻止するのは不可能です。新規ファン層の取り込みは、どのコンテンツでも永遠のテーマであり、“手つかず”の分野(実写化)は挑戦するべき「未踏の大地」です。

◇ガンダムシリーズに意欲作多く

 実写化の失敗例がSNS受けすることもあり、何かと強調されますが、従来の枠組みから外れた新規展開は失敗の可能性が大いにあるのです。その失敗でファンが一気に減りコンテンツが死ぬ(売上高を大きく落とす)ならともかく、ガンダムは世界観がしっかり構築されており、その心配はないでしょう。実写化によるファン離れの心配を気にするより、斬新なコンテンツを生み出すことが重要です。そして一定の成功を収めれば、新規層が増えるのですから。

 新しいファンは、既存のガンダムコンテンツに手を伸ばしますから収益は増え、作り手を潤します。また古参ファンからすれば新しい「後輩」ができ、同じ趣味趣向を語る「同志」も増えます。ファンの数が増えると、ガンダムのブランド力がアップし、コンテンツの寿命も延びます。既存ファンにも利点が多いのです。

 そして今回の実写のポイントは、世界の会員数が2億人超を誇るネットフリックスが関わることです。しかも世界展開が前提ですから、ガンダムが比較的弱いとされる欧米市場でもファン層の拡大が期待できるでしょう。権利関係、収益配分が気になるところですが、多くの大ヒットコンテンツを展開するバンダイナムコグループだけに、その点に抜かりはないでしょう。

 元々ガンダムは、格闘路線の「機動武闘伝Gガンダム」や、イケメンをそろえて女性層を取り込んだ「新機動戦記ガンダムW」など、挑戦的なコンテンツを次々と出してきました。現在配信中で、「踊る大捜査線」などの本広克行総監督が手掛けた実写作品「ガンダムビルドリアル」もその一つでしょう。

 「Gガンダム」や「ガンダムW」は出たとき、一部のファンから「こんなのガンダムではない!」という批判が相応にあったことを覚えています。そもそもガンダムはどの作品も、人気の裏返しというべきか賛否両論が続出しますが、裏返せばそれ自体がパワーの源といえます。そして意欲的な作品であるほど保守的なファンから批判されるのが常ですし、ファンが支持する新コンテンツだからといって成功は保証されません。失敗かどうかはやってみないと分からないのです。初代ガンダムも視聴率的には振るいませんでしたが、今では名作として支持されています。

 いずれにしても、どのような実写作品になるか、楽しみにしたいと思います。