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<PS5高額転売問題>週販売数と“転売相場”を比較してみた 転売ヤーの情報求めてメルカリに訴訟も

河村鳴紘サブカル専門ライター
発売から4カ月半が経過したソニーの家庭用ゲーム機「プレイステーション5」

 昨年11月12日の発売から4カ月半が経過したソニーの家庭用ゲーム機「プレイステーション5(PS5)」ですが、週の販売台数は以前よりも増えています。特にデジタル・エディションは、「(希望小売価格で)店で売られているのを見た」という報告もあります。そこで発売後からのPS5の週販売数と、同機の買い取り金額(転売相場)を一覧表にしました。

◇2月中旬から週販売数増

 転売ヤーがPS5を売り飛ばすときの「買い取り金額」ですが、年末こそ価格は上昇したものの、基本的にはPS5の販売台数が増えると下落します。唯一の例外は、年明け(1月上旬)で、極端に乱高下しました。理由は大手家電量販店のゲリラ販売でしょう。PS5の買い取りをする店が「PS5の供給が増えたのかも」と判断して、買い取り価格を都度大きく変更したためとみられます。

週販売台数はファミ通のデータで、100の位を四捨五入した概数にしているため、週販売数の合計と累計が一致しません。PS5の買取額は複数の買取店の金額をまとめたものです。=著者作成
週販売台数はファミ通のデータで、100の位を四捨五入した概数にしているため、週販売数の合計と累計が一致しません。PS5の買取額は複数の買取店の金額をまとめたものです。=著者作成

 週の販売数で伸び悩んだ時期は、昨年12月から今年1月で、いずれも2万台に届いていません。しかし2月中旬以降は2万台、今では3万台をキープしています。20万台から30万台の到達は8週間を要しましたが、40万台から50万台の到達は3週間でした。

 1カ月半前(2月11日)に「PS5の転売価格(相場)は2月中にも崩れる可能性がある」という記事を配信させていただきました。理由は、取材をしてPS5の週の出荷数が増えることをつかんだからです。2月下旬以降の週販売台数を見て「なるほど」と思っていただけるはずです。

◇デジタル版が値崩れ

 PS5には、通常版(4万9980円、税抜き)と、デジタル・エディション(3万9980円、税抜き)の2種類があります。比率は概ね5対1で、通常版が多く出回っています。

 そして現在、デジタル・エディションの「買い取り価格」は、3月中旬から下落が顕著で、27日時点で5万円弱といったところでしょうか。家電量販店でも「在庫あり」の状態もあったりして、相場の下降と一致します。転売目的の購入阻止のためにクレジットカードを所持するなどの条件があるにしても、希望小売価格で買える可能性があるところまできました。

 一方、通常版の買い取り価格は、下落幅が緩やかです。ただし抽選の機会も増えていますし、周囲でも「やっと手に入れた」という声が出てきました。

 転売ヤーの心理に立つと「PS5の転売価格は落ちてきたけど、まだ稼げる。ニンテンドースイッチも希望小売価格前後で売れているし、PS5も希望小売価格よりは下がらないだろうから最悪、プラスマイナスゼロで切り抜けられる」と予想しているのかもしれません。しかしそんな保証はありません。

 そして4~6月には中国でPS5が発売予定です。国内で発売されたPS5の一部が中国に流れているとみられていますから「中国でPS5の発売が始まれば、高額転売の横行は終わるだろう」と予想をする関係者もいます。中国市場は急変するので、良い方向にも悪い方向にも不確定要素は少なくありません。そして中国の発売日が突然決まり、買い取り相場が一気に下落する可能性も常につきまといます。

◇転売ヤーの情報開示求める訴訟も

 ゲーム雑誌「ファミ通」を発行するKADOKAWA Game Linkageによると、「PS4」の2014年2月22日~3月30日の国内販売数は約49万台でした。PS5は現時点で50万台を超えています。

 ちなみに探った限り、PS5の出荷数は販売台数(約50万台)より、予想以上に上の数字でした。販売店が転売ヤーのまとめ買いを防ぐためにも、購入希望者の購買履歴を調べる時間が必要とはいえ、販売数と出荷数の「差」が意外に大きいのは気になります。

 なお、大手ゲーム会社の営業経験者に「流通で悪意のある業者が、PS5のような人気商品を“横流し”をして、高値で売りさばいている可能性はある?」と尋ねたところ「あると思う。証拠はないが、限りなく黒に近いグレー」と明かしてくれました。

 1980年代、ゲーム販売店で人気商品と不人気商品を組み合わせて売りつける「抱き合わせ商法」がありました。現在でも、ネットで著作権に抵触する行為がなくなりません。「儲かるのであれば多少の問題は承知でやる」という人がいて、それが厄介なところでもあります。

 そして新商品・人気転売と価格高騰は、PS5だけの話ではなく、さまざまな人が被害を受けています。中には、転売ヤーだけでなく、フリマアプリを運営するメルカリ社に対して訴訟をした経営者もいます。メルカリへの転売ヤーの情報開示請求は敗訴したそうですが、今後の展開次第では転売対策に役立つ判例が出ることもありえるでしょう。また裁判になることで、転売ヤーに対するプレッシャー、抑止効果にも期待したいところです。

転売目的を秘して、「転売禁止条件き売買契約」により転売禁止商品を購入することは、購入者が商品を購入した時点で、詐欺罪(刑法246条第1項)が成立することになります。

・転売という重大な社会問題についてここ数年本気で考えている件について(藤原連太郎)

 このままでは、人気商品が出るたびに、高額転売が続くことになります。転売は法的に問題はなくても、消費者の利益を侵害しています。対策を考え続けて、同時に「希望小売価格を大きく上回る、悪質な転売はスルーする」という地道な努力が効果的です。そして転売に反対する多くの人の声が、転売をビジネスにする人たちへのプレッシャーになるのですから。

 そして個人的には、政治家が高額転売問題に取り組むと、結構な数の有権者の支持を得られるのではないかと思う次第です。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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