アニメ映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」が公開されて約2週間となる19日、同作の公式ツイッターが「今後はぜひ、皆様からのご感想を聞かせてください!」と書き込みました。「ネタバレ解禁」の視点で記事になるとヤフートピックスにも取り上げられました。ですが冷静に考えると公式が結果として「ネタバレ解禁」を“許可(お願い)”するというのも不思議な話です。

◇ネタバレ自重の「ATフィールド」

 なぜ公式ツイッターが「感想を聞きたい」……というより、実質的にネタバレをお願いしているのか……といえば、もちろんネットでシン・エヴァの議論が盛り上がって欲しいからなのは言うまでもありません。

 ネットの世界なので、掲示板やnoteなどでは、公開直後の8日からネタバレに踏み込んだ考察・議論がありました。しかし皆さんが最も目にするであろう、ツイッターでは、全体的にネタバレを自重していました。それゆえに盛り上がりに欠けた面があります。ネタバレ覚悟で議論をして、意外な部分に気付いてもらい、ファンが二度、三度映画館に足を運んでもらってこそ、さらなる興収アップが期待できるからです。

 22日午後7時半からテレビ番組「プロフェッショナル仕事の流儀 庵野秀明SP」が放送されるのも、時期的に偶然のはずがありません。「取材を受ける」=「話題になって欲しい」という構図で、作り手視点で見るとプロモーションの側面があるのは明らかです。

 エヴァは、鑑賞者の解釈の余地が多く、ファンが個人的な見立てを議論してこそ真価が発揮されるコンテンツです。一方でエヴァはファンが多く、彼らは同志である未鑑賞の人への配慮をしました。しかしネタバレ禁止(自重)の空気が、コンテンツの盛り上がりにブレーキをかけていて、そこは皮肉と言えます。

 そもそも他のアニメやドラマ、映画でも、すぐネタバレに踏み込んで語るのが普通です。またメディアも深掘りする記事を出すこともあるのに、エヴァは特別扱いでした。「ATフィールド」を張っているのか?と錯覚するほどです。

◇公式ツイッターという「ロンギヌスの槍」

 この妙な空気について、同作を手掛けたカラーがツイートで的確な指摘をしています。

「ネタバレ禁止令」を敷いていたわけでは決してないのですが、長年待ち望んで頂いていた新作なので結果そういう様相を呈してしまったという……何がネタバレなのかはそれぞれですし

(株)カラー2号機ツイッター

 公開初日から、ストーリーの結末だけを言われるとコンテンツ制作側から困るのはその通りです。ですがツイッターの指摘通り、ネタバレは個人の価値観、立ち位置で大きく変わります。ある人には斬新な見解でも、別の人が見たら「ネタバレだ」と言うのは、ありえる話です。ネタバレを見たくない人は、ネットに触れなければ良いのですが、ネットは既に生活に溶け込むツールだけに、「ネット断ち」はもちろん、「ツイッター断ち」は難しい人が多いのではないでしょうか。

 ただし一方で、ネットを使う以上、「見たくないものも目にする」可能性は、ある程度受け入れるしかないでしょう。情報の発信者に対して、「受信者全員に配慮しろ」と極端な規制・自重を強いるのも……。要はバランスの問題で「人それぞれ」です。あまり極端に突き詰めると、何も言えなくなるわけです。今回、シン・エヴァを鑑賞したユーザーが、自身の感動や思いを書き込んだか?といえば「ノー」でしょう。

 もちろん、シン・エヴァについての内容に踏み込むのは、トラブルの元になりやすいのは確かでした。「ネタバレ禁止」の空気に従ったのは、「触らぬ神にたたりなし」といったところでしょうか。公式もネタバレ気味のPVを配信していますが、それだけでは効果が薄いと判断したのでしょう。

 公式ツイッターの「お願い」は、さながら「ATフィールド」を破壊する「ロンギヌスの槍」といったところでしょうか。そうでなければ、「ATフィールド」の効果はもっと続いたかもしれません。公式のネタバレ解禁を受けても、やはりというか「まだ早いのでは」という意見を見ました。しかし、興収のアップ、盛り上がりを考えると、2週間というのは適度なタイミングなのかもしれません。

 公式の解禁を受けて、さっそくツイッターで大胆かつ斬新な考察も目にするようになりました。掲示板やnoteとは異なり、ツイッターは文字数の制約が厳しいSNSです。そのため一見して流し見しても分かるよう工夫しているのが印象的です。そして、ネタバレのツイートを見て改めて感じたのは、エヴァの魅力の一つは、間違いなくファンが作り出す独自の見解と議論と言えそうです。

 そして、鑑賞した多くの人がネタバレのツイートを自重し、公式が「感想を聞かせて」とお願いする不思議な関係。その一点だけを見ても、エヴァは、オンリーワン的な作品なのではないでしょうか。ネットで「ネタバレ禁止」の空気を作りあげたことも、未来になると「エヴァの伝説」になっているかもしれません。