「鬼滅の刃」の新作アニメはテレビ! 命綱握る収益構造 業界救うか

新作アニメ「遊郭編」が告知された「鬼滅の刃」公式ポータルサイト

 アニメ映画「無限列車編」の興行収入(興収)が史上最高を更新中の「鬼滅の刃」ですが、続編の新作「遊郭編」が、映画ではなく、テレビアニメになることが明らかになりました。

 同作の公式サイトでは「遊郭編」で活躍する「音柱」の宇髄天元のイラストとともに年内の「テレビアニメ化」が告知され、PVも公開。発表直後からネットではファンが大騒ぎし、ツイッターでも「鬼滅の刃」関連のワードが次々とトレンド入りしました。

◇気になる声優や放送時期&期間

 アニメファンの視点で見れば、「遊郭編」を何クール(1クール=3カ月)で放送するかが気になるでしょう。また主人公・竈門炭治郎ら鬼殺隊の前に立ちはだかる「十二鬼月」の妓夫太郎と堕姫ら「上弦の月」の声優も知りたくなりますよね。

 もう一つ言えば、一部で報じられたオリジナルストーリーの有無に気をもんでいる人もいるでしょう。特に熱心なアニメファンは、しびれるような原作マンガの忠実な再現を強く望んでいるでしょう。

 アニメの尺を膨らませるというのは、可能性だけでいえばありえる話ですね。深夜ならいざしらず、全国放送で視聴率が問われるゴールデン帯などでの放送となれば……。「鬼滅の刃」は、再放送でも10%台の高い数字を稼いだだけに、企画案としては上がりそうというのが正直なところです。しかしソニーグループのアニメ会社・アニプレックスとしては、これまで同作を支持したアニメファンの気持ちに敏感であり、他のアニメでも作品を第一にしました。通常考えれば原作通りでしょうし、少なくとも、ビジネスを極端に優先して作品の質を落とすようなことはしないはずです。

◇アニメ事業の収益力高められるか

 ただし作品の質も大切ですが、ビジネス構造は相当に重要でしょう。「無限列車編」の大ヒットを受けて、アニプレックスとしては、収益力のアップのために、いくつかの選択肢がありました。

 ファンの心理では「アニメファンのためにテレビを選んでくれた」と思いたくなりますが、(申し訳ないのですが)そんなことはなく、その上のレベルが求められています。作品の質さえ間違わなければ、注目度は一般層にも届いており、ヒットは約束されているからです。

 金がすべてではありませんが、絶対に軽んじるわけにはいきません。アニメのビジネスは、他のエンタメに比べて収益に弱さがあるのは事実で、それがアニメーターの給料や長時間労働の問題とリンクしています。高収益は、アニメーターら制作陣の懐を潤し、次の作品作りの原資となります。ゲーム業界や出版業界のように、稼げるときにキッチリ稼がないと、アニメ業界の未来はありません。

 「鬼滅の刃」のアニメ映画の興行収入ですが、仮に400億円を稼いだとしても、50%は映画館が取ります。ざっくり言えば、残り50%(200億円)を配給会社と製作委員会で分ける形になります。製作委員会に複数の会社がいて、仮に1社の取り分が10%なら40億円、20%なら80億円です。

 「40億円でも80億円でもすごい!」というのは、消費者目線の話で、ビジネス目線になると物足りません。ゲームやマンガで、社会現象を起こすヒットを飛ばせば、入る額のケタが増えるからです。

 アニプレックスは、ソニー・ミュージック(音楽事業)の傘下にあります。同じソニーグループのゲーム事業(SIE)ですが、年間の部門別売上高は2兆円近くあります。世界で1000万本売れるソフト(価格5000円と仮定)が出ると、それだけで500億円を稼ぎます。採算分岐点を超えてしまえば原材料費はなきに等しく、ヒットしたゲームは利益の塊で「お札を刷るようなもの」と言われるゆえんです。アニプレックスは「FGO」などのスマホゲームを手掛けていますが、裏返せばアニメの事業単体に限界があると認識しているわけです。

 アニメの世界市場規模ですが、テレビアニメや映画、そして関連事業を全部合わせて約2兆円です。対するゲームの世界市場規模は、スマホゲームとPC用ソフト、家庭用ゲーム機(ソフト込み)で約17兆円となります。

 要するに、「鬼滅の刃」の大ヒットは、アニメ業界にとって高収益のビジネスモデルを模索する好機です。従来通りに漫然としていては、アニメの未来が閉ざされかねないのです。

◇収益増のカギはネット配信 ゲームも

 実は、昨年末にアニメの関係者らに「鬼滅の刃の新作(遊郭編)はどちらになると予想しますか」と聞くと、映画派が多かったのは確かですが、一方で「テレビアニメで勝負するのでは」という予想もありました。「今の『鬼滅の刃』ならネット配信でも、相当の高値で売れるはず。次を映画にしても同じだけヒットする保証はないから、テレビで勝負するのもあり」と指摘していました。

 ソニーは、アニメ・映像配信サービスの「クランチロール」を傘下にしましたから、会員獲得の意味でも利用価値はあるはずです。また「鬼滅の刃」はスマホゲーム、家庭用ゲーム機でも展開予定です。そう考えると、テレビアニメで多くのファンの注目を集めつつ、アニメのネット配信やゲームで高収益を上げていく……という狙いなのでしょう。

 まだ詳細が不明なため、ビジネスの構造が見えない部分もありますが、「鬼滅の刃」が、高収益のビジネスモデルを作り出して、作り手を潤し、かつファンを喜ばせる、アニメ業界の救世主になってくれることを祈っています。