新型ゲーム機「プレイステーション(PS)5」がフリーマーケット(フリマ)アプリなどで高額転売されている問題で、同商品の発売元のソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)がフリマアプリ「メルカリ」を運営するメルカリ社に高額転売防止の「意見表明」をしてから1カ月以上が経過しました。ゲーム機が最も売れるクリスマス商戦が幕を下ろしましたが、メルカリ社は無言のままです。

◇「無言」が語る方向性

 PS5は9月の予約受付後から、購入希望者が殺到しました。PS5の発売(11月12日)前日から「メルカリ」では、希望小売価格(4万9980円と3万9980円、消費税抜き)の2倍以上で高額転売が続出しました。手元に商品のない段階での出品を規約で禁じているのに取り引きが成立したため、疑問の声が挙がっていました。

 またPS5を100台900万円にした常識では考えられない出品もありましたが、メルカリ社はITmediaの取材に対して「現時点では出品禁止は考えていない」とした上で「権利者からの申し立てがあれば削除を検討する」とコメント。すると「権利者」のSIEが、転売行為の防止について理解と協力を呼び掛ける「意見表明」をしたことが明らかになり、メルカリ社の対応に注目が集まっていました。

【参考】相次ぐPS5の高額出品、100台で900万円も 「出品禁止は考えていない」「権利者からの申し立てがあれば削除も検討」──メルカリに対応方針を聞く(ITmedia)

 SIEに交渉の結果について問い合わせたところ「先方の判断なのでお答えできません」でした。メルカリ社は「個別の協議の詳細については回答を差し控えさせていただいております」と答えるのみです。2社とも同じ答えのようですが、意味するところは全く違います。

 SIEは要するにお願いするだけの立場です。ですがメルカリ社は決定権があるのですが、何度か問い合わせても答えをにごしました。もう少し踏み込むと、SIEとしても交渉の内容はある程度言及できるはずですが避けるところを考えると、メルカリ社から「この件に関しては言わないで」的なお願い、駆け引きなどがあったことも容易に推測できます。

 しかし「無言」がメルカリ社の方向性を語っています。もっともゲームが売れるクリスマス商戦を前に何もしなかった「事実」が示す通り、SIEの意見表明は受け入れないが、それを明言するとゲームファンの強烈な反発が予想されるので沈黙しよう……なのでしょう。違うのであれば、「意見表明」を堂々と拒否し、その理由も明らかにするべきです。

◇「削除を検討」の答えなく…

 当初、メルカリ社がSIEの「意見表明」に対して、協議に応じた段階で何らかの告知をする可能性はあるかも……と見ていました。理由は、PS5の高額転売に対して、アマゾンはマーケットプレイスの高額転売を差し止め、「ヤフオク!」も高額転売に対する注意喚起をしたためです。

【参考】ヤフオク!「PlayStation 5」の出品について

 しかし、12月に入ってもメルカリ社からアナウンスがなく、問い合わせても答えません。そして同月に開催したメルカリ社の有識者会議で、高額転売についてわざわざ議題に挙げて問題点を公開しながら、一方で会社として答えを出さないことも気になりました。

【参考】メルカリ、「マーケットプレイスのあり方に関する有識者会議」 第六回議事概要を公開

 次の公開は「2021年1月下旬」を予定しているそうです。しかしPS5の高額転売の問題は「今」の話なので、PS5の高額転売は続き、商取引は成立するから手数料も入るわけです。そして残念ながら、問題を沈静化させるには「沈黙」も一つの選択で、下手に理由を言うよりも効果的ともいえます。

◇「意見表明」を受け入れるのは難しいか

 メルカリの視点で見れば、フリマアプリはユーザー間の自由な取り引きは重要ですから、取引の自重を呼び掛けるような告知は避けたいのも確かでしょう。

 仮にSIEの「意見表明」を受け入れて告知をすると「先例」を作ることになります。それは、自社商品の高額転売に悩む他企業から同様の「意見表明」が来ることを意味します。新型コロナウイルスのマスクのように命にかかわるものなら仕方ありませんが、そうではないエンタメ商品まで広げて、都度対応するのも大変でしょうから、受け入れるのは難しいのでしょう。

 ただし、PS5の高額転売についてメディアの取材に対して「権利者からの申し立てがあれば削除も検討」と明言したわけですから、相応の対応スピードで答えてほしかったところです。

 繰り返しますが、高額転売は「商取引のモラル的にいいのか」という問題はあり、多くの消費者の反発は買いこそすれ、法的には問題はありません。また高額転売の購入者がいる以上需要があるのも確かで、かつメルカリ社自体が高額転売をしているわけではありません。

 だからといって無関係とはいえません。運営側は高額転売の手数料で利益を得ていますし、高額転売は希望小売価格で買えるはずの消費者の“権利”を侵害しているのも確かです。

 そして販売者に対して価格をしばる「価格拘束」の行為について、メーカーは相当気を付けており、高額転売も指をくわえて見るしかない中で、SIEはリスクを負って「意見表明」をしたわけです。それを後押しをしたのは、PS5購入希望者からの切実な“声”だったのは、言うまでもありません。

 今回の一連の流れが、高額転売に対して一石を投じたのも確かです。しかし問題解決の進展はなく、引き続きくすぶり続けるわけです。そして、人気商品を買い損ねた消費者を悩ませ続けることになりそうです。