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PS5をプレーして知った新型コントローラーの触感 よみがえる16年前のニンテンドーDSの“記憶”

河村鳴紘サブカル専門ライター
PS5で最初から収録されているゲーム「アストロズ・プレイルーム」=SIE提供

 ソニーの新型ゲーム機「プレイステーション(PS)5」がいよいよ11月12日に発売されます。そこで実際にPS5を起動し、専用ゲーム「ASTRO's PLAYROOM(アストロズ・プレイルーム)」をプレーしてみました。新型コントローラー「DualSense(デュアルセンス)」の多彩な触感表現に驚くと同時に、16年前に発売された任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」に初めて触れたときのことを思い出しました。

◇繊細かつ多彩なコントローラーの触感

 PS5は、8K対応の映像、コントローラーの振動で多彩な触感表現を再現し、ロード(ゲームの読み込み時間)を飛躍的に短縮した新型ゲーム機です。現行機のPS4用ソフトもほぼ遊べます。通常版は4万9980円、ディスクドライブなしの「デジタル・エディション」3万9980円です。現状では予約できないほどの人気ですが、今年度末(2021年3月)までに760万台以上を世界に出荷する予定です。なお「760万台」は現行機のPS4の初年度(2013年度)出荷数と同じです。

 PS5に最初から収録されている「アストロズ・プレイルーム」の名前を聞くと、PS4に最初から収録され、PS4のコントローラーを使って遊べるお手軽ゲーム「プレイルーム」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。PS5用の「アストロズ・プレイルーム」も同じタイプの内容と思っていたら、アイテム探しの要素もあるアクションゲームで本格的でした。

アストロズ・プレイルーム=SIE提供
アストロズ・プレイルーム=SIE提供

 同作のステージ「COOLINGリゾート」では、砂浜や氷、雪を歩いたときの違いがコントローラーを通して手に伝わります。左手の指でトリガーボタン(L2ボタン)を「グッ」と押し込んで「パッ」と放すときの感覚は反発力があり、病みつきになりそうです。体験前は「コントローラーの振動パターンが増えた」と想像したのですが、ずいぶん違います。より繊細で表現が細やかです。そして何よりゲームとして楽しく、探し物をしてステージの隅々まで歩き回ってしまいます。

 ちなみに遊ぶ前に「ヘッドフォンでプレーしない方がいい」と言われました。理由はデュアルセンスからも音が出るからです。コントローラー一つでここまで多彩な感じ方ができるのだ……と感心しました。そしてデュアルセンスを触っていると、かつて大ヒットした任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」(2004年発売)に初めて触れたときの“記憶”がよみがえりました。

◇触らないと魅力が分からない

 DSが出る前のゲーム機は、極論すると「ボタンを押す」ことが主な操作でした(それでも相当楽しいのですが)。そしてDSのタッチペンや指を使って「なぞる」「つつく」という操作は、違和感を感じつつも、ユニークで病みつきになるものでした。東京・浅草橋で開かれた体験会で遊んだ「メトロイド」の試作版に熱中したことを覚えています。この時「このタッチペンなら、誰もが狙ったところに弾が撃てて、気軽に楽しめるかも」などと感じ、イベントに参加したメディアも好感触のようでした。

 ちなみに、ネットで積極的に発言するファンが抱いたDSの前評判はイマイチでした。高機能のゲーム機は、イメージがつかみやすいため総じて受けが良いのですが、DSやWiiのように面白さが未知の想像しづらいタイプの新機軸ゲーム機は低い評価になる傾向にあります。それは仕方のないところですが、商品のイメージは大切なのでゲーム会社にとっては悩ましいところでしょう。

アストロズ・プレイルーム=SIE提供
アストロズ・プレイルーム=SIE提供

 話を元に戻します。PS5の売りの一つデュアルセンスも、体験して初めて分かるタイプの面白さです。DSのタッチパネルとPS5のデュアルセンスは、全く異なるものですが「触らないと魅力が分からない」という意味ではそっくりなのです。そしてこの手のツールの魅力を伝えるには、体験イベントが最適なのですが、新型コロナウイルスのことを考えると難しいわけでして、悩ましいところです。ソニー・インタラクティブエンタテインメントからすると、ゲームショウのオンライン開催(体験イベントなし)などは、「コロナなので仕方ない」とはいえ痛かったのではないでしょうか。

◇カギは発売後のユーザーの声

 PS5の売りは、美しいゲーム画面や、ロードの速さですが、それと並ぶ魅力の一つが伝わりづらいわけです。とはいえデュアルセンスの体験抜きでもこれだけ人気を集めるのですから、ある意味良かったとも言えます。

 そしてデュアルセンスの魅力を伝えるためにカギを握るのは、12日にPS5を手に入れたユーザーのネットの声でしょうか。この手の商品の魅力は、メディアの記事や映像、公式(ソニー)の情報発信だけでは限界があります。伝えきれないのもありますし、「PS5をヨイショしているだけでは」という疑念はゼロになりません。金を出して商品を買い、遠慮なく賛否を書き込むユーザーの“中立的”な声に勝るものはないわけです。

 PS5の購入者が最初に遊ぶであろう「アストロズ・プレイルーム」で、デュアルセンスの触感をどう判断するか楽しみです。そして約10日後に下る“審判”にドキドキしているのは、ユーザーではなく、PS5の開発陣なのかもしれません。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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