PS5のボイスチャット録音・通報機能にPS4ユーザー“監視”と不満 「嫌がらせ対策」が誤解
家庭用ゲーム機「プレイステーション4(PS4)」で14日にシステムバージョンアップがあり、それに連動して新型ゲーム機「プレイステーション5(PS5)」のボイスチャット録音と、そのデータをソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)に送信・通報できる機能が、一部のユーザーから「監視だ」などと不満のターゲットになっています。しかし調べてみると誤解のようです。
発端は、PS4のシステムバージョンアップ(8.00)です。バージョンアップ後、以下のような文章が表示されました。
ボイスチャットの録音はPS5の機能で、PS4にはありません。しかし、PS5・PS4間でもボイスチャットができるため、PS4もPS5に対応するためシステムを変える必要があり、だから少しややこしい話になります。なお「PlayStationセーフティー」は、トラブルの受付窓口のことです。
PS4で上記のメッセージを見た一部の利用者は、ボイスチャットが勝手に録音されて、SIEに自動的に送られると思っている節があります。しかし、ボイスチャットの音声データは、自動的にSIEに送られるわけではなく、ボイスチャットでトラブルがあったときにユーザーが任意で送信できるものです。むしろ「悪意あるユーザーからの嫌がらせ対策」で、普通に使うユーザーには関係のない話です。
録音機能搭載の背景には、ボイスチャットを巡り、ユーザー間のトラブルが発生していることがあります。ボイスチャットを使うと、どうしても一部の心無い利用者から、ハラスメント(嫌がらせ)や罵詈雑言などがあります。当然、言われた人はメーカーに苦情を訴えます。ところが、録音データがないと当事者間で「言った」「言わない」の世界になるわけです。ですが今回の録音機能があれば、ボイスチャットの発言で問題が発生したときに、証拠が押さえられるわけです。自動車の「あおり運転」に対抗するドライブレコーダーのようなものでしょうか。
逆に言えば、今後はボイスチャットで相手へ著しい配慮を欠いた発言をしていると、何らかのペナルティーを受ける可能性があると言えますし、今までは、悪意のある人が「証拠がない」と言い張れば逃げきれていた……とも言えます。1人でプレーするゲームであれば何を言おうが自由ですが、オンラインであれば相手がいる以上、一定の配慮は当然で、実社会と変わりません。
今回の発表は、ボイスチャットのトラブル封じという施策のためですが、それが裏目に出た形です。相手の同意を取らない録音は、法的にもトラブルになりやすい面がありますから、ユーザー全員に同意を求める必要が出るわけですが、その言い方も誤解のタネになったように見受けられます。
SIEの立場としては「録音の同意」を取りたいわけで、この手の文章はリーガル(法)が関連するでしょうから、抽象的な物言いにならざるを得ませんから仕方ない面もあります。ただ、結果として説明不足にはなります。そのため、受け取る(ユーザー)側に想像の余地を残してしまいました。また同時期にシステムトラブルも起きたため、余計に怒りの矛先が向いたことも想像がつきます。
PS5のボイスチャットの録音機能ですが、送付はユーザーの任意ですから、仲間内の何気ないジョーク、下ネタがSIEに聞かれるわけではありません。ボイスチャットの録音機能がトラブル抑止になると良いのですが。逆に、第三者に悪意の言葉を投げかけて、“憂さ晴らし”をしていたような人には脅威となるでしょう。
ユーザーの不安の声を受けて、プレイステーションブログでは、次の一文が追加されていました。
録音機能は、PS5のユーザーに利点はあっても、PS4のユーザーに直接的な利点がない話ということも、反発を招いたのかもしれません。ただし間接的には、抑止効果でボイスチャットの問題発言が減ることは予想できますから、決してメリットがゼロではないと思うのですよね。
ネットでのコミュニケーションは、テキスト(文章)からボイスチャット(音声)に移行する流れになっています。特に若い世代ではその流れが強いですね。そしてボイスチャットで、相手への配慮を欠いた発言は、PS4に限ったことではありません。「他山の石」としたいところです。