ソニーのゲーム事業「巣ごもり効果」で“地獄”から“天国”へ PS5抜きでも

ソニー本社=著者撮影

 ソニーの2020年4~6月期(2020年度第1四半期)連結決算が発表されました。ゲーム事業は、新型コロナウイルスの感染拡大で消費者が自宅で過ごす「巣ごもり需要」もあって、ゲームソフトやサービスがヒットし、業績は絶好調でした。今年の年末商戦期に売り出す予定の新型ゲーム機「プレイステーション5」が出るまでは苦戦必至で、2020年3月期の決算まではその流れにありましたが、巣ごもり需要が流れを変えてしまい、その“危機”を乗り切る見通しとなりました。

◇ソフト 年末商戦並みの売れ行き

 ソニー全体の売上高は、コロナの逆境にもかかわらず、前年同期比2.2%増の1兆9689億円、本業のもうけを示す営業利益は同1.1%減の2284億円でした。踏ん張りの原動力となったゲーム事業(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)は、部門別売上高は前年同期から1486億増の6061億円、営業利益が同じく前年同期から502億円増の1240億円で、いずれも数字を大きく伸ばしました。巣ごもり需要による業績アップはある程度織り込み済みだったでしょうが、“地獄”から“天国”へというほどの変わりようです。

 ソニーが真っ先に挙げた絶好調の理由は「ゲームソフトウェアの大幅な増収」でした。2020年4~6月期のPS4用ソフトの全出荷数は9100万本で、最大商戦期である「年末商戦」並みでした。前年同期(2019年4~6月期)は4980万本はもちろん、昨年末商戦(2019年10~12月)の年末商戦の8330万本も超えました。

 ちなみに、自社のゲームソフトの売れ行きも絶好調です。2020年4~6月期の自社ソフトの出荷数は1850万本で、こちらも昨年末商戦(2019年10~12月)の1630万本を上回りました。ゲームビジネスの第1四半期(4~6月)は、本来ソフトが売れない時期なのです。そこが突然、最大商戦期と同等のレベルで売れたわけです。同社の人気ゲーム「The Last of Us Part 2」の最新出荷数は開示されませんでしたが、同作も業績をけん引したのは確実です。

◇ネットワークのビジネス 抜群の安定感

 好調の理由の二番目に挙げられているのが、サブスクリプション(定額利用)のネットワークサービス「プレイステーションプラス」の会員獲得増加です。累計の会員数は4490万人でした。2020年3月期の決算発表からわずか3カ月で340万人増となります。

 ゲーム事業におけるネットワークの売り上げですが、昨年度(1年間)で3373億円(四半期ごとに800億円台で推移)、2020年4~6月期は933億円を稼いでいます。ゲームソフトは「売れた」「売れない」の外れがある上、瞬発的に売り上げをたてるため、四半期決算の数字を作る上では、困る側面もあります。ところが、ネットワークの売り上げは、その不安定要因をカバーしているので、ビジネス的な利点が大きいと言えます。

【参考】ゲームビジネスが四半期決算に不向きという話

 なお、マイナス要因に「プレイステーション4(ゲーム機)の減収」とあります。2020年4~6月期の出荷数は190万台で、前年同期(2019年4~6月期)は320万台でした。陰りはその通りでしょう。PS5が出るため、PS4の買い控えはおきるわけですが、ソフトやネットワークの好調がカバーしています。

◇PS5の価格と目標計画数 決まっている

 新型コロナの猛威は続いており、まだ巣ごもり需要は続くでしょう。今回の決算を見る限り、次の2020年7~9月期(2020年度第2四半期)も好調が続きそうです。現在、元寇を舞台にした侍の活躍を描いたゲーム「Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)」がヒットしていますが、同作は7~9月期に計上される数字です。そこに「プレイステーションプラス」の数字が乗り、さらなる会員数の増加も望めそうです。

 そして2020年10~12月期(2020年度第3四半期)になると、計画通りならPS5が売り出されるわけです。今年5月の段階では、コロナを理由に2020年度(2020年4月~2021年3月)の通期予想の公表を見送っていましたが、今回発表されました。ゲーム事業は、売上高は2兆5000億円、営業利益は2400億円を予想しています。

 売上高は前年度から5000億円以上伸びるのに対して、営業利益が伸びない理由は、「PS5導入にかかる販売費及び一般管理費の増加」と「ハードウェアの売上原価率上昇」となっています。シンプルに言うと「PS5の利益が薄い」ということです。さらに言えば、既にPS5の価格と目標計画数が、内々では決まっているわけですね。当然ではありますが……。

 いずれにしても、PS5の発売開始までの売上高と利益の見通しも立ったため、「魔の今年度(2020年度)」は乗り切れるでしょう。むしろ、PS5抜きでも、それなりの数字を作れてしまえそう……と思えるほどです。今後のポイントは、巣ごもり効果の需要がどこまで続くかといえそうです。

ゲームを愛するものの、ゲームには愛されないヘタレなゲーマー。ゲーム好きが高じて、記者として兜倶楽部にも出入りし、決算やメーカーの各発表会、PS3の米国発表会、中古ゲーム訴訟、残虐ゲーム問題など約20年間ゲーム業界を中心に取材をする。合わせてアニメやマンガにも手を伸ばし、作品のモデルになった場所をファンが訪れる“聖地巡礼”現象も黎明期から現地に足を運ぶなどしている。マンガ大賞の選考員も担当しており、好きなジャンルはラブコメ、歴史もの。

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