「ベースボール」「ファミスタ」「パワプロ」 野球ゲーム進化の歴史

「eBASEBALLパワフルプロ野球2020」

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、無観客試合という異例の対応を取って3カ月遅れて開幕した「プロ野球」。野球好きであれば、そして野球ゲームも楽しんでいるのではないでしょうか。ゲーム機の性能アップと共に進化を続け、プロ野球からも注目されるようになり、eスポーツになるまで成長した野球ゲームの歴史を振り返ります。

◇ベースボール スタジアムの雰囲気再現

 任天堂の家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ(ファミコン)」以前にも、エポック社の「テレビ野球ゲーム」、カシオの電卓ゲームなど、野球を題材にしたゲームはありました。しかし、性能の限界もあり、投打という野球の一部の要素を抽出するにとどまっていました。

「ベースボール」=任天堂公式サイトから
「ベースボール」=任天堂公式サイトから

 すると1983年にファミコンで初の野球ゲーム「ベースボール」が登場します。スタジアムが表示され、6チームから選べる上に、対戦もできました。投手は4種類の球種を投げ分けます。右打者と左打者もいて、野球の雰囲気の演出が見事だったこともあり、当時の野球好きは熱狂しました。実際に235万本(CESAゲーム白書調べ)を出荷する大ヒット商品になりました。

 友達同士でファミコンを遊ぶとき、野球にさほど興味のない友達は「マリオブラザーズ」や「ドンキーコング」を、野球好きな私は「ベースボール」をやろうとし、結果ひんしゅくを買いました。

 短時間で遊べるゲームが多い中で、「ベースボール」は9回まで遊ぶと一定の時間がかかるのが理由です。大勢の友達とさっと遊ぶには、不向きの面があったのですね。

 それにしても、ファミコンのコントローラーは十字キーが一つ、ボタンは二つしかありません。野球のルールは非常に複雑ですが、この少ないボタンで、野球のプレーを概ね再現できるようにしたクリエーターの創意工夫に感心します。

◇ファミスタ 奥深さ&テンポの良さで人気に

 そして1986年、「ファミスタ」シリーズの第1作「プロ野球ファミリースタジアム」が発売されました。「プロ野球」とある通り、実在の選手をモデルにしたであろう能力差のある選手が登場し、10チームから選べました。

「プロ野球ファミリースタジアム」(C)1986 NAMCO LTD.ALL RIGHTS RESERVED
「プロ野球ファミリースタジアム」(C)1986 NAMCO LTD.ALL RIGHTS RESERVED

 野球ゲームは、ファミスタでベースが完成したと言えるほどの出来でした。内外角の微妙なコースの投げ分けと、緩急をつけた投球。引っ張りと流し打ちができる打撃。選手も個性豊かで、打者なら長打力や足の速さ、投手なら利き腕や球速、変化球の曲がり方も違いました。どの選手をどのタイミングで起用するかもポイントですから監督にもなれました。

 操作に慣れたらヒットエンドランやタッチアップ、挟殺プレーもできます。何より、1試合15~20分、3試合1時間で終わるテンポの良さもありました。本物の野球であれば1試合2時間以上が必要ですから、その差は明らかです。

 要するに、ベースボールを遊んだプレーヤーたちが望むことが概ね再現されていました。しかも価格は3900円と、当時のソフトでは安かったのです。同作は205万本のヒットとなります。人気の裏返しですが、他のソフトとセットで売る「抱き合わせ商法」(違法です)のターゲットとなりました。

 ファミスタは、友達と繰り返して何百試合遊んでも、耐えられる“競技”的なレベルに昇華したのです。コンピュータと対戦するより、友達との対戦が段違いに楽しく、今振り返ると、eスポーツ的な要素もあったかもしれません。

◇燃えプロ 演出魅力もバグで失速

 「ファミスタ」の人気に合わせるかのように、野球ゲームが次々と登場します。その中で、ファミスタとは違う路線で挑み、インパクトを残した二つの野球ゲームがあります。

 一つは1987年に発売された「燃えろ!!プロ野球(燃えプロ)」です。「ファミスタ」の打者・捕手視点とは異なり、野球中継と同じ投手視点のゲーム画面で、一部スター選手の打撃フォームなどを再現するなど、発売前からのその演出力に当時のファンの期待はヒートアップしました。特に投手視点の画面になったことで、投球時に高低が使えるようになり、より本物に近づきました。

 ただし、各チームのスラッガーはバントをしてもホームランになるなどのバグがありました。球場も広く外野飛球が処理しづらく、試合時間も1時間(乱打戦になるとそれ以上)はかかるテンポの悪さがありました。

 それでも、同作は158万本のヒットとなりました。翌年に発売された続編「燃えろ!!プロ野球'88 決定版」は、こうした欠点も解消され、野球ゲームとして楽しめましたが、前作のイメージが重くのしかかりました。ただし「燃えプロ」の知名度やインパクトは抜群で、後にPS4で復活したときは、ゲームファンの間で話題になりました。

◇玄人好みのベスプレ 監督視点に特化

 もう一つのユニークな野球ゲームは、競馬ゲーム「ダービースタリオン」シリーズの薗部博之さんが手がけた「ベストプレープロ野球(ベスプレ)」です。プレーヤーは監督としてサインを出したり、選手交代をするというもので、選手は一切操作できず、指揮を執るというもの。高い能力の選手が活躍するとは限らず、投手のローテーションのやりくりをし、控え選手もフル活用してチームでペナントレースを乗り切るのですね。

 選手の能力値も自由に変更可能で、新加入選手やトレードに対応できました。「永遠に遊べるゲーム」という声もその通りで、ゲームの完成度としては屈指です。ただし、選手を直接操作できないためか万人受けはせず、玄人好みという感はありました。

◇パワプロ より現実の野球に近づく

 現在、最も売れる野球ゲームとして君臨しているのは、「パワプロ」の愛称で知られる「実況パワフルプロ野球」です。1994年に第1作「実況パワフルプロ野球'94」が登場し、シリーズ累計で2270万本を出荷しています。同シリーズは、スマートフォン用ゲームとしても展開しています。

「eBASEBALLパワフルプロ野球2020」
「eBASEBALLパワフルプロ野球2020」

 パワプロシリーズの強みは、投球時に内外角だけでなく、高低も完全に投げ分けられるようになった点です。高めの釣り球はもちろん、落ちる球でストライクを取ることもできるので、駆け引きの幅が一気に広がったのです。

 また打者も、普通のスイングと、長打狙いの「強振」を使い分けられます。守備でも細かい操作が可能になり、複雑なランダウンプレーなども可能になりました。「満塁男」「勝ち運」など選手の個性に合わせた特殊能力も追加、野球ファンをうならせるほどの緻密(ちみつ)な選手データ、タイトル通り「実況」も導入されており、臨場感も抜群です。

 同シリーズは、野球ゲーム単体の完成度だけでなく、選手を育成するモード「サクセス」も人気です。甲子園球児が甲子園を目指すといったドラマチックな要素を持ち込み、シリーズの人気を不動のものにしました。

 さらにパワプロの流れを組む、実際の選手に近い頭身やフォームで再現した「プロ野球スピリッツ」シリーズもあります。ちなみにパワプロシリーズは、米大リーグを題材にした野球ゲームも出したことがあるので、かなり幅広い展開をしているのですね。

◇ゲーム機進化の恩恵受ける

 実際の野球は、1試合で2時間以上かかりますが、それをそのままゲームで再現すると、ゲームのテンポが相当悪くなります。また野球を意識してゲームの操作が複雑すぎると、ついていけない人が出ます。それでいて、野球ならではの爽快感も持たせ、一方でゲームと現実が乖離(かいり)しすぎると、リアリティーがなくなってしまいます。

 野球は、塁間の距離を見ても分かるように、微妙なバランスの上に成り立つスポーツでして、ゲームでそれを再現するのは大変なのです。ワンヒットで二塁から走者が生還できなかったり、ライトゴロが続出したり、一流投手の速球を簡単に打たれるようでは、興ざめしてしまい、ファンの支持は得られません。ゲームクリエーターは、厳しい目に耐え、野球ゲームのレベルを高めてきたのです。

 またスタジアムの臨場感を再現するには、昔のゲーム機では限界があるので、野球ゲームは、ゲーム機の進化の恩恵を相当に受けています。今では、プロ野球選手が、ゲームで自分の能力を見て、一喜一憂する時代です。またひいきのチームが負けたときは、「ゲームで憂さを晴らす」という人も多いのではないでしょうか。余談ですが、カープファンの私は、低迷していた四半世紀の間は、ゲームで憂さ晴らしをする日々でした。

 今や日本のゲームだけでなく、米大リーグのゲーム「MLB The Show 20」も遊べてしまう時代ですから、野球好きにはたまりません。

 そして野球ゲームは、eスポーツとして注目を集めています。今やプロ野球選手がパワプロを操作して対戦する「#バーチャルセ・パ交流戦」という企画も行われました。

 NPB公認で野球選手がゲームをする姿を配信しており、しかも映像コンテンツとして相当な面白さに仕上がっています。何よりプロの選手が野球ゲームをごく自然に受け入れ、巧みに操作し、「~はミートカーソルが小さい」などと同僚の選手をいじったりする姿に、ファンであればニヤニヤしてしまうでしょう。

 野球の魅力をさらに高める野球ゲームの進化、今後も期待したいと思います。

ゲームを愛するものの、ゲームには愛されないヘタレなゲーマー。ゲーム好きが高じて、記者として兜倶楽部にも出入りし、決算やメーカーの各発表会、PS3の米国発表会、中古ゲーム訴訟、残虐ゲーム問題など約20年間ゲーム業界を中心に取材をする。合わせてアニメやマンガにも手を伸ばし、作品のモデルになった場所をファンが訪れる“聖地巡礼”現象も黎明期から現地に足を運ぶなどしている。マンガ大賞の選考員も担当しており、好きなジャンルはラブコメ、歴史もの。

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