PS5のソフト戦略明確に 欧米向け&大人のゲーマー取り込み

「グランド・セフト・オート5」のロゴ=発表会の映像から

 今年の「年末商戦期」に発売予定の新型ゲーム機「プレイステーション(PS)5」のオンライン発表会が12日、開かれ、PS5の本体デザインと、専用ソフト28本が紹介されました。その中で別格扱いされるソフトがありました。発表会を振り返り、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)のPS5用ソフト戦略の狙いを読み取ります。

◇出荷1億本超のGTA5

 発表会で取材者が最も注目するのは、主催者(SIE)の意図が明確になる最初と最後です。今回の場合、最後はPS5の本体デザイン披露、最初は「グランド・セフト・オート(GTA)5」のPS5版の発表でした。ゲーム市場の主戦場である欧米向けのタイトルをそろえ、大人のゲーマーを取り込む姿勢を明確にしたといえます。

 「GTA5」は2013年に発売され、累計出荷が1億本以上という世界的な大ヒットゲームで、PS3やPS4、PCなどさまざまなハードで出ています。ちなみに1996年に第1作が発売されたゲーム「バイオハザード」シリーズですが、24年かけて世界累計出荷数が1億本を突破していますね。バイオハザードの記録もすごいのですが、それゆえにGTA5のすごさも分かると思います。ただ、ゲーマー以外の人はそれでも「?」かもしれないので、もう少し掘り下げます。

 同作は、広大な島を舞台に、個性的な3人の犯罪者の物語が描かれます。世界で特に人気のゲームは「AAA(トリプルエー)」と呼ばれます。その基準はあいまいですが、世界出荷数1000万本ならば文句なしでしょう。GTA5はケタが一つ違うわけで、AAAを凌駕(りょうが)する“化け物”ソフトです。

【参考】GTA5公式サイト(18歳以上、年齢確認あり)

 同シリーズの特徴は、現実世界を丸ごと再現しており、何でもできる自由度の高さです。正義の味方として振る舞うだけでなく、窃盗、連続殺人、車で通行人を次々とひく、警察を相手にケンカを売るなどの犯罪行為ができます。ゆえに「クライム(犯罪)アクション」とアピールしています。

 しかし、政治家や教育関係者からは「犯罪を助長している」などという厳しい意見もあります。つまり、ゲーム(仮想)とはいえ不謹慎というわけですが、不謹慎だからこそ面白い側面もあり、現実と空想の区別がついていれば問題はないはずですが、賛否両論あるでしょう。

 2005年に、残虐性を理由に神奈川県は「GTA3」(PS2)を県青少年保護育成条例の「有害図書」に指定しました。それを受ける形で業界の自主規制として生まれたのが、ゲームソフト購入時の指標となる「CEROレーティング」です。「GTA」シリーズなど「Z」指定(18歳以上対象)のソフトは、陳列区分が義務付けられ、購入時に年齢確認が必要です。このときも取材をしましたが、行政側に規制と判定の根拠を聞くと、実にあいまいでした。

CEROレーティング一覧=コンピュータエンターテインメントレーティング機構のサイトから
CEROレーティング一覧=コンピュータエンターテインメントレーティング機構のサイトから

 同シリーズはその後、日本でヒットこそしますが、海外のように大ヒットをしているわけではありません。

【参考】ゲームの年齢別レーティング制度を反映した販売店マニュアル

◇PS5専用にこだわるメッセージ

 7年前のゲームをPS5向けに作り直すことは、新作よりもインパクトに欠けます。そしてPS5の発売と同時に遊べるわけではありません。PS5版は、驚くようなグラフィックに生まれ変わるのかもしれませんが、それでも最初に発表を見たときは「映像の一発目に出すタイトルがPS5の完全新作でない」と驚きました。

 しかし、GTA5のPS5版の存在は、海外のゲーマーに大きな安心感を与えるのは確かです。SIE傘下の開発スタジオから有力タイトルがそろいましたが、タイトルはどれだけそろっても十分ということはありません。そう考えると、GTA5を引き込んだのは、大きな意味があると言えます。PS5は、PS4のソフトと互換性を持たせる予定ですが、PS5専用にするというのは、強いメッセージ性があるからですね。

 日本では、ゲーム業界の外から厳しい評価を受けている「GTA」シリーズですが、同作に迫る日本のゲームはありません。約1時間のオンライン発表会のタイトルを見ても、海外のテイストに合わせた作品がそろい、日本らしさを感じることはなかったのが率直な実感です。その象徴がGTA5と言えます。

 現行機のPS4は1億1000万台を出荷しています。SIEは地域別の数字を開示してませんが、日本では1000万台弱と推測されます。実際に売れた販売数は900万台強(ファミ通調べ)だからですね。つまり日本市場のシェアは1割にも満たないのです。日本がゲーム業界の中心から外れたのは、必然なのです。

ゲームを愛するものの、ゲームには愛されないヘタレなゲーマー。ゲーム好きが高じて、記者として兜倶楽部にも出入りし、決算やメーカーの各発表会、PS3の米国発表会、中古ゲーム訴訟、残虐ゲーム問題など約20年間ゲーム業界を中心に取材をする。合わせてアニメやマンガにも手を伸ばし、作品のモデルになった場所をファンが訪れる“聖地巡礼”現象も黎明期から現地に足を運ぶなどしている。マンガ大賞の選考員も担当しており、好きなジャンルはラブコメ、歴史もの。

有料ニュースの定期購読

河村鳴紘の「記事も鳴かずば撃たれまい」サンプル記事
月額550円(初月無料)
月4回程度
ゲームやマンガ、アニメなどサブカル分野を取材すること20年以上。現場から経営までの取材経験を元に、取材側から見える視点、今だから明かせる昔話、業界の矛盾などに切り込みます。ネット向け記事を執筆して多くの話題を提供した実体験を元に、記事を作る上での“仕掛け”なども明かします。記事の制作が効率優先のお手軽になりつつある現状を勝手に憂いつつ、情報の発信方法に悩む皆様の“助け船”になれば幸いです。

Facebookコメント

表示

※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対してヤフー株式会社は一切の責任を負いません。

  1. 1
    コンピュータ将棋が6億手読むとはどういうことか? 最強将棋ソフト開発者・杉村達也さん(33)に聞く松本博文7/4(土) 18:00
  2. 2
    企画成立屋・勝俣州和が「ファン0人」でもテレビに出続ける理由ラリー遠田7/4(土) 5:00
  3. 3
    “AV界の演技派”川上奈々美が『東京の恋人』に主演。「神経質でも濡れ場から自分を解放できるように」斉藤貴志7/4(土) 10:00
  4. 4
    「ベースボール」「ファミスタ」「パワプロ」 野球ゲーム進化の歴史河村鳴紘7/4(土) 10:00
  5. 5
    出川哲朗が「抱かれたくない男」から「好感度芸人」に生まれ変わった理由ラリー遠田7/3(金) 5:01
  6. 6
    『鬼滅の刃』に見る、永く醜く続けるよりも濃く短く散るという思想飯田一史7/3(金) 13:00
  7. 7
    神童・藤井聡太七段(17)パーフェクトゲームで王位戦第1局勝利 木村一基王位(47)の粘りを押し切る松本博文7/2(木) 21:37
  8. 8
    瑛人「香水」はなぜ異例のヒットとなったのか? その成功が持つインパクトとは柴那典6/29(月) 7:00
  9. 9
    「特別総集編」で再確認したい、ドラマ『半沢直樹』の魅力とは!?碓井広義7/4(土) 19:15
  10. 10
    ”人種差別者”ジョン・ウェインの名前が空港から撤去されるべき理由猿渡由紀7/3(金) 7:00