「100日後に死ぬワニ」最終回直後に“炎上” 突然のメディア展開発表あだに

「100日後に死ぬワニ」の映画化告知

 連載開始時から主人公が100日後に死ぬと明かしてツイッターで展開して話題となったマンガ「100日後に死ぬワニ」(きくちゆうきさん作)が20日に最終回を迎えましたが、その直後に、書籍化と映画化、グッズ展開が発表されました。最終回が意味深長でグッとくる内容だっただけに、「最初から仕込みがあったのか」という声が続出しています。

 同作は、1日1話のペースで更新される4コママンガで、昨年12月12日からツイッターで連載を開始しました。擬人化したワニのキャラクターを平凡な若者に見立て、何気ない日常を描いています。最大の特徴は4コマの最後に「死まであと〇日」と、死のカウントダウンがされていること。連載が進むごとに残りの日が減っていきましたから、どこで最終回が来るかは誰にもわかるのが異色といえます。

 もちろん、主人公が死んで終わるマンガは存在するわけですが、最終回に死ぬこと、その日付を明確に宣言してリアルタイム的に進むマンガは、私の記憶にありません。紙媒体ではなかなか難しく、ネットの特性を生かした作品で、この仕掛けは「素晴らしい」の一言です。最終回を見て、第1話から読み返すと、いろいろな気づきもあり、深く考えさせられました。

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 さて今回の“炎上”のトリガーは、作品ではなく、最終回直後のメディア展開発表であるのはいうまでもありません。特にメディア展開の関連ホームページなどで、大手広告会社「電通」の文字列があったことが、“炎上”に拍車をかけている状況です。電通といえば、2015年の女性社員の過労自殺が思い出されるわけで、「100日後に死ぬワニ」のテーマである「死」とリンクし、「過労自殺のことを反省しているのか?」などと厳しい意見が飛び交っています。

 それを受けて、きくちさんと、コラボムービーにかかわった「いきものがかり」の水野良樹さんが、ツイッターの動画配信で「紅白よりも緊張する」苦笑しながら、同作に対する電通のかかわりを否定しています。

 真偽はさておき、どれだけ丁寧に説明して否定をしても、いくらでも勘ぐられる難しさがあります。

 他にも、同作の記事の多さを指摘しながら「電通にコントロールされていた。不自然だと思った」などという意見も見かけました。ですが特定の組織が、メディアをコントロールできるなら、こんな“炎上”はありえないでしょうし、批判的な記事も差し止められるはずなのに、その手の記事が普通に配信されているわけです。ともあれ、今回の一連の結果を見れば、今回の発表はマイナスイメージを持たせてしまった面があります。

 メディアが同作をこぞって取り上げた論理は単純で、話題だから追いかけただけでしょう。それは、メディアに所属していた人間としては断言できます。一つ言えることは、どんな切れ者の記者やライターでも、中身のないネタを、さも話題のあるように仕立てる“魔法”は存在しないことです。そんなものがあれば、巨額な金をかけてCMを放送したり、地味な宣伝活動をする必要もありません。

 以前に人気ゲーム「ポケモンGO」が社会的ヒットをしたとき、ゲームに詳しくない関係者が「あんなゲームを作ってよ」と(冗談にしても)発言し、周囲を辟易させた話があるのですが、「ないものねだり」という意味は、よく似ています。影響力のあるテレビ番組でも、無理筋な話題を仕立てるとネットで“炎上”し、それを知った記者がテレビ局の定例会見で指摘する恐ろしい時代なのです。

 さらに現状を考えると、同作がステルスマーケティングをしてた場合、明確に露見したときのダメージは計り知れません。やるにはリスクが大きすぎるのですが……。

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 今回の“炎上”のポイントは、ヤフートピックスにも採用されて大きな話題になった段階で、同作の宣伝担当が「露出がある段階で最大限の告知をしよう」としたことがあだになったことしょうか。あまりのスピード展開に事前に仕込みがあったように見えてしまい、そこが地雷になっていることです。

 メディア側の人間から言えば、最終回後の発表はもう少し日をおくか、やるとしても「書籍化企画検討」ぐらいに抑えるべきでした。そうであれば、ファンから喜びの声は大きかったでしょう。そして時間をおいて「書籍化決定」、グッズも小出しにして、最後に「映画化決定」をすれば、結果として記事も多く出て露出も出せたはずなのに、「なぜそこまで慌てる?」という印象ですね。SNS全盛の時代の宣伝が難しいことを証明する形となってしまいました。“炎上”を回避するには「何もしない」のが一番なのですが、そうはいきませんよね。

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 ともあれ、映画化の話は、原作マンガとは別物と見るべきです。面白ければ絶賛されるでしょうし、ダメなら酷評されるだけのことですし、それは作品を見てから自由に論じてはいかがでしょうか。

 そしてこの“炎上”こそ、「100日後に死ぬワニ」が話題なり、著名になった証とも言えます。大ヒット中のマンガ「鬼滅の刃」で「週刊少年ジャンプ」が老舗紙媒体の底力を見せたかと思えば、ネットでも「100日後に死ぬワニ」が出ました。マンガ離れが指摘されることを考えれば、こうして話題なって、一部で批判を浴びるのも良いことだと思うのです。「好き」の反対は「嫌い」ではなく「無関心」なのですから。