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任天堂とソニーの歴代ゲーム機出荷数比べてみた PS5の投入はギャンブル的

河村鳴紘サブカル専門ライター
ソニーのゲーム機「プレイステーション2」=SIE提供

 ゲーム機が1年間で最も売れる年末年始商戦の真っ盛りです。そこで任天堂とソニーの歴代の専用ゲーム機が世界累計でどのくらい売れたのかを振り返ってみました。

 ◇普及の限界ラインは1億5000万台

 1983年に発売され「ファミコン」の愛称で知られる「ファミリーコンピュータ」は当時、品切れ続出でした。「買いたくても買えなかった」という記憶を持つ人も多いでしょう。そのファミコンは、世界で約6191万台を売りましたが、この数字はニンテンドーDS(累計約1億5402万台)の半分以下で、ニンテンドー3DS(約7545万台)にも及びません。裏返せば、今はファミコン時代に比べてゲームという産業が飛躍的に拡大した証とも言えます。

 最も売れたゲーム機は、プレイステーション2(PS2)の約1億5500万台で、わずかにDSを上回りました。PS2は当時、ゲームに興味がなくともお手頃なDVD再生機という位置付けで買った人もいますし、年次の経過と共に値下げもして、多くのユーザーを取り込みました。ともあれ、DSも到達した「1億5000万台」が専用ゲーム機の現段階での普及限界ラインといえるでしょう。

 ちなみにPS4は現在、PS2を上回るペースで累計1億台を突破しました。ただ他のゲーム機と違って、価格は高めですし、上位機種の「PS4 Pro」を合わせた買い替え需要を含めた数字です。今後それなりの値下げをしても、1億5000万台の突破はなかなか大変かもしれません。

 ◇出荷数から見るWii誕生の“必然”

 ちなみに累計出荷数を追うと、面白いことも見えます。任天堂の据え置き型ゲーム機の系譜が、リモコン型コントローラーを採用したWiiで劇的に変わったことは異論がないと思います。そこで任天堂の歴代ゲーム機の台数を並べてみます。

 ファミコンは約6191万台、スーパーファミコンは約4910万台、NINTENDO64が約3293万台、ゲームキューブが約2174万台ですね。任天堂のゲーム機は、代替わりするごとに台数が減るジリ貧状態だったのです。

 その時期にライバルのソニーは、PSを約1億240万台も売っています。数字だけを見ると、任天堂のゲーム機とビジネスモデルが、ソニーに後れをとっていたわけですね。つまりWiiのときに、普通の新型ゲーム機を出していては、任天堂の勝ち目は薄かったわけです。改めて、異質の方向性を持ち出して挑戦したWii投入の決断は、“必然”であることが理解できるわけですね。

 その大成功したはずのWiiも累計出荷数は約1億163万台で、1億5000万台はおろか、ゲームボーイ(約1億1869万台)にも届いていません。意外といえば意外で、改めてゲームビジネスの難しさを教えてくれます。さらに後継機のWii Uは、Wiiと比べてわずか10分の1の約1356万台に留まりました。Wiiは10年間(決算に出荷数を記載した期間)売り続けたのにWii Uは5年で見切りました。この見切りが大正解だったのは、今のスイッチの成功を見れば分かるでしょう。

 同じことはソニーにも言えます。PS2の大ヒットから打って変わり、半減近くの8740万台と失速したPS3。その原因を考えて、PS4は成功しましたが……。ゲーム機の世代交代を成功させるのは大変なのです。

 逆に言えば、現行ゲーム機の成功は、次世代ゲーム機の成功を保証しないわけです。だからこそネットワークサービスを活用するなどして利用者の囲い込みを図り、リスクを軽減しようとしているわけです。新型ゲーム機が出るとき、ゲームファンは期待でワクワクなのですが、メーカー側は戦々恐々なのです。特に勝っているゲーム機の世代交代は相当のリスクで、ギャンブル的とすら言えます。

 ですから来年発売予定のPS5も、ギャンブル的な“宿命”から逃れられません。おまけに発言一つ、誤解をされても発売前の商品イメージが激変します。もちろんゲーム事業が軌道に乗ったときの利益はすさまじく、メディアに取り上げられるなど華やかに見えるのですが、事業の視点ではかなりのハイリスク・ハイリターンなのです。

サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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