ニンテンドースイッチライトは売れるか【後編】 結果論の携帯ゲーム化?

ニンテンドースイッチライト=任天堂提供

 任天堂の新しい携帯ゲーム機「ニンテンドースイッチライト」(1万9980円、税抜き)が20日から発売されますね。どのくらい売れるのか注目している人は多いと思います。大ヒットをした「Wii」や「ニンテンドーDS」など過去のゲーム機の販売数を見ながら、前後編に分けて考察しました。後編は、スイッチライトを出す狙いや、その後を予測してみます。

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 任天堂がスイッチに望んでいるのは、累計1億5000万台以上を出荷し、社会現象となったニンテンドーDSのような売れ方でしょう。DSは年間1000万台以上の出荷を6回、うち年間2000万台以上の出荷も4回記録しています。ちなみに、PS2も累計1億5000万台以上を出荷していますから、価格やゲーム機の形態の違いはあまり関係なさそうです。

 任天堂は現状、3DSの後継ゲーム機を発表しておらず、スイッチライトの発売で、据え置き型ゲーム機と携帯ゲーム機のブランドを一本化する形になっています。任天堂が株式会社の宿命というべき成長路線を目指すのであれば、スイッチがこれまでのゲーム機以上に売れるか、他の事業でカバーするかしないと困るわけです。

 なお、ニンテンドースイッチの台数を伸ばすだけであれば、簡単な手があります。それは「PS4」と「PS4 Pro」のように、スイッチと互換性がある価格の高い高級ゲーム機を出せば、コアユーザーの買い替え需要が進み、数字は伸びるからです。ただし、任天堂は「ゲーム人口の拡大」「スイッチを1人に1台」をテーマに掲げているので、台数を稼ぐのが狙いになると、その戦略はぶれることになります。決算と株価対策の視点からは大歓迎でしょうし、「高級機を出して、買い手の選択肢を増やした」という理由もあります。

 しかし、経営陣の本音がどこにあるかが重要です。それが「数の水増し」にあれば、ぶれた戦略は、「ゲーム人口の拡大」というテーマだけでなく、社員の意識、今後の展開に影響します。「そんなのは些細なこと」と思うかもしれませんが、中国の思想家・韓非子の「巨大な堤も蟻の穴から崩れる」(意訳していますが)の言葉もあります。気のゆるみや予測違いで、多くの巨大企業が失速したのは過去の事実が示す通りで、これは本当に難しいところですね。

 今回の「ニンテンドースイッチライト」について考えたとき、最大の武器はもちろん従来機よりも1万円安い価格です。「CESAゲーム白書」のデータでも、3DSはもちろん、いまだにDSを遊んでいるユーザーが一定数いることが分かっています。そして、値段を下げたゲーム機が出ると、そのゲーム機の購入を検討する層が増えて拡大します。3DSやDSに慣れた子供たちが、スイッチライトの美しいグラフィックに喜ぶのは想像できるでしょう。ただし、今は無料でゲームが遊べるスマートフォンやタブレットという敵がいるため、スイッチライトが本当に売れるか推し量りにくい点が、予想を難しくしています。

 ニンテンドースイッチは既にヒット商品なので、それより安いスイッチライトは黙っていてもある程度は売れます。ですが、任天堂が真剣に「ゲーム人口の拡大」を目指すのであれば話は変わります。そうなると敵は、ゲーム機と化したスマートフォンであり、グーグルやアップルの新ゲームサービスとなるわけで、本音では無視するわけにはいきません。ソニーも携帯ゲーム機の事業をやめたように、ゲーム業界関係者の多くは「携帯ゲーム機は、欧米というゲーム業界の主戦場では厳しい」と思っているわけですが、この“定説”を任天堂が覆せるかです。普及率では、スマホに圧倒的に負けているので分の悪い戦いではありますが、数々のキラータイトルを駆使し、新しいアイデアを提示して、どこまで戦えるかでしょう。

 スイッチライトの発表があってから、さまざまな取材をしたり、データを比べてみたりしました。たどり着いた結論は、スイッチライトは、「ゲーム人口の拡大」を追求した任天堂がスイッチの価格を下げることが必要と判断し、コストダウンを徹底、その結果論として携帯ゲーム機になったのでは……ということでした。そう考えると、任天堂がスイッチライトを「売れない」とされる携帯ゲーム機に特化したことも、つじつまが合うのです。スイッチライトは、スイッチの命運を握っている……とも言えそうです。