PS4後継機 なぜ正式発表前に予測記事出る? 巨大産業の宿命

SIEのゲーム機「PS4」(左)と周辺機器の「PSVR」(写真:つのだよしお/アフロ)

 今年に入って、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)がPS4の後継ゲーム機の開発を進めていることを明かしました。ただこの正式発表前から「SIEが次世代機を出す」という記事などがネットには出回っていました。新型ゲーム機といえば企業の中で極秘扱いになるはずなのに、なぜでしょうか。

 一言で言えば、新型ゲーム機を作らなくてはいけない……という産業の構造になっているためです。

 PS4の後継機の正式名称発表はまだですが、既に「PS5」としている記事もありますね。PS4の次世代機の話を見るようになったのは、2017年ごろからでした。PS4の世界販売台数ですが、2015年度は1770万台、16年度は2000万台、17年度は1900万台、18年度は1780万台でした。要するに販売のピークに達した直後に話が出ているわけです。

 なぜ予測できるのかというと、この販売数を見ているからです。ゲーム機は、現在の技術がダイレクトに反映される仕様で、基本的には後から出るゲーム機の方が性能が上になりますから、他の製品のように10年以上のロングセラー的な売れ方は望めません。従って企業として売り上げを継続的に確保するには、それに代わる新型ゲーム機の開発が必要となります。取材側もそれが分かっているので、現行ゲーム機の売り上げがピークを超えると判断したころから、次世代ゲーム機に関する質問をメーカーにぶつけるのです。PS4の後継機の話もそうした流れにありました。質問をされた側は、肯定も否定もせず、意味ありげに話を濁すことが多いのですが、そうなると取材側は「(次世代機は)あるな」と判断し、より具体的な情報について探るようになります。

 最終的に商品化して、世の中に披露されるかはさておき、モデルチェンジを含めて、新しいゲーム機は常に開発研究をされている。この構造に気付いて、関係者の取材時に「順調に売れたゲーム機の販売数がピークになると、『次世代ゲーム機の開発に着手中か』と(予測記事を)書いてしまえば正解になりますね?」と話し、「まあ、そうなんですが……」と苦笑いされたことがあります。

 新型ゲーム機の必要性は、開発者のことを考えても当たり前のことです。ゲーム機が完成したからといって、開発者たちを長期間遊ばせるのは無駄ですし、全く違うことをさせても彼らの特別なスキルを生かせないことになります。彼らの仕事を作る意味でも、彼らの能力を最大限に生かす意味でも、ゲーム機の改良、基礎研究、ネタ探しはついて回ることなのです。誤解を恐れずにいえば、新型ゲーム機が発売された瞬間、次の新型ゲーム機の開発がスタートしていると言えます。

 もう一つ。新型ゲーム機の存在が漏れることは、巨大産業の宿命ともいえる問題です。ゲーム機は世界規模で販売する必要があり、それを隠すのは容易ではありません。スタート時点から数十万台以上の商品を用意しないといけませんから、部品の材料調達だけでも推測されやすいのです。そして有力なソフトメーカーにも、協力を要請するため事前に話を通すわけですが、知る人が増える分だけ情報が漏れやすくなるのも当然と言えます。ゲーム産業が人気であり、注目を集めていることの証ですが、当事者には頭の痛い話なのは言うまでもありません。

ゲームを愛するものの、ゲームには愛されないヘタレなゲーマー。ゲーム好きが高じて、記者として兜倶楽部にも出入りし、決算やメーカーの各発表会、PS3の米国発表会、中古ゲーム訴訟、残虐ゲーム問題など約20年間ゲーム業界を中心に取材をする。合わせてアニメやマンガにも手を伸ばし、作品のモデルになった場所をファンが訪れる“聖地巡礼”現象も黎明期から現地に足を運ぶなどしている。マンガ大賞の選考員も担当しており、好きなジャンルはラブコメ、歴史もの。

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