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2022年Jリーグ、移籍先に福をもたらす新戦力セブン

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

謹賀新年、いよいよワールドカップイヤーです。年末には「来年のJリーグはこのレンタルバック組6人に注目!」を書きましたが、新年ということでJリーグの移籍先に福をもたらしそうな新加入選手を七福神にちなんで、筆者の目線で7人選びました。

なお、年末に書いた「「おおっ!」と唸らせる年内のJリーグ補強7」ですでに取り上げた7人は対象外にしています。

ルキアン(アビスパ福岡  ← ジュビロ磐田)

昨年のJ2得点王。磐田側からしたら寂しい別れになったが、効果的な補強という意味では今オフ屈指だろう。「福岡だけに福を買う」と言いたかった訳ではないが、持ち前の決定力に加えて個人で打開する能力もあり、自分に対するマークを利用したアシストもできる。プレッシングの質も高く、組織的な守備をベースにする長谷部監督が掲げる福岡のスタイルにフィットすることもほぼ確実だ。あとはどれだけ周囲のサポートを得て、川崎のレアンドロ・ダミアンが本命と見られる得点王にどこまで迫れるか注目だ。

藤田譲瑠チマ(横浜F・マリノス ← 徳島ヴォルティス)

パリ五輪世代の注目株がトリコロールに加わった。中盤でのボール奪取力は若手では突出しており、いわゆるボックス・トゥ・ボックスの運動量も備える。徳島で学んだポジショニングもマリノスの戦術適応に大きな助けとなるはず。神戸に移籍した扇原貴宏とタイプは異なるが、役回りは近いものになって行きそう。そこに穴を埋めるだけでなく、どれだけプラスアルファを加えられるか。もともと海外志向が強いので、移籍に際しては将来設計についても話し合われているはずだが、まずはチームにタイトルをもたらす活躍ができるか期待される。

仙頭啓矢(名古屋グランパス ← サガン鳥栖)

まず立派な福耳の持ち主で、見た目が七福神ぽいという話は置いておいて、高い機動力と確かな技術を融合して、ゴールに直結するプレーができる選手だ。かつて京都から移籍したマリノスでは壁に当たったが、再び京都に戻って存在感を示すと、昨年は鳥栖で安定感あるパフォーマンスで躍進を支えた。攻守にわたりアベレージの高いプレーを継続しながら、時にあっと驚くようなスーパープレーも見せる。戦力的なプラスをもたらせる事はほぼ間違いないが、あとは長谷川健太新監督がシステムや配置を含めて、どう起用していくかが気になるところだ。

遠藤康(ベガルタ仙台 ← 鹿島アントラーズ)

昨年暮れのJ2降格から多くの主力選手の移籍も報じられるなど、1年でのJ1復帰に向けて厳しいシーズンになりそうなベガルタだが、この男が福をもたらす期待は非常に高い。鹿島に15年在籍し、多くのタイトル獲得に貢献した百戦錬磨のレフティは仙台の出身だが、塩釜FCでスキルを磨いて鹿島に加入した。そのままワンクラブマンとして引退までという選択肢もあったはずだが、経験をしっかりと地元に凱旋すること、何よりもう一度チームの中心としてプレーしたいという思いもあるだろう。流れの中でのチャンスメイクはもちろん、セットプレーからの得点力アップも期待される。

上門知樹(セレッソ大阪 ← ファジアーノ岡山)

昨年のJ2でインパクトのある活躍を見せた。満を辞しての”個人昇格”。おそらく水面下では複数のJ1クラブが獲得に動いたと見られるが、セレッソは特長を発揮するのに打ってつけのクラブと言える。個人で違いを生み出せるアタッカーで、攻撃面では組織で縛りすぎないほうが良い。小菊監督は守備に関しては細かい要求をするが、攻撃面は選手の判断を尊重する面が強く、清武弘嗣を中心とした攻撃陣にどう絡んでシュート力を爆発させていくのか楽しみ。ちなみに読み方は「うえもんともき」ではなく「うえじょうさとき」だ。

ヤクブ・スウォビィク(FC東京 ← ベガルタ仙台)

期待の選手は多くいるが、上記のルキアンと並び、新天地で間違いなく活躍するという太鼓判を押せる数少ない一人だ。キーパーに求められるあらゆるスキルレベルが高く、しっかりとチームを安定させた上にビッグセーブで勝機をもたらせる。新潟からアルベル監督が就任したFC東京はボールの主導権を握る攻撃的なサッカーにシフトすることが確実だが、背後に安定感抜群のGKが構えていることはこの上なく心強いだろう。Jリーグには名古屋のランゲラックや川崎のチョン・ソンリョンと言った良質な外国人GKがおり、ガンバの東口順昭や浦和の西川周作、日本代表GKの権田修一(清水)と言った実力者もいるが、このヤクブ・スウォビィクをNo.1に推す声も少なくない。FC東京の上位躍進やタイトル獲得に貢献すれば、その名声も確かなものになるだろう。

杉本健勇(ジュビロ磐田 ← 浦和レッズ)

マリノス残留、レッズ復帰・・・様々な噂が取り沙汰されたが、期限付き移籍での行き先は”J1昇格組”のジュビロ磐田となった。上記のルキアン移籍で、前線の核になれるFWを探していた磐田にとっては願ってもないタレントであり、大津祐樹や山田大記、大宮から新加入の黒川淳史らと良好な関係を築く可能性が高い。また同じ大型FWのファビアン・ゴンザレスともタイプが違うため、伊藤彰監督の起用法も注目される。浦和では幅広いプレーを求められ、本人もそれに従順に従いすぎたところがある。マリノスではボックス内により専念して貴重な得点を記録したり、味方のゴールもサポートできていた。どちらにしても前線の重要戦力になることは間違いないが、セレッソ時代のようなゴール量産を期待するなら、できるだけ最前線で仕事ができる環境を構築していくことが重要になる。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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