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日本代表の命運を握る最終予選10月シリーズ。森保一監督ななぜ今回の25人を選んだのかを読み解く。

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

サッカー日本代表の森保一監督は最終予選のサウジアラビア戦とオーストラリア戦に向けた25人のメンバーを発表しました。

久保建英(マジョルカ)が怪我で招集不可能となり、前回の代表戦で負傷した古橋亨梧(セルティック)も招集が見送られました。また伊東純也はメンバー入りしたものの、累積警告でサウジアラビア戦には出られない苦しい台所事情もある中で、通常の23人より二人多い構成となりました。

筆者はアウェーのサウジアラビア戦からホームのオーストラリア戦と続くシリーズを考えて”変則型ターンオーバー”を提唱していましたが、実現しませんでした。代わりに、国内からの長距離移動の負担が大きい国内組はこれまで”森保ジャパン”の主軸を担ってきた大迫勇也、酒井宏樹、長友佑都、権田修一の4人に若手のGK谷晃生を加えた5人にとどめました。

その一方で欧州組から三好康児、橋岡大樹、田中碧といったこれまで予選の経験が無いメンバーが加わっており、前回は追加招集だったFWのオナイウ阿道も選ばれており、9月の中国戦後に森保監督がカタールから帰国せず、欧州組の視察を精力的に行った1つの成果と言えます。

必勝で臨むにあたり、森保監督がこれまでチームを主軸として支えてきた大迫、長友、酒井、権田をサウジアラビアに合流させるのは当然、試合で使いたいからでしょう。ただし、見方を変えると、現地到着から3日後には試合がある状況で、現地でのコンディションを見極めながら起用が難しいと判断した時に、代わりがつとまると期待する選手たちがいるはず。

それが大迫の基本ポジションである1トップならオナイウ、右サイドバックなら室屋、左サイドバックなら中山、GKなら言わずと知れた川島がおり、移動後に国内組のコンディションが思わしくないなら、彼ら4人に取って代わる可能性があります。伊藤が出場停止の右サイドは堂安律がスタメンを担うはず。

サウジアラビア戦で予想される布陣は下記の通りです。

-------------------------大迫-------------------------

--------------------(オナイウ)--------------------

-----南野-------------- 鎌田---------------堂安----

---------------柴崎---------------遠藤---------------

---長友---------冨安------------吉田-------酒井---

(中山)----------------------------------(室屋)

--------------------------権田-------------------------

-----------------------(川島)----------------------

さらに2列目の原口元気と三好康児、ボランチの守田英正あたりは途中から投入される可能性は高く、田中碧やセンターバックも兼ねる板倉滉が1試合目で使われるかどうかは試合展開によるかもしれません。

オーストラリア戦は中4日になりますが、ホーム扱いのオマーン戦をカタールで行っているオーストラリアとほぼ同じ条件であり、時差ぼけの影響を受けにくい西から東の移動を乾えても、サウジアラビア戦を経験した欧州組がメインのままで、十分に良いコンディションで戦えると算段しているのでしょう。

筆者の想定プランでは伊東純也を加えた国内組はJFA夢フィールドで調整しながら、オーストラリア戦に備える流れでしたが、伊東もチームと一緒に活動するメリットを優先して、サウジアラビアの活動に帯同して、一緒に帰国するとのことです。森保監督は個人のコンディションをベストに持っていく以上に、チームの共有や一体感を重視したということでしょう。

ただ、最終予選でも最もタフで難しい戦いが予想される完全アウェーのサウジアラビア戦で、なんの問題もなく、万全な状態で帰国し、オーストラリア戦に備えられると楽観するのは非常に危険です。スタメンの入れ替えはもちろん、選手交代のタイミングもサウジアラビア戦よりシビアになってくるかもしれません。

すでに勝ち点6を獲得している両国との試合で、森保監督は背水の陣で臨まなければいけない状況で、やはり冒険的な構成は取ってきませんでした。しかし、”リスクを冒さないことがリスク”という言葉もある通り、信頼ベースのオーソドックスなプランで最大勝ち点を取れるかどうか。良い方の結果につながることを期待して見守りたいと思います。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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