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東京五輪後、初のA代表メンバー発表へ。W杯最終予選の招集候補は?

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

森保一監督が率いる日本代表はアジア最終予選の9/2オマーン戦(吹田)、9/7中国戦(ドーハ)に向けたメンバー発表を26日に行います。

森保監督がA代表との兼任で率いた東京五輪後の最初の活動だけに、これまでU−24代表をメインステージにチャレンジしてきた選手たちの招集があるのかどうかも注目されます。

無論、久保建英や堂安律、冨安健洋といったA代表の常連メンバーは有力ですが、誰が加わってくるのか。五輪世代のメンバーが主体となったコパ・アメリカやEー1選手権でA代表を経験した選手は多くいますが、いわゆるフルメンバーのA代表という基準で考えていきます。

G Kは欧州組の川島永嗣、シュミット=ダニエルに清水エスパルスの権田修一を加えた三人が最有力で、そこに中村航輔や西川周作が食い込めるかどうかという競争関係です。その中で、東京五輪で守護神をになった谷晃生も、いきなりは難しくても、最終予選の中で割り込んできて欲しい選手です。

もちろん本番では控えだった大迫敬介もこのまま満足することはないでしょう。またガンバ大阪で谷にポジションを譲らなかった東口順昭も抜群のセービングに加えて、ビルドアップも向上しており、攻撃面の貢献を重視する森保監督としても、再評価して欲しいところはあります。

右サイドバックはマルセイユから浦和レッズに加入した酒井宏樹が筆頭ですが、ドイツ2部のハノーファーで右サイドバックのポジションを確立している室屋成がパフォーマンスも安定的に向上しており、F C東京で磨いたクロスを効果的に上げるビジョンの成長も代表で発揮する期待があります。さらに川崎の山根視来を加えた同ポジションの競争に、現時点でU−24の選手が割って入るのはかなりハードルが高い状況です。

ただ、A代表の場合は五輪代表とメンバー構成が変わってくるので、東京五輪のメンバーからは惜しくも外れた菅原由勢が左サイドやボランチ、サイドハーフのマルチとして、改めて最終予選に招集される可能性はあります。橋岡大樹も5月のミャンマー戦でA代表を経験済ですが、ベルギーリーグの第4節から先発出場しており、そこでのパフォーマンスも評価に入ってくるはず。ただ、最終予選のスタートとなる今回は実績と経験のある酒井、室屋、山根が基本線でしょう。

センターバックは東京五輪代表の主力だった吉田麻也と冨安健洋がそのままファーストセットになりますが、3、4番手はかなり熾烈な競争になりそうです。従来の序列で行けば植田直通がそこに収まるのは確実ですが、6月の活動で確かな存在感を示した川崎フロンターレの谷口彰悟が評価を上げているはず。ただし、谷口は怪我でJリーグも試合から離れており、今回は招集対象から外れるでしょう。

そうなると、すでにA代表の経験も豊富な板倉滉か名古屋グランパスの中谷進之介が有力に。ボランチとの兼任ということで考えると板倉の存在は重要ですが、オランダのフローニンゲンから一度マンチェスター・シティに戻り、ドイツ2部のシャルケ04に移籍したばかり。21日の試合にセンターバックで途中出場しましたが、コンディションで判断すれば中谷の方が良好と見られる中で、森保監督がどう判断するか。

筆者個人の見解ではJ1で首位の川崎を追いかける、横浜F・マリノスの畠中慎之輔もパフォーマンスが良い意味で安定しており、最終予選で十分に戦力になれるだけのものは示しています。二次予選の前半戦でも招集され、2019年のE−1選手権では主力だったこともあり、このタイミングで代表復帰の線も考えられます。

ポテンシャルでは神戸で圧倒的なデュエル勝利数を記録する菊池流帆も面白いですが、いきなりテストするチャンスも無く最終予選に入る状況を考えると、2022年に予定されるE−1選手権などが大きなデビューチャンスになると考えられます。そのほか、JリーグでブレイクしてきているA代表未招集組にも言えます。

左サイドバックは現在クラブでの去就がはっきりしていない長友佑都の状態が心配されますが、コンディション作りに怠りはないと見られます。セリエAのジェノア加入も話に出ている長友が、元々の序列と信頼から最終予選の初戦で外されることは考えにくいです。

もう一人がサンフレッチェ広島の佐々木翔になるのか、中山雄太になるのか。前回の代表戦でアシストを記録したFC東京の小川諒也もいますが、中山も対人の守備に加えて五輪の中で攻撃面のポジショニングなどが改善されており、ボランチとの兼任で構想できるので、やや有利かもしれません。

ボランチの主軸は遠藤航で、守田英正が”相棒候補”の筆頭。そこに6月のシリーズでアピールし、広島からスイスのグラスホッパーに移籍した川辺駿、ロストフの橋本拳人、さらに東京五輪で遠藤航と名コンビを形成し、ドイツ2部のデュッセルドルフでプレーする田中碧などがメンバー入りを競う構図です。

そして前回はプレーオフや怪我の事情もあった柴崎岳の復帰も注目されます。スペイン2部のレガネスでは開幕からスタメンで出ており、あとは森保監督が柴崎をどう評価するのか。ただ、2年前に比べると橋本に加えて守田、川辺、田中碧、センターバックのマルチである板倉と確実に層は厚くなっており、コンディションが良けれ復帰を確約できる状況ではありません。

Jリーグではヴィッセル神戸の山口蛍がスペシャルな活躍をしており、経験値を考えても招集されれば頼もしい存在ですが、上記のような充実ぶりなので、なかなか難しいところです。国内組だけでの参加が予想されるE−1選手権では名古屋の稲垣祥らとともに、中盤の主力として期待される一人でもあり、そこで圧倒的な存在感を示せれば欧州組を押し除けての”フル代表”が見えてくるかもしれません。

二列目は伊東純也、南野拓実、鎌田大地、原口元気の4人は余程のことがない限り外れないと予想できます。そこの元々 A代表の常連である堂安律、東京五輪で攻撃の中心的な役割を担い、復帰したマジョルカでいきなり主力に定着しつつある久保建英が入りのもほぼ確実で、さらに三好康児が入れるか。

左右のバランス的には五輪組から相馬勇紀や三笘薫が台頭してくれば面白いですが、相馬はACLからの過密日程だった五輪も影響してか、直近のベンチからも外れており、五輪後に川崎からプレミアリーグのブライトンに移籍した三笘は、期限付き移籍となったベルギーのサンジロワーズに合流して日が浅い状況です。

守備面の強度など、A代表のメンバーに割り込むには明確な課題がある実情を考えると、候補になるのはもう少し先の話かもしれません。さらにマルチな起用法で、東京五輪で確かな存在感を見せた川崎の旗手怜央はA代表に定着していくには高水準のスタンダードに加えて、スペシャリティを出していく必要があります。もともと点も取れるアタッカーである旗手は色んな可能性を秘めていますが、どっち付かずになってしまうと、なかなか割り込んで行けないでしょう。

久保、堂安、三好をのぞく五輪組のアタッカーで最も面白いのは前田大然でしょう。横浜F・マリノスに加入した当初はサイドでの適応に苦しみ、明らかに1トップの方が能力をストレートに発揮しやすい状況でしたが、ここ最近は左サイドでもコンスタントに結果を出しており、2ポジションをこなすというよりも、スペシャリティを発揮できる特長はA代表でも発揮できそうです。

ただし、FWはヴィッセル神戸に加入し、酒井宏樹とともに規格外の”国内組”となった大迫勇也が相変わらず主軸で、その神戸からセルティックに移籍し、いきなりゴールを量産している古橋亨梧が代表でも序列を上げる期待がさらに高まっています。

そこに前回は追加招集ながら猛アピールし、その後マリノスからフランス2部のトゥールーズに移籍したオナイウ阿道は21日のディジョン戦で移籍初ゴール、浅野拓磨もドイツ1部のボーフムで継続的に出番を得ており、ベルギー1部のベールスホットで10番を背負う鈴木武蔵も虎視淡々と代表復帰を狙っているでしょう。

ボランチと同じく、2年前の今頃から考えるとFWの選手層は確実に厚くなってきていますが、本当の意味で大迫を脅かしていく存在に誰がなっていくのか。願わくば東京五輪で確かな存在感を残し、サガン鳥栖からベルギーのシント=トロイデンに移籍した林大地や同大会で悔しさを味わった上田綺世などの台頭も期待されますが、すぐに割り込むのは難しいかもしれません。

現時点でオーバーエイジをのぞく東京五輪組のA代表での選出は以下の通りと見ます。

確実:冨安健洋、堂安律、久保建英

有力:板倉滉、中山雄太、田中碧、三好康児

特注:前田大然

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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