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東京五輪へのラストサバイバル。U-24日本代表のアピール合戦を展望する(vsA代表の予想布陣付)。

河治良幸スポーツジャーナリスト
三笘薫/ 筆者撮影

J1リーグも中断期間に入り、いよいよ本日から東京五輪に向けたU−24日本代表の活動がスタート。A代表の合宿に参加していた9人とオーバーエイジの3人はそのままU−24の方に移動します。

5日に福岡でU-24ガーナ戦、12日に豊田でジャイマイカ戦が行われる予定ですが、3日にA代表のジャマイカ戦が相手のチーム事情でなくなった代わりに急きょ、A代表とのチャリティマッチが組まれることになりました。

オーバーエイジ3人は事実上、そのまま本大会のメンバー入りが見込まれており、吉田麻也は森保一監督に違うなと思ったら遠慮なく外して欲しいと伝えたそうですが、指揮官の信頼からそうした事態になることはないでしょう。

さらにミャンマー戦で右膝に違和感を抱える冨安健洋(ボローニャ)に代わり、吉田麻也とセンターバックを組んだ板倉滉(フローニンゲン)が相手との力関係を差し引いても着実に評価を上げるパフォーマンスを見せました。

ただ、そのほか左膝に違和感のあった堂安律(ビーレフェルト)、クラブ事情で合流が遅れた三好康児(アントワープ)を含めて出番がなかった選手たちはほぼフラットの状態で国内組、さらに欧州組の中では唯一、A代表にはいなかった食野亮太郎(リオ・アヴェ)との競争が待っています。

基本的にはオーバーエイジのいるポジションといないポジションで競争具合は変わってきます。遠藤航(シュトゥットガルト)がボランチ、酒井宏樹(マルセイユ)が右サイドバック、吉田麻也(サンプドリア)はセンターバックであり、3バックを採用する場合は酒井が右ストッパーと右ウィングバックの両ポジションで候補になってきます。

GKは国内組4人の競争ですが、大迫敬介(サンフレッチェ広島)、谷晃生(湘南ベルマーレ)、沖悠哉(鹿島アントラーズ)の3人はアルゼンチンと2連戦を行った前回から引き続きの招集であり、そこに18歳ながら浦和レッズで試合に出続ける鈴木彩艶がどこまで食い込んでいけるかとという構図です。

これまでの実績では大迫が有利と見られますが、リベンジマッチとなったアルゼンチンとの2試合目で3−0の勝利に大きく貢献しており、ほぼ横並びの状態にあるかもしれません。沖は出番が無かった前回をバネに鹿島の監督交代後の躍進を後ろから支えてきました。ここ2試合チームは足踏みしていますが、まずは4人で2試合の出番を争うことになります。

DFは酒井と吉田のオーバーエイジ2人、A代表の主力である冨安がおり、さらにMFとのマルチで板倉もいることを考えると、かなりシビアな競争になります。残る橋岡大樹(シント=トロイデン)、菅原由勢(AZ)、古賀太陽(柏レイソル)、町田浩樹(鹿島アントラーズ)、旗手怜央(川崎フロンターレ)はそれぞれポジション適性、特徴が頃なる

何れにしても本職の左サイドバックが一人は選ばれるとなると、古賀か旗手のどちらかは入ると見られます。ただし、3バックを想定した場合に古賀は3バック左と左ウィングバック、旗手は左ウィングバックに加えて2シャドーの候補にもなります。

古賀は柏で右サイドバックを担ったこともあり、4バックの中央も対応は可能なので、かなり有難い存在です。また古賀の場合は右利きでありながら左足の展開力も武器としている強みはあります。

ただ、MFとして招集されている中山雄太もバックラインでの対応ポジションが重なるため、そこの兼ね合いも出てきます。A代表のメンバーでもある中山に関しては森保監督がこの世代のリーダーとして信頼を示しており、吉田が順当にキャプテンマークを巻くとしても、チームのまとめ役の一人として、

目標が金メダルである以上、二人の左サイドバックでの評価に加えて、決勝まで過密日程での6試合を想定して、各ポジションのバランスを見ながらの選択になってきます。右サイドバックも酒井に加えて最低一人は必要ですが、マルチであることが最低条件になってきそうです。

右サイドバックの候補である橋岡と菅原の二人ともセンターバックができる選手ですが、菅原にいたっては左サイドバックやボランチ、サイドハーフもできる”スーパーマルチ”ということで、メンバーに残れば間違いなく重宝されるでしょう。ただ、各ポジションでのスペシャリティとしてのアピールは不十分で、ミャンマー戦も出番が無かった中で、そこはU-24の合宿で示して行く必要があります。

ビルドアップの能力はもともと定評がありますが、攻め上がりや守備のデュエルなどは改めて問われるところです。橋岡も豊富な運動量とタイトなディフェンス、さらには浦和時代に磨いたクロスなど見所の多い選手ですが、ベルギーでの成長を明確に示すことができるかどうか。

町田浩樹は鹿島でフル出場するなど着実に成長を見せており、国内組でもセンターバックには多くの候補がいた中で彼が残ったのも納得ですが、左利きのセンターバックとしてスペシャリストの色が強くフィールド選手はマルチロールが重宝される五輪代表で、大きな武器になりうることを2試合で証明する必要があります。

ボランチは遠藤航が軸になる中でA代表の中山雄太、前回のアルゼンチン戦で確かなインパクトを残した田中碧、そしてセンターバックの候補でもある板倉の競争はかなり厚いものがあります。ただし、消耗の激しいポジションであり、6試合を想定すると最低でも4人は必要であることを考えると、18人には4人とも残る可能性が大いにあります。

2列目は最も読みにくいポジションで、オーバーエイジもいなければミャンマー戦で出番を得た選手もおらず、誰が入っても外れてもおかしくない状況にあります。基本的な配置は4バックの2列目だと右が堂安と三好、食野、中央が久保建英(ヘタフェ )、左が遠藤渓太(ウニオン・ベルリン)、三笘薫(川崎フロンターレ)、相馬勇紀(名古屋グランパス)になります。

スペシャリストとしてみた場合に右は堂安と三好でかなりタイプが異なり、食野はFW色の強い選手なので、周囲との連携面も評価の対象になってきそうです。左は三笘と相馬がこれまで競争関係にありましたが、遠藤渓太が加わることでサバイバルのホットゾーンとも言えます。

クラブでのパフォーマンスにフォーカスすれば三笘は特筆に値しますが、前回のアルゼンチン戦ではむしろ相馬の方が効果的なプレーを見せており、ここに選ばれた以上、もうクラブでどうこうより本大会でどれだけ戦力になれるかと言う基準でしかないので、若干ながら相馬にアドバンテージがあるようにも思います。

ただし、三笘もこの2ヶ月だけでも明確な課題意識を持って取り組んできているように見られ、Jリーグでの結果にも全く満足した様子が無いことから、今回の合宿と2試合でどこまで前回からの違いを示せるか楽しみなポイントです。

遠藤渓太も昨年1月のU-23選手権での惨敗をベンチから見届けており、そこでの苦い経験が成長についながっていることは確かで、期限付きでドイツ1部のクラブに挑戦し、完全移籍を勝ち取った自信をどう代表につなげていけるか問われてきます。

タイプとしてはドリブルだけでなく、オフのアップダウンも強みにしており、3ー4ー2ー1では左ウィングバックで旗手や中山も競争相手になってくる中で、絶対に残したいと思わせるパフォーマンスを2試合で出していけるか注目です。

もちろんプレーが可能かどうかという基準で行けば遠藤渓太と相馬は右もできますし、三笘もトップ下ができる。久保と三好は3ポジション、堂安も所属クラブではインサイドを経験して幅を広げていますが、本職の度合いで言うと久保が少し有利な立場にいるのは確かでしょう。

ただしFW登録の選手でも前田大然(横浜F・マリノス)はミャンマー戦で浅野拓磨が起用されたような形でサイドアタッカーを担うケースもあり、182cmの田川亨介(FC東京)もスピードがあるので、クラブと同じサイドでの起用も考えられる。林大地(サガン鳥栖)は縦の2トップのような形でセカンドトップも選択肢になります。

一方で上田綺世(鹿島アントラーズ)は1トップのスペシャリストとして想定されますが、フィニッシュワークだけでなくポストプレーでも頼りになる存在で、セットプレーの高さを加えられる存在でもあるので、今回のメンバーでは希少価値があります。もちろん田川が合宿でより高い評価を得れる可能性もあります。

堂安もディフェンスを背負うポストプレーなどを求めなければ、FW起用が可能な選手なので、FWとMFの2列目は完全に切り離して評価されるものでもなく、18人と言う限られた枠の中で前めの4ポジション、さらには3ー4ー2ー1を使う場合の1トップ2シャドーを想定して、メインとオプションをどう揃えられるかが最終選考の鍵になります。

90%以上は今回の27人から本大会の18人が決まることになりますが、怪我なく健全な競争の中で、森保監督を最後まで悩ませる競争に期待したいと思います。

6月3日 vs A代表の布陣予想

■U−24(4−2−3−1の場合)

----------------上田------------------

遠藤渓-------久保-------------三好

---------中山------遠藤航-----------

古賀----板倉------吉田-------酒井

----------------大迫------------------

監督:横内昭展

■U−24(3−4−2−1の場合)

----------------上田------------------

---------久保---------三好-----------

遠藤渓--中山------遠藤航----菅原

-------板倉----吉田-----酒井-------

-----------------大迫------------------

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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