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”オール欧州組”の日本代表とは正反対。なぜ”オール国内組”の韓国代表になったのか。

河治良幸スポーツジャーナリスト
昨年のE-1選手権でも活躍したナ・サンホはFC東京から城南FCに期限付き移籍中(写真:ロイター/アフロ)

日本代表は現在オランダのユトレヒトにて”オール欧州組”で代表活動を行っており、先日はカメルーンとスコアレスドローに終わりました。13日にはコートジボワールとの国際親善試合が組まれています。

”オール欧州組”になった理由は新型コロナウイルスの影響で、帰国後に14日間の自主隔離という日本政府のルールがあり、国際Aマッチデーの期間を大きく超えて所属チームでの活動を妨げてしまうこと。さらに森保一監督によれば、国際Aマッチデーの期間にもJリーグの試合が組み込まれていることも総合的な判断材料になったということです。

森保監督は招集できないことを承知で、複数の国内組を想定メンバーとしてリストアップしていたことを明かしており、純粋にフルメンバーを選ぶ場合に”オール欧州組”になる可能性は低そうですが、何れにしても欧州組のみで25人のメンバー(そこから岡崎慎司が怪我、長友佑都が体調不良により辞退)が組めるという事実が日本サッカーの1つの成長を示しているのは確かです。

その一方で、最終予選の強力なライバルになりうるパウロ・ベント監督率いる韓国代表は「2020ハナ銀行カップ」の冠で”オール国内組”で、東京五輪に出場が決まっている、キム・ハクボム監督率いるU-23代表と”兄弟対決”を行い、2−2の引き分けとなりました。こうした試合が実現したのは日本と対照的な事情があるようです。

韓国A代表

GK

チョ・ヒョヌ(蔚山現代)

ク・ソンユン(大邱FC)

イ・チャングン(尚州尚武)

DF

チョン・スンヒョン(蔚山現代)

クォン・ギョンウォン(尚州尚武)

キム・ヨンビン(江原FC)

ウォン・ドゥジェ(蔚山現代)

イ・ジュヨン(全北現代)

ホン・チョル(蔚山現代)

キム・テファン(蔚山現代)

キム・ムンファン(釜山アイパーク)

MF

ソン・ジュンホ(全北現代)

イ・ヨンジェ(江原FC)

チュ・セジョン(FCソウル)

ハン・スンギュ(FCソウル)

ユン・ビッカラム(蔚山現代)

イ・ドンギョン(蔚山現代)

イ・チョンヨン(蔚山現代)

キム・インソン(蔚山現代)

イ・ドンジュン(釜山アイパーク)

ナ・サンホ(城南FC)

FW

イ・ジョンヒョプ(釜山アイパーク)

キム・ジヒョン(江原FC)

U-23韓国代表

GK:ソン・ボムグン(全北現代)

アン・チャンギ(水原三星)

イ・グァンヨン(江原FC)

DF

カン・ユンソン(済州ユナイテッド)

キム・ジェウ(大邱FC)

キム・ジンヤ(FCソウル)

キム・テヒョン(ソウルイーランドFC)

ユン・ジョンギュ(FCソウル)

イ・サンミン(ソウルイーランドFC)

イ・ユヒョン(全南ドラゴンズ)

チョン・テウク(大邱FC)

MF

キム・ドンヒョン(城南FC)

メン・ソンウン(FC安養)

イ・スンモ(浦項スティーラース)

チョン・スンウォン(大邱FC)

ハン・ジョンウ(水原FC)

ハン・チャンヒ(FCソウル)

FW

キム・デウォン(大邱FC)

ソン・ミンギュ(浦項スティーラース)

オム・ウォンサン(光州FC)

オ・セフン(尚州尚武)

チョ・ギュソン(全北現代)

チョ・ヨンウク(FCソウル)

こう見ると元福岡のウォン・ドゥジェやFC東京から城南FCに期限付き移籍中のナ・サンホなど、A代表にはJリーグにゆかりのある選手が多いです。

韓国代表は国内組に中国、日本でプレーしている選手を加えた昨年12月のEAFF E-1を最後に代表活動ができていませんでした。そのためパウロ・ベント監督が現在どういうベストメンバーを想定しているかは不明ですが、これまでの実績から欧州、中東、国内組を含めた東アジアでプレーしている選手が多様に混成したメンバーが考えられます。

”欧州組”をあげると、次の選手たちが韓国代表の有力候補になります。

MF

イ・ガンイン(スペイン/バレンシア)

クォン・チャンフン(ドイツ/フライブルク)

チョン・ウヨン(ドイツ/フライブルク)

ファン・インボム(ロシア/ルビン・カザン)

イ・ジェソン(ドイツ2部/ホルシュタイン・キール)

イ・スンウ(ベルギー/シント=トロイデン)

ペク・スンホ(ドイツ2部/ダルムシュタット)

FW

ソン・フンミン(イングランド/トッテナム)

チ・ドンウォン(ドイツ/マインツ)

ファン・ウィジョ(フランス/ボルドー)

ファン・ヒチャン(ドイツ/ライプツィヒ)

こう見るとFWとMFに偏っており、欧州組で国際試合を組むことは不可能です。仮に中東組のチョン・ウヨン(カタール/アル・サッド)やキム・ジンス(アル・ナスル)を呼べてもGKとディフェンスラインが足りません。

注:チョン・ウヨン(ライブルク)は鄭優営、チョン・ウヨン(アル・サッド)は鄭又榮。京都、磐田、神戸でプレーしたのは後者

キム・スンギュ(柏レイソル)やキム・ジンヒョン(セレッソ大阪)、兵役の準備で札幌から大邱FCに移籍したク・ソンユンなど、Jリーグで活躍している韓国人GKや韓国人DFのレベルを見れば、リーグやクラブの”格”に拘らなければ欧州挑戦もできるはずですが、そこの感覚は日本と韓国で違っているようにも思います。

そうした事情の中で、韓国は6月という早い段階でKリーグを再開することができたためにスケジュールがJリーグほど過密日程になっておらず、国際Aマッチデーの期間にKリーグも組み込まれていないために、国内組だけでA代表とU-23の試合を行うことができたのは幸いと言えるでしょう。

韓国の場合は欧州組、中東組、Jリーグや中国超級リーグの所属選手を加えたフルメンバーでも、チュ・セジョンやホン・ジョンホと言った主力クラスをはじめ、おそらく半数弱が国内組になることを考えても、五輪代表の強化とそこからA代表に入りうるタレントをパウロ・ベント監督がチェックしておく意味でも、両世代の競争意識を刺激する意味でも、有意義な試合であったことは確かでしょう。

来年3月に再開される予定のカタールW杯アジア二次予選は日本が4連勝で突破が見えてきているのに対して、韓国はH組で2勝2分、トルクメニスタンに続く2位でレバノン、北朝鮮と勝ち点が並ぶ、予断を許さない状況になっています。来月の国際Aマッチデーがどう活用されるのかは不明ですが、この機会をどう生かして予選につなげていくのか注目です。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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