長友佑都はキルギス戦で本当に低調だったのか?厳しく評価する前に認識したい戦術メカニズムの本質

日本代表はアウェーでキルギスと対戦し、苦しみながらも2-0の勝利をおさめた。この試合で取りざたされたのが歴代2位となる122試合目の出場となった長友佑都のパフォーマンスだ。

日本は立ち上がりからアウェーの雰囲気と劣悪なピッチに苦しみ、ビルドアップのミスが相次ぎ、ロングボールになんとか活路を見出そうとしても、スピードタイプの永井謙佑にボールをおさめることができず、頼みの伊東純也の仕掛けも止められるシーンが目立った。

その攻撃以上にうまくハマらなかったのがディフェンスだ。従来の4ー1ー4ー1ではなく、3バック気味の布陣で来たキルギスのビルドアップに対して、前からのチェイシングを得意とする永井もなかなかコースを限定しきれず、3バック左のヴァレリー・キチンからサイドチェンジのロングパスを何本も通され、後手を踏む展開となった。

そこでフォーカスされたのが左サイドバックの長友佑都だった。この日のキルギスは3ー1ー4ー1ー1とも言うべき特殊なフォーメーション(3ー3ー3ー1と表記しているメディアもある)で、1トップのムルザエフに俊敏なアリクロフがシャドー的に絡む形を取り、さらに運動量豊富なインサイドハーフのシュクロフとムサベコフが両脇から飛び出しを狙う構えを見せていた。

そうなると4ー2ー3ー1の日本は中央がどうしても危なくなるため、サイドバックの長友と酒井宏樹がインサイドに絞りながら、ワイドに展開されたらスライドして対応して行く形を取らざるを得なくなる。右の酒井は同サイドを狙われても縦に組み立てて来るため、外側に張って構えれば11番のザギンバエフに十分な準備でマッチアップできていた。

一方の長友側にはキチンから高精度の左足で対角線にボールが入ってくるため、相手ウィングバックのマイヤーにボールが入った時点で長友のスライドが間に合っておらず、どうしても後手の対応を強いられてしまう。その現象から前半だけでも3度の危ないシーンを作られた。ただし、長友自身はマイヤーに対して簡単に破られることなく付いたが、十分な間合いからインサイドに仕掛けられるので、どうしてもゴール前が脅かされるような状況になる。

そうした状況で日本の課題が出たのが吉田麻也の対応で、マイヤーのカットインに対し、吉田はカバーリングに入ろうとするため、長友が中に流れて空いたワイドスペースを他の選手に狙われてしまう。前半6分のシーンはマイアーに連動したアリクロフがペナルティエリア内で完全にフリーとなったが、マイアーはムルザエフへのスルーパスを選択。もう一人のセンターバックである植田直通がタイトにマークしてゴール前でクリアできたが、相手の選択次第でいきなり失点してもおかしくなかった。

話題を長友に戻すと、確かに184cmのサイズを誇るマイヤーに対人の部分でハンディはあったものの、体格さをそのまま生かされたというよりは、システム上のミスマッチをキチンの高精度のキックによって突かれて後手を踏んだ結果のピンチだった。もちろん絶好調の長友であれば、そうした不利も抜群の走力で補ってしまうかもしれないが、度重なる好セーブで無失点勝利の立役者となったGK権田修一はこう語っている。

「左のストッパーの6番ですか、彼へのサイドチェンジはたぶんキルギスの形なんだろうなと。あれで入れてそもそも前が2枚、トップ下が2枚いて、両サイドにいたら、普通に考えてもそこは数的にサイドバックは最初絞んなきゃいけない。佑都君が最初絞んなきゃいけないのは必然的なので、そういう意味では難しかったです。そこから佑都君は全部遅れての(サイドの)対応なので、あれはメチャクチャ難しいと思う。そこから抜かれずにクロスを上げられるシーンは多少はありましたけど、それでも完全に抜かれずにコースを限定しながらだったし、そういうことをね、あれだけ不利な状況でできるといいうのは、佑都君は122試合、それだけ出てるだけのことはやっぱりあります」

キルギス戦で起きた現象から長友だけにフォーカスして問題を語るのは簡単だが、戦術的なメカニズムをベースにした上でなければ、かなり本質から外れてしまう。今回の問題は森保監督も含めたチームとして共有して、より強い相手が似たような狙いで来た時に、例えば前からのプレスを危険な選手に限定するのか、立ち位置や距離感を調整するのか、はっきり3バックに変更して対応の枚数を揃えるのかなど。何れにしても、しっかりと対処できるように準備しておく必要がある。

たしかに長友の”後継者問題”というのは急務だが、それは”長友不要論”としてではなく、彼に何かあった時にレベルが落ちないための選手層のアップや、試合によっては対角線のクロスに強い選手を起用するなど、より戦術的な選択肢を広げて行くための重要なテーマと言えるだろう。