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鹿島のアジア制覇への重要なピース。初のACLベスト4進出を右サイドから支えた内田篤人の勝利ビジョン。

河治良幸スポーツジャーナリスト
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

ACL準々決勝。もともと開催予定だった天津の代替地であるマカオで行われたアウェーのの2NDレグで鹿島アントラーズは天津健権(中国)に3−0で勝利し、1STレグ(ホームで2−0勝利)との合計スコア5−0でベスト4進出を決めた。

鹿島にとっては初のベスト4だが「昔のチームのレベルと比べたら、俺ら今の11人がめちゃくちゃレベル高いかというとそういうわけでもないし、タイミングとかね」と語るのは内田篤人。今シーズンを前にドイツから帰還した右サイドバックは「そんな簡単な相手ではないし、2−0はぜんぜん向こうもチャンスあるし、簡単ではないけど、先制点を取れて2点目を取れたら、ああいう結果になる」と振り返る通る。

非常に難しい立ち上がりに逆サイドをパトに突破されクロスを上げられたが、内側に絞ってゴール前でヘッドクリア。サイドから守備のバランスを取りながらセンターバックを助け、攻めては右サイドから3バックの背後をサイドハーフの遠藤康に狙わせ、時に大外を回ってクロスを上げるなど、巧妙に相手のディフェンスに揺さぶりをかけた。そして先制点につながったCKを獲得したのは内田の縦パスだった。左サイドから安部裕葵が展開したボールを受けると前の遠藤に素早く縦パス。ゴールの脇で惜しくもディフェンスに阻まれたが、そこで得たCKから前半13分にセルジーニョが貴重なアウェーゴールを決めた。

「向こうは多分3バックだったので、同サイドでヤス(遠藤)が流れたり、自分が上がらずに引いておけばあそこ空くので、そこにセルジだったりユウマ、ヤスが流れて、ポイント1つ作ろうかなというのは思ってましたし、早い流れでボールをあげればよかったんですけど、真ん中3枚に対してユウマ1枚というのは厳しいし、向こうはカウンターを狙っていたと思うので、うまくサイドをつきながら、セットプレーに繋がったり、2点目につながったりですね」

その2点目は前半27分。内田の鋭いドリブルからのクロスに、鈴木優磨が空けたコースに飛び込んだ安部が合わた形だった。「マイナスが空いていたので。本当は(鈴木)ユウマとかセルジーニョとか前なのでいるんですけど、(安部)ヒロキがうまく前の空いたところに入ってくれた」というクロスはまさにチームのベスト4をほぼ決定づけるアシストとなったが、内田の真骨頂が発揮されたのがその前の時間帯にあった大きなピンチ。自らがしのいだセカンドボールから体勢を立て直すと、相手エースのパトが放ったグラウンダーシュートをクリアした。

「キーパーが出たら空いてるコースに入レバボールは飛んでくるので、パトなので絶対に枠に飛んでくると思ったし、まあいつも通りですとさらりと言ってのけるが、厳しい局面でゴール前をカバーしているのはサイドバックでありながら危機察知能力に優れる内田ならではだ。元ブラジル代表のパトについては強く警戒していた。

「一番前でボールを持てなくても2列目とか1.5列目でパトが前を向いたらドリブルでスピード違うものがありますし、技術はもちろん彼が中心だったので、今回こっちにはあんまり流れてこなかったですけど、ああいう仕事ができる選手というのはチームみんなで、しっかり受け渡しながらというのは意識はしていました」

「ドリブルで突っかかったりとか、マークの受け渡し一人剥がされた時にズルズルって行かれるのは前半のうちに自分たちも危ないなと思ったし、それからズドンというのもあるし、9番(ヤン・シュ)とのコンビネーションがよかった」と語る。ただ、サイドで対峙したワン・ジーやワン・シャオロンといった選手は内田から言わせるとそれほど脅威ではなく、ある程度中央のカバーリングを意識できたことも大きかった様だ。

「本当はもう2枚外国人の助っ人(ベルギー代表のアクセル・ヴィッツェルが今夏ドルトムントに移籍。アンソニー・モデストが移籍騒動により不参加)がいるからね。そこがいたらまた違うんだろうけど。いやでもチームとして自分がいたときも壁で跳ね返されましたし、そこは1つまた次のラウンドに進めるというのは素晴らしいこと」

ただ、次に戦う韓国のチーム(翌日の試合で水原三星が2試合トータル3−3、PK戦で同じ韓国勢の全北現代を破った)は勝負におけるタフさがあり、Jリーグでは勝者のメンタルティが強いと言われる鹿島がこれまで跳ね返されてきた要因でもある。気をつけないといけないところを聞くと内田はこう回答した。

「韓国のが根性があるなと思います。チームとしてもキリッとしてるし、1点とっても跳ね返してくるタフさが韓国にはあるので、でもいまうちには通訳1人(キム・ヨンハ氏)、2人の韓国人(クォン・スンテとチョン・スンヒョン)がいるので、絶対勝たせてあげたいなと思うし、そこはやっぱりみんなで意識しないといけないことだと思います」

内田はシャルケで活躍していた数年前と同じく、リーグ戦とカップ戦の両方でより継続的に出場して活躍することを目指しているが、これまで果たしていないアジア制覇を果たすための強力なピースとして、ここからの戦いでも頼れる存在になって行きそうだ。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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