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世界8強に立ちはだかる強大な敵。鉄壁猛打のベネズエラにU-20日本代表はどう挑むべきか?

河治良幸スポーツジャーナリスト
日本が挑む相手は複数のA代表戦士を擁するベネズエラの”黄金世代”だ。(写真:田村翔/アフロスポーツ)

U-20W杯で決勝トーナメントの進出した”内山ジャパン”はベスト8をかけベネズエラと対戦する。

【日本】4-4-2

GK:1小島亨介

DF:2藤谷壮、5冨安健洋、3中山雄太、15杉岡大暉

MF:7堂安律、16原輝綺、17市丸瑞希、8三好康児

FW:18高木彰人、13岩崎悠人

【ベネズエラ】4-2-3-1

GK:1ウィルケル・ファリニェス

DF:20ロナルド・エルナンデス、4ナウエル・フェラレシ、2ウィリアムズ・ベラスケス、5ホセ・エルナンデス

DMF:8ヤンヘル・エレーラ、16ロナルド・ルセナ

OMF:19セルヒオ・コルドバ、10ジェフェルソン・ソテルド、7アダルベルト・ペニャランダ

FW:9ロナルド・ペーニャ

A代表のラファエル・ドゥダメル監督が兼任で率いるベネズエラはGKウィルケル・ファリニェス、キャプテンのMFヤンヘル・エレーラ、トップ下のジェフェルソン・ソテルド、左ウィングのアダルベルト・ペニャランダの4人がA代表に名を連ねる、まさしくベネズエラの”黄金世代”だ。ここまで3連勝、10得点無失点の強さを誇る相手にどう挑むべきか。

ベネズエラの強みは何と言っても[4−2−3−1]の前線に君臨する”ファンタスティック4”だ。ここまで4得点の大型ウィングのセルヒオ・コルドバ、158cmの小兵ながらスピード、テクニック、パワーを兼ね備えるソテルド、スペイン1部マラガのトップチームでプレーする金髪の怪物ペニャランダ、そして1トップに張るスペイン1部ラス・パルマス所属のロナルド・ペーニャ。この4人が10得点のうち8得点に絡んでおり、日本の守備陣にとって脅威的な存在になることは間違いない。

シンプルな組み立てから4人にボールを預け、縦に攻め切るスタイルであるため、中山雄太と冨安健洋のCBコンビはもちろん、左右SBにも粘り強く縦のボールを跳ね返し、ボールを持たれてもしつこく付いてワンツーやミドルシュートに持ち込ませない対応が要求される。内山篤監督が俊足で守備に定評のある藤谷壮と長身でCBもこなす杉岡大暉をスタメンに起用したのはそうした対策のためだろう。

ただ、大柄だがスピードもあるコルドバ、ペーニャ、ペニャランダの3人はチャンスと見れば猛然とDFラインの裏を狙ってくるため、GKの小島亨介にもこれまで以上の幅広いゴールキーピングが求められる。もちろん積極的なミドルシュートに対する準備も必要だ。さらには相手ボランチのタイミングの良い飛び出しも要注意であり、中盤に構える原輝綺と市丸瑞希はソテルドの流動的な動きをチェックするだけでなく、エレーラとルセナの動きにも注意を払っておきたい。

ここまで無失点のディフェンスは抜群の身体能力を誇る守護神ベラスケス、屈強なナウエル・フェラレシとクレバーな対応が光るウィリアムス・ベラスケスのCBコンビを軸に堅実な守備ラインを敷いて、ボランチのエレーラとロナルド・ルセナと2列目の3人が挟み込む形で、果敢にボールを奪いにくる。裏には攻めにくく、中盤ではつなぎにくいという堅守に日本は立ち向かっていかなければならない。

組み立てで大事なのは中盤で余計な手数をかけないこと。フィード力だけでなくボールキープにも優れる左利きの中山と幅広いゲームメイクから決定的な縦パスを狙える市丸がキーパーソンだが、左右のSBをうまく使うことでフィジカルの強さに勝るベネズエラのプレスを回避していきたい。最大の得点源だったFW小川航基が怪我で離脱した状況で、ここまで3得点のエース堂安律にかかる期待はますます高まるが、彼に頼り過ぎると相手のディフェンスは分散されない。

三好康児と杉岡の左コンビで起点を作りながら、豊富な運動量を誇る岩崎悠人と本職の前線に抜擢された高木彰人の2トップが機動的にボールを引き出すことで、右サイドハーフを根城とする堂安がバイタルエリアで左利きの特性を発揮できるシチュエーションを作り出したい。その市で堂安に相手の意識が集まれば、周囲で岩崎や高木が空いてくることも予想される。守備バランスのリスクは生じるが、市丸の攻め上がりや杉岡の意外性のあるオーバーラップも得点チャンスを拡大させるオプションになりうる。

一発勝負の決勝トーナメントだけに理想は前半のうちに先制点を奪い、相手を焦られることだが、逆に早い時間の失点は禁物だ。イタリア戦の様に先制されても落ちついてゲームを進めれば同点、逆転のチャンスも生まれるはずだが、できるだけ同点以上で後半の勝負に持ち込みたい。安定した戦いぶりが目に付くベネズエラも後半はさすがにインテンシティーが落ちる。一方で日本は90分を通した体力に自信を持っており、久保建英や遠藤渓太という少ない時間で何かできる選手もベンチにいる。同点で延長戦になればU-19アジア選手権の経験も生きてくるはずだ。

ここまでの3試合でも着実に成長を見せる”内山ジャパン”の若い選手たちが、この強大な相手にどう挑み、ベスト8という新たな景色に辿り着くのか。期待して見守りたい。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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