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長谷部キャプテンの思い背負い。因縁のUAE戦へ

河治良幸スポーツジャーナリスト

最終予選はついに折り返しの6試合目を迎える。相手はホームの初戦で敗れたUAEだ。振り返ればアギーレ前監督が率いていたアジア杯の準々決勝でPK戦の末に苦杯をなめており、因縁の相手とアウェーでの対戦になる。「2戦で2敗している相手なので負けは許されない」(川島永嗣)試合となるが、大きなショックは長谷部誠キャプテンの離脱だろう。

クラブの公式戦でクリアの際にゴールポストに直撃し、左脛6針をぬう怪我をしたが、深刻だったのは同時に強打した右脚の膝だった。その後、予定通り代表チームに合流したことに不安や批判の声もあがったが、長谷部はクラブの了解を得て「代表チームのドクターにも診てもらって、監督と話をしてチームを離れることを決めました」と語り、2日目で離脱。日本で彼をよく知るドクターの“サードオピニオン”を待って手術の判断をすることになった。

「チームに対しては全くネガティブな感覚は持っていなくて、とにかく100%、120%代表チームを信頼している」と長谷部は思いを託したが、心身両面で頼れるキャプテンを欠いて大一番に臨むことがどちらの方向に行くかは選手の気持ちの持ち様だろう。戦力的には残されたボランチの奮起が期待されるが“ハリルジャパン”初招集の高萩洋次郎はチームの雰囲気について「暗く見えます?」とあっけらかんとした表情で答えるなど、1年10ヶ月ぶりの招集となった今野泰幸とともに、逆にネガティブな空気に影響されない頼もしさがある。常連の本田も「影響はないと思わないとまずダメですね」と語るが、それは結局ピッチで示していくしかないところだ。

現地は日中で30度を大きく超え、試合時間の夕方から夜にかけても28度前後あるが、高萩は「気持ちいいぐらい。このぐらいだったら大丈夫」と語る。他の選手たちも練習中はそこまでつらい様子も無い。ただ、司令塔オマル・アブドゥラフマンのホームタウンでもあるアル・アインで“完全アウェー”になることは間違いなく、UAEが試合会場のアル・アイン・ハッツアビン・スタジアムで非公開練習を続けており、予選突破を狙う直接のライバルを相手に臨戦態勢を整えている。オマルの兄であり、アジア杯でアシストを記録したMFアメル・アブドゥラフマンの欠場が発表されたが、オマルをはじめ油断非ない選手が揃っており、厳しい戦いになることは間違いない。前回の対戦はベンチで見守った山口も「ホームでやられているのはFWの選手」と2得点のハリルも警戒するべき相手としてあげる。

勝ち点1差に4カ国がひしめく混線で、その直接対決となる試合。因縁の相手でもあるが、アウェーで叩くことができればホームのタイ戦に向けても大きな弾みになり、また長谷部キャプテンの不在を乗り越えることで得るものも小さくないはず。いろんな意味で良い流れを呼び込める試合となるかどうか注目される。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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