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Jリーガーにとって大きなアピールのチャンスとなる東アジアカップ。23人のメンバーは?

河治良幸スポーツジャーナリスト

8月に中国の武漢で行われる東アジアカップに向けた男子・日本代表のメンバーは今月23日に発表されます。

それに先立ち先日には予備登録の50人が発表された。今回は国際Aマッチデーではなく代表チームに拘束力が無いこともあり、日本代表は欧州組を招集せず、主にJリーグに所属するメンバーで大会に臨むことになります。

言い換えればJリーグの選手にとってはなかなか無いチャンスであり、Jリーグの各クラブを応援するサポーターが普段より盛り上がるのは当然だろう。そこで予備登録の50人をベースに、メンバー選考のポイントをポジション別で展望してみました。

構成協力:日本代表について議論するページ

※予想メンバー付の記事はこちら

「河治良幸の東アジアカップメンバー大予想!」

【GK】

東口 順昭(ガンバ大阪)

西川 周作(浦和レッズ)

六反 勇治(ベガルタ仙台)

林 彰洋(サガン鳥栖)

権田 修一(FC東京)

櫛引 政敏(清水エスパルス)

予備登録には6人が選ばれましたが、林は残念ながら柏レイソル戦で右太ももを負傷し全治4週間。本戦の参加は事実上、不可能になってしまいました。

サイズの割にカバーリングの範囲が広く、個人としての総合能力はもしかしたら日本のGKでナンバー1かもしれません。ハリルホジッチ監督もそうですが、アギーレ前監督の時から代表チームに関わっているリカルドGKコーチに高く評価されていると思います。非常に残念ですが、ここは焦らず治療とリハビリに専念して、また秋以降に向けてアピールしていってほしいです。

これまでは4人が選ばれてきたので、川島永嗣が不参加となるものの西川、東口、権田という常連の3人が順当に選ばれるのではないでしょうか。権田は初陣のチュニジア戦で起用されましたが、西川と東口はここまで出場機会が無いので、ここは願ってもないチャンスです。

大会である以上、優勝を狙うことにはなりますが、多くの選手に試合を経験させ、同時に実力を見極めることの優先順位が高いですから、ひょっとしたら3人がそれぞれの試合で起用されるかもしれません。

もちろん1人が固定してチャンスを与えられる可能性もあるので、練習から切磋琢磨してほしいです。東口は1stステージで守備陣と協力しながらリーグ最少失点を支えましたが、2ndステージは3試合で6失点。もちろん彼だけの責任ではありませんが、気を引き締めて7月の残り3試合を戦い、代表に合流してほしいです。

【DF】

水本 裕貴(サンフレッチェ広島)

丹羽 大輝(ガンバ大阪)

武岡 優斗(川崎フロンターレ)

槙野 智章(浦和レッズ)

森重 真人(FC東京)

太田 宏介(FC東京)

米倉 恒貴(カンバ大阪)

藤春 廣輝(ガンバ大阪)

塩谷 司(サンフレッチェ広島)

車屋 紳太郎(川崎フロンターレ)

大武 峻(名古屋グランパス)

昌子 源(鹿島アントラーズ)

松原 健(アルビレックス新潟)

山中 亮輔(柏レイソル)

川口 尚紀(アルビレックス新潟)

岩波 拓也(ヴィッセル神戸)

植田 直通(鹿島アントラーズ)

大きくはSBとCBに分けることができますが、丹羽や塩谷の様に本職がCBでありながらSBを高いレベルでこなせる選手もいます。武岡も両方できますね。将来的には3バックがテストされる可能性もありますが、今回は4バックをベースに見ていきましょう。

アギーレ時代にも招集された経験がある松原は期待の右SBですが、4月下旬に右膝を負傷して全治5が月と発表されていました。若いので当初の見込みより回復が早いかもしれませんが、クラブで復帰していませんし、正式メンバーに入るのはそもそもクラブの希望にそぐわないかもしれません。

ただ、ラージファミリーに入っていることは明らかで、右SBは第一人者である欧州組の内田篤人が今後いつ、どこで合流できるかも分かりませんし、W酒井がいるとはいえ、近い将来に向けて選手層を厚くしておきたいポジションです。彼にはリオ五輪の予選もあるので、しっかり治して帰ってきてほしいです。

彼の同僚でもある川口は個人的に2011年のU-17W杯から見ている選手で期待したいですが、米倉もSBとしては技術が高く、しかも90分ハードワークできるので、戦術的な理解度も高い選手ですし、うまくアピールできればメンバー入りはもちろん、大会でブレイクする可能性もあります。

左は太田、藤春、車屋、山中ですか。それぞれ特徴のある選手ですが、山中の名前を見て「あれ、輪湖直樹じゃないの?」と思ったのが率直なところです。年齢は25歳ですが、若い時に大きな怪我をしたことが出世を遅らせた事情もある。とにかく戦える選手なので、欧州組がいない今回こそ試してほしかったと思います。

車屋のセンスの高さは言うまでもないですが、2ndステージに入ってチーム事情でCBでプレーしているのは気になるところです。たぶん左のスペシャリストは2人なので、現状の評価では太田と藤春なのかなと予想できます。太田は山形戦での負傷が気になりますが、現時点では軽症と発表されているので有力候補としておきます。

CBはこの時点で大量に入っていますが、ここまでも森重と槙野が吉田のパートナーとして良い競争をしており、今回はその2人がメインになるでしょうかね。ただ、丹羽の身体能力に頼らない緻密なディフェンスは見事ですし、もちろん必要な時に体を張れるので、明るさも含めて指揮官やスタッフに高く買われている部分はあると思います。右SBもできますしね。

前にガツッと行く姿勢も求められるので、塩谷の存在も軽視できない部分はありますが6月に負傷した右足が気になるところです。水本のスピードや機動力、そして状況判断の能力も大きな武器になります。1対1の能力という意味では川崎の武岡も非常に面白い存在ですが、鳥栖戦で負傷し、柏戦も欠場を強いられたので23日に発表される正式メンバーまでは難しいでしょうか。

大卒1年目ながら急上昇中の大武にも期待はしたのですが、ここまでJリーグで4試合しか出ていないので、もう少し様子を見て目覚ましい成長を見せたら二次予選の途中で招集しても良いのかなとは思います。ポテンシャルは間違いないので大抜擢されても個人的には文句ないですけどね。

【MF】

今野 泰幸(ガンバ大阪)

柴崎 晃誠(サンフレッチェ広島)

大谷 秀和(柏レイソル)

青山 敏弘(サンフレッチェ広島)

高萩 洋次郎(FCソウル/韓国)

藤田 直之(サガン鳥栖)

柏木 陽介(浦和レッズ)

遠藤 康(鹿島アントラーズ)

山口 蛍(セレッソ大阪)

米本 拓司(FC東京)

森岡 亮太(ヴィッセル神戸)

谷口 彰悟(川崎フロンターレ)

柴崎 岳(鹿島アントラーズ)

大森 晃太郎(ガンバ大阪)

遠藤 航(湘南ベルマーレ)

喜田 拓也(横浜F・マリノス)

嬉しいのは予備登録とはいえ大谷や藤田といった巷では実力を評価されながら、ここまで日本代表に縁の無かった選手が入ったことですね。一方でザックジャパンの3次予選までの主力だった柏木の名前もあります。当時はメンタル面の課題を感じることが多かったですが、そこは浦和で大きく成長していると思います。

ここは基本的に[4−2−3−1]のボランチとトップ下で大別できますが、[4−3−3]でアンカーに配置される選手とインサイドハーフになる選手でも分けることができます。

ボランチ(アンカー):今野、山口、谷口、遠藤航、喜田

ボランチ(インサイドハーフ):柴崎岳、大谷、青山、藤田、柏木、米本

トップ下(インサイドハーフ):柴崎晃、高萩、遠藤康、大森、森岡

米本はアンカー、山口や喜田はインサイドハーフもできると思いますし、柴崎晃や高萩は求められればボランチもこなせます。大森は特徴的にウィングも想定しているかもしれませんが、中盤の3人にはハードワークをベースとした攻守の切り替え、ディフェンスの裏や1つ飛ばしたスペースに正確なパスを出せる技術と意識を問われてきます。

U-22代表ですでに絶対的な存在であり、湘南で攻守に存在感を出している遠藤航はすでにA代表で主力を狙っていくべき器だと思います。同じくU-22の喜田もボール奪取や速いパスなど急成長をしていますが、19日のG大阪戦を欠場したのはアピールの部分で少し残念です。

柴崎岳はもちろん無理してほしくないですが、今回は本来の主力であるキャプテンの長谷部誠もいませんし、8月2日の北朝鮮戦にコンディションを持っていける見込みであれば選ばれるでしょうね。

トップ下は香川真司や清武弘嗣、またイラク戦と二次予選のシンガポール戦で途中からこのポジションに入った原口元気など欧州組がいないので、フレッシュなメンバーが入ることになります。

オーストラリアのウェスタン・シドニーから韓国のFCソウルに移籍した高萩は広島の時よりボディコンタクトの意識が上がっていますし、シンプルに正確なパスを出しながら、最後のところで持ち前のセンスを発揮するスタイルに切り替わっている。3月の選考ではバックアップメンバーに止まりましたが、ハリルホジッチ監督が名指してあげていたぐらいなので、アジア予選でキーマンになりうる戦力として、今回は良いテストになるのかなと思います。

遠藤康は5月のミニキャンプで目立った動きをしていましたし、柴崎晃はもともと司令塔色の強い選手ですが、広島で新境地を開拓した印象があります。森岡はタイプにしては恵まれたサイズを活かすボールキープと絶妙のスルーパス、大森は個人の打開力もあり非常に面白いですが、常に頼りになる存在としては高萩が第一の候補ではないかと予想します。

【FW】

大久保 嘉人(川崎フロンターレ)

豊田 陽平(サガン鳥栖)

興梠 慎三(浦和レッズ)

小林 悠(川崎フロンターレ)

武藤 雄樹(浦和レッズ)

倉田 秋(ガンバ大阪)

永井 謙佑(名古屋グランパス)

川又 堅碁(名古屋グランパス)

宇佐美 貴史(ガンバ大阪)

杉本 健勇(川崎フロンターレ)

浅野 拓磨(サンフレッチェ広島)

ポジションは左右のウィングとCFに分けられますが、3ポジション全てこなせるマルチな選手も含まれています。FWと言っても11人ともタイプが多様で、どういう選出になっても、Jリーグのファンなら組合わせを想像するだけでもご飯が三杯は食べられるでしょう。

その中でもやはり浦和の武藤雄は期待ですし、これまでの代表にあまりいないタイプなので、今回ブレイクすれば例えば前回のシンガポール戦の様な状況になっても非常に有効です。倉田はもう少しユーティリティーというかチャンスメーカー寄りの選手で、実際に選ばれればオプションとしてトップ下も試されるかもしれません。

ここまで日本代表では怪我に泣かされてきた小林悠にも期待したいですが、万全な状態には間に合わないかもしれないですね。同じ様にDFラインの裏を狙えるタイプでは浅野がJリーグで存在感を見せていますし、U-22のコスタリカ戦ではCFでいい働きをしたので、3試合を考えた場合に色々な起用法が想定できます。

ケガから復帰して調子を上げている興梠にも期待していますが、やはりJリーグで宇佐美と得点王争いをしている豊田と大久保は選ばれてほしいですね。今回は岡崎やドイツに移籍した武藤嘉紀がいないこともあり、得点の部分で頼れる存在がほしいところです。もちろん宇佐美は主力候補ですが、FW陣には前線で協力関係を築きながらもゴール数を争うぐらいのライバル心を持ってプレーしてほしいです。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

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