Yahoo!ニュース

負傷離脱からの代表復帰。アギーレ監督が高く評価する小林悠の実力とは?

河治良幸スポーツジャーナリスト

アジアカップに向けたメンバー発表に向け、大きな注目を集めていたのがFWの選考だ。メディアやファンからも何人かの名前があがっていたが結局、新しい選手は入らなかった。

その中で多くの人に少なからず驚きをもたらしたのが小林悠(川崎フロンターレ)のエントリーだ。11月の合宿中に香川真司と接触して左膝を負傷し、そのまま離脱。連勝を飾った2試合に出ることはなく、川崎でも何とか最終節に途中出場した状況だった。それでもアギーレ監督がこのアタッカーを招集したのはなぜなのか。

小林がアギーレジャパンに初めて選ばれたのは10月。ザッケローニ前監督が率いていた4月の国内合宿でもメンバーに入ったが、この時はけがを理由に辞退しており、クラブで結果を出すことに集中しながらもチャンスを待っていたという。そしてデビュー戦となった新潟でのジャマイカ戦は途中出場でゴールこそならなかったものの、右ウィングから精力的な動きでゴール前に絡み、アギーレ監督の評価を高めた。

その小林に関して、アギーレ監督は選出の理由を得点力に加えて「性格が良さそうだから直接見たいと思った」と語っている。実際、新潟の合宿では明るい表情で新しいチームメートとコミュニケーションを取りながら、練習には真摯に取り組む小林の姿があった。

アギーレ監督は後半の途中から本田圭佑を左ウィングにチェンジし、岡崎慎司に代えて小林を右ウィングに投入した理由を「小林がいいトレーニングしていたからこそ、圭佑を左にした。右での小林が良かったからあの形にした」と説明している。当初は「自分の特徴をまだ分かってもらえていないと思うので、それが分かってもらえる様に要求していきたい」と語っていた小林。得点こそ無かったものの、味方に自分の動き方はこうだと主張する様なプレーを示した。

小林にとって試練となったのは、シンガポールで行われたブラジル戦。アギーレ監督は「アジアカップのような重要な責任のある場に挑めるかどうか」選手のキャラクターを見極めるためジャマイカ戦から6人を入れ替え、7人のJリーガーを先発起用した。その中に右ウィングで先発した小林の姿もあったが、結果は0−4。アギーレ監督がアジアカップに向け、ブラジルW杯経験者を呼び戻す転機になったとも言われる惨敗だった。

ただ、その試合の中で個人として最もブラジルに抗っていた1人が小林であり、前半24分には太田宏介のクロスを相手DFが処理しきれず、こぼれたボールを左足ボレーで捉え、クロスバーの上ギリギリを越えていったシュートはブラジルの選手たちに冷や汗をかかせた。ただ、小林としてはそのシュート以上に「(ゴールのためには)もっとペナルティエリアに良い形で入る回数を増やさないといけない」と反省する。

左ウィングで台頭している武藤嘉紀と同じく、ワイドな機動力を特徴とする小林ではあるが、いい形でボールを持って勝負する武藤と違い、タイミングよくDFラインの裏や一瞬のギャップを突き、タイミングよく味方のパスを引き出すことで、ゴール前に違いを作り出すタイプのストライカーだ。

「勝ちに行く」とアギーレ監督が宣言した11月の2試合に向け、アギーレ監督が再び小林を選んだのはストライカーの資質に加え、10月の活動で精力的な動きやディフェンスを練習でも試合でも示し、アジアカップを目指すメンバーの候補として評価したからに他ならない。しかし、小林としては自分の特徴をさらに発揮し、結果を求めるチームの中で存在感を高めようと意識していた。その矢先のアクシデントだった。

負傷の後も折れることなくリハビリに励み、早期の代表復帰を果たした小林は「フロンターレのトレーナーがしっかりやってくれました。Jリーグの最後の週の頭に練習に復帰して、思った以上にボールも蹴れましたし、問題なくやれると言われたので、トレーナーに感謝したいと思います」と語る。そして同時に出て来たのがアギーレ監督の信頼に対する感謝だった。

「本当に万全でない中で呼んでもらえて、すごく信頼を感じます。選んでくれた意味を自分がピッチで出さないといけないという責任も感じましたし、チームの勝利のためにしっかりと戦えればと思います」

1週間前にはトレーニングを開始して合宿に備えていたという小林。クラブでAFCチャンピオンズリーグを経験している彼は中東勢が未知数であることを認めながらも、「Jリーグと同じくらいの動きで変化をつけられれば、裏が取れたりチャンスが作れると思う」と自信をのぞかせる。そうした特徴を発揮するためには練習から味方とのコンビネーションを高めていくことが不可欠だ。

開幕戦までの約2週間で小林がどこまで連動性を高めていけるのか。彼の能力とキャラクターを信じてアジアカップにエントリーさせたアギーレ監督も、そこに期待しているはずだ。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

河治良幸の最近の記事