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私・・・恥ずかしながら「振り込め詐欺」に騙されそうになってしまいました。

河合薫健康社会学者(Ph.D)
(写真:アフロ)

「振り込め詐欺は高齢者を狙ったもの」ーーー。

そんな思い込みがあったためでしょうか。お恥ずかしながらまんまと「振り込め詐欺」にひっかかりそうになってしまいました。

あまりにショッキングな出来事だったので、自分のフェイスブックに書いたところ

「自分も騙されないためにも、やり取りの詳細を教えて欲しい」とのメッセージを何件かいただきました。

確かに実際の出来事を発信した方が、被害者を出さないためにも必要と考え、こちらに投稿させていただきます。

思い返すとポイントポイントで「これまでの自分の経験」を上手く突くやりとりがあり、それが逆に相手を信頼することにつながっていました。その部分の心情もできるだけ詳しく書きますので、お読みいただければと思います。

まず電話があったのは、昨日(14日)の午前中です。

固定電話はFAX以外はほとんど使っていないので、通常は留守番電話にしてあります。

ただ、そのときは近くにいたため受話器を取ってしまいました(以下、やり取り)

相手「東京都庁の医療保険課のものですが、昨年11月に郵送した書類はご確認いただけましたでしょうか?」

河合「何の書類ですか?」

相手「保険料の改定で、払い過ぎた分の還付に関する書類です。期日が今月の26日までになっているのですが、届けがでていないのでご連絡差し上げました」

この段階で私は、以下の点から相手を疑うことなく話を進めてしまいました。

年金などに関する書類が時折届くことがあるが、お知らせなどが多く、きちんと読むことがなかった。

郵送書類の場合、「あとでよく読もう」とそのままにしてしまうことが多かった。

そこで次のように相手に回答しました。

河合「書類を紛失してるみたいなので、再送してくれますか?」

相手「再送はできないので、今、確認してもらえますか?」

このように言われましたが、既に破棄した可能性が高いので、

河合「いえ、探してもないと思うので、書類を再送してください」と答えました。

すると

相手「書類の再送はできず、こちらで直接対応できますが、ご指定の金融機関に出向いていただくことで還付をもらうことができます。

 河合様の場合、26,361円が還付されます。どちらの金融機関がご希望ですか?」

河合「〇〇銀行でお願いします」

相手「では、私の方から〇〇銀行さんに連絡をしますので、担当者から連絡がいきますのでお待ちください」

このあと私は仕事で外出する予定だったので、

「固定電話が通じない場合はこちらの番号に連絡をお願いします」

と言って、自分の携帯電話を伝えてしまいました。ただ、それだけでは不安だったので、

「そちらの連絡先をおしえてください」

“東京都庁の医療保険課”の番号を聞きました。

相手は「03」から始まる番号を告げ、こう言いました。

「銀行に行く際に、4点持っていってもらいたいものがあります。通帳、キャッシュカード、認印、運転免許書などの身分証明書です」

その1時間後、携帯が鳴ったので出ると、

相手「〇〇銀行本店営業部の〇〇です。さきほど都庁の方から連絡をもらいましたが、これから銀行に行けますか?」

河合「今日は無理です」

相手「いえ、今日中に行ってもらいたいので、近くの支店を言ってください」

河合「ですから、仕事中なので無理です。明日なら行けます」

相手「では、明日の午前中、特別な手続きになりますので、私がまず電話をしますので、それから来てください」

と言われました。

その態度はとても横柄で、「メガバンクの人って、なんでこんなに横柄なんだろ」などと憤っていたのです。

そして、翌日。朝から打ち合わせがあり、その最中に携帯がなりました。

河合「はい。どちらさまですか?」

相手「〇〇銀行本店営業部の〇〇です。お客様の手続きは、まず申請書を出さなくてはならないのですが、最新の ATMでしか対応ができません。ご指定の支店はどちらですか?」

河合「△支店です」

相手「では、今から確認して再度連絡します」

といって電話は切れました。

このとき打ち合わせをしていた知人に、ことの経緯を話し、

「昨日、電話きたときも『これから来い』とかってすごい横柄だったんだよ。だいたいなんで事前に確認してから電話しないだろう。これから確認しますって、わざわざ電話してくるなんて、仕事できなさ過ぎ」

などと愚痴っていたのです。

で、そこに再び携帯が鳴り、

相手「△支店では手続きができないので、近くの●出張所に行ってもらえますか?」

河合「どこですか?」

相手「駅の反対側のビルの中で・・・・」

とあれこれ説明するのですが、下手くそな説明でちっともわかりません。

そこで

河合「えっと、だいたいわかったので、電話番号おしえてください」

と言ったところ、

相手「いえ、そこに着いてから電話をしてくれれば」

河合「いや、そうじゃなく、●出張所の電話番号を教えて欲しいんですよ!」

相手「だから、ついてからの電話で」

河合「下手くそな説明で場所がわからないから、自分で場所調べるから電話番号を教えてくださいって言ってるんです!」

相手「うっせーってんだ!!」

と電話を切られてしまったのです。

しかしながら、この時点で私は不覚にも「騙されていること」に気がついていません。

そこで前日に聞いた“東京都庁の医療保険課”に電話をすると、物腰のやわらかい声の男性がでたので、ことの詳細を報告しました。

「それはひどいですね。〇〇銀行に改めて私から連絡するので、お待ちください」と偽職員に言われた私は、「ご丁寧にありがとうございます。よろしくお願いします」と言って切りました(嗚呼、なんてことでしょう・・・)。

で、そのやりとりを隣で聞いていた知人が、

「それって振り込め詐欺じゃない?」と。

え、えええ??? 

慌てて“東京都庁の医療保険課”の電話番号を検索したら、そんな課はどこにもない! 医療費に関係ありそうな部署の電話番号も全く違います!

そうこうしていると再び、“東京都庁の医療保険課”の電話番号から着信があったので、知人(男性)に出てもらいました。

激しく罵倒する声が受話器の向こうから聞こえたきたのは・・・恐怖でした。

・・・相手は明らかに詐欺集団で、知人が怒鳴り電話を切り、再び携帯がなったので着信拒否をし、警察に電話をしました。

どうやら私が危うくひっかかりそうになったのは、このところ頻発している詐欺だそうで、

警察「失礼ですが、年齢は」

河合「53です・・・。ああ、な、情けない」

警察「大丈夫ですよ。落ち込まないでくださいね」

と慰められてしまいました(泣)。

・・・・私は曲がりなりにも研究者の端くれで、人の心理も専門としています。

これまで詐欺にひっかかる心理状態についてコメントをしたことありました。

親にも気をつけるようにと散々言ってきました。

その私が・・・。もし、知人の「振り込め詐欺じゃない?」という一言がなければ、私は「●出張所」に出向き、怖い目にあっていたかもしれません。

思い返すだけでゾッとするのですが、前述したとおり、

年金などに関する書類が時折届くことがあるが、お知らせなどが多く、きちんと読むことがなかった。

郵送書類の場合、「あとでよく読もう」とそのままにしてしまうことが多かった。

という点に加え、“東京都庁の医療保険課”の連絡先を聞いた時に、スムーズに相手が答えたこと

さらに、

「国は取るものはどこまでも追いかけてくるけど、戻ってくるものをもらうには手間がかかる」という経験。

加えて、

「メガバンクの人=横柄」という経験を、ン10年前に住宅ローンを組む際にしていたことも関係しているように思います。

私がしつこく電話番号を聞き、説明が下手と指摘したため、相手が逆ギレしたことで最後の一線は超えずにすみましたが、今、数時間前のこの出来事を思いだすと、震えが止まりません。怖かった・・・です。

相手に口座番号などを伝えていなかったので、なんとかセーフかなぁとは思いますが。

ATMというワードが出たら、怪しいと思って間違いないと思います。

どうかみなさまも、くれぐれもお気をつけてくださいね。

「自分は絶対にだまされない」ってことはないのだ、と。自戒も込めて・・・。

健康社会学者(Ph.D)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。 新刊『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか』話題沸騰中(https://amzn.asia/d/6ypJ2bt)。「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究、執筆メディア活動。働く人々のインタビューをフィールドワークとして、その数は900人超。ベストセラー「他人をバカにしたがる男たち」「コロナショックと昭和おじさん社会」「残念な職場」「THE HOPE 50歳はどこへ消えたー半径3メートルの幸福論」等多数。

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